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リーダー修行記70(トライアルがスリルとスペクタクルに満ちていた件シーズン3⑥)

(前回のつづき)

5種目目: クイックステップ

一番自信がなくて、最後の最後まで調整した最難関種目。私、このルーティン、パートナー側で踊れないですよ多分。

半周走りたい、なんなら1周でもいい、と先生にお願いして入れてもらったランがルーティンのクライマックスで、現実的路線で半周になったのですが、今思えば1周にしてもらうべきでした。半周で客席側を走るためには、踊り出す場所が限定されるからです。

逆サイドから始めて、無人の壁ぎわを走ることだけは避けたい。踊り出しの場所取りは失敗したくない。
さっきのスローがトラウマすぎて、フロアサイドでその策ばかり考えていました。
クイックは2組しかいなかったので、相手がどちらサイドを取るかの二択。究極のカラーベット

私「あっちが同じ場所だったらどうすればいい?」

フロア上で聞いて塩対応される同じ轍は踏みたくない。今のうちに問い詰めておくべし。

先生「そうだねえ…」
私「絶対、客席側を走りたい。そこは譲りたくない!」
先生「そうだねえ…」
私「どうすればいい?」
先生「難しい問題だねえ(以上)」

鬼だ。
こいつは鬼に違いない

私「私の背番号の方が後なんですけど」
先生「そうだね」

答える気ゼロだなこの鬼は。

私「もう相手の先生にお願いするしかなくない?」
先生(爆笑)

いやいや爆笑じゃないよ。本気ですよ。

私、素人。
あっち、プロ。

譲ってもらったっていいじゃん!!!

先生「僕らプロでも場所取りは難しいからね」

だから、私はプロじゃないんだってば。
同じ土俵に立ってないんだってば。

まったく接点がない先生ではないし、本気で相手の先生にお願いしようかと思いましたが、その先生は全ヒートにエントリーしていたので、まったくもってその隙がない。
これはもう「念」だな。「念」を飛ばすしかないな。リーダー修行で得た全能力を使って「祈る」しかない。

そう思って、これまでの4種目とは比較にならない圧をもってフロア入り。こっちに来るなよ、という念を全身から飛ばしました。そして、あ、こういうふうに堂々と出ていくといいのね、という新たな気づきを得ました。

事前に発表された音楽に合わせるのを一番苦労したのもクイックで、まず、踊り出しの解釈が私と先生でまったく違いました。
曲は、16小節前奏の後に歌が入る、まあ普通のパターン。歌のタイミングで入るのがセオリーだという先生と、この曲調的に16小節も待ったら間伸びすると主張する私の意見が真っ向から対立。
結局、頭8小節はステップも前奏と考える、という強引な発想で、9小節目から踊り出すことに決めました。(私、普段からわりとやるんですよ、ステップも前奏のうち、みたいな音の取り方…)

8小節の間で組んでプレパレーションするのは、クイックの速さだとわりと難易度高めだったのですが、打合せと自主練を頑張ったので、想定に踊り出しました。でも順調だったのはその一瞬だけ。そこから先はもうずっと、最後まで先走っていました。

私、今回ほど自信がない状態でフロアに立った経験がありませんでした。いつも、クオリティはともかくなんとかできる状態までは仕上げた、という気持ちで本番を迎えていたのです。でも今回のクイックだけは一歩間違えたら崩壊する紙一重な感じで、うまくいくかどうかの瀬戸際でした。なにしろ、一度つまずくと取り返しのつかない怒涛のルーティンなのです。

今回の経験で、自信のなさはリズム感に影響するのだと痛感しました。音を外さないことだけが取り得の私が。

明らかに音を外していることは気づいていました。でも、調整する余裕がない。気持ちだけ焦る。どんどん先走る、の悪循環。
そしてそのままランに突入。
すでに半小節くらいズレていたので、たまりかねたらしい先生に止められました。

「ちょっと早い!」

その瞬間、パニックになる私。
えっ何、どれ?どこに合わせたらいい?

ホップ3回、シャッセ、ランの繰り返しだったので、半小節ズレた私と、オンタイムの先生のタイミングを修正する場所がなくて、最後まで完全にズレたままでした。

夏の間、トータル3時間くらい自主練で走り続けたラン。一緒に練習した仲間たちに、なんかずっと走ってるね、と言われたラン。絶対に失敗したくなかった最終種目の後半で致命的な失敗をするとは。

た、立ち直れない…。

(立ち直れないので次回につづく)

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