リーダー修行記38（ひよこリーダーの新ルーティンと初レッスンが正気の沙汰ではなかった話）

リーダー教の宗派に「頭教（アタマキョウ）」というものがあるのをご存じだろうか。
「頭の位置や向きだけでリードする」という、たいそう胡散臭い…もとい、摩訶不思議な教義を掲げる宗派である。どの程度メジャーな宗派かは知らないが、私のコーチャーもサブコーチャーも敬虔な「頭教徒」で、特にコーチャーはレッスン中、５分に１回は「頭の位置」の話をしている。
10分に１回は「目線」の話をしていて、15分に１回は「祈り」の話をしている。そして１レッスンに１回はこう言う。
 
「動かすのは頭で、ボディや足じゃない」
 
壺を売りつけられる日もそろそろ近い。
 
さて。
２ヶ月ぶりにレッスンに復帰した私、早速、ルーティンの刷新を先生にお願いしました。来月、２つの教室のスタジオパーティーにおじゃまして、2人の先生とトライアルをやる約束をとりつけているのです。
今年の２月、初めてリーダールーティンを作ってもらってから早９ヶ月。一歩も動き出すことができず、動いてもらうこともできず、ステップを踏むたびに止まっては天を仰ぎ、空中分解してはうなだれながら、よちよち共に歩んできた愛しいルーティンたちだけれども。
 
そろそろ飽きた。
さすがにこのどベーシックルーティンは飽きました。
 
いい感じに休養も取ったことですし、足も大丈夫そうですし、この辺でもうちょっとチャレンジしたいな～という私のリクエストに対して、「こんな感じでどうですか～」とシャドー動画付きで新ルーティンが送られてきたのは、月曜日の夜のことでした。
 
はあ～週初めの仕事しんどかったわ～と、ちょうど一息ついたところに鳴り響くLINEの着信音。流れてくるカタカナの羅列。

えっ何この長さ。
えっ何この呪文。
 
待って待って。私、パートナーじゃなくてリーダーのルーティンをお願いしたはずよね？
こないだまで、“ホイスクして～シャッセして～ナチュラルターン♪”だったのに、“バウンスフォールアウェーからシャッセロール〜スローアウェイオーバースウェイ！"とか、“フォールアウェイアンドスリップピポットテレマークテレスピン！”とかになってるのおかしくない？
いきなり長辺が２倍になってるのおかしくない？
えっ何これ、変換ミス？　送信ミス？　誰に送ってます？？？
 
私『正気ですか？（意訳）』
先生『レッツトライ！（意訳）』
 
これはいったい誰に対する挑戦状なのだろうか。
私かい？
私のパートナーをやってくれる先生たちかい？
 
しかし、売られた喧嘩は買わないけれど、送られた挑戦状はおおむね丁重に拝受する主義の私、そこからレッスンまでの２日半、お手本シャドー動画を観続けました。そして、とりあえずステップの切れ目はわかりました！わーい成長した！（←このレベル）。
いやもう、この長さのステップの数とだいたいの方向を動画で理解できただけで立派ですよ、リーダーとして成長しましたよ私。
そんな感じで、準備は十分したもんね！という気分で行った新ルーティン初レッスン。
 
先生「じゃ、始めましょうか。最初のこのステップなんですけど、注意点は頭の向きですね。はい、頭こっち」
 
私（ん……？）
 
先生「その次は、頭こっち」
 
私「……………」
 
待って……。
待って…待って！！！
 
なんでいま「頭」の話から入った？？？
「成長過程を全部すっとばして突然ニワトリになれ」みたいなルーティンを、今日！初めて！「足を折ってるひよこ」が習うのに！なんで「頭の位置」から入った？？？

それ今必要ですか！？
もっと先にやることないですか！？
 
おそるべし「頭教徒」。
 
何はなくとも「頭」が先なのか。
しかも、足型は全部入ってる前提でレッスンしてますよね？　ルーティン表と動画でそれくらいわかれと思ってますよね？
 
おそるべし「ハイド」。パートナーレッスンでは絶対やらんやろ。

ハイド「あれ？もしかしてシャッセロールの足型、曖昧な感じ？」
私「曖昧っていうか……」

今始めてやったもん！！
習ってないもん！！！

ちなみに、初めてやりますと申告しても、なぜか、足型は知っているもの、という前提でレッスンが進んでいくのは、他の先生にもよくあることでございます。リーダー修行あるあるでございます。
パートナーだとそんなこと絶対ないのになんでだろ。教えておくれ世の中のハイドたちよ。

結局、頭の話7割で終わった初回レッスン。「難しいかもと思ったけど大丈夫そう♪」という御託宣をもらい、マジか…と思いつつ、トライアルのお相手①にルーティンを送ったところ、「正気ですか？（意訳）」と返ってきました。お相手②には、「目を覚まして」と返されそうな気がしてまだお伝えできていません。

（修行は続くよどこまでも）