見出し画像

リーダー修行記76(燕尾がひよこに教えてくれたこと)

前回「つづく」で終わっていながら、1ヶ月も開いてしまいました。

みなさまあけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

新年のあれこれを書きたいところではありますが、とりあえず前回のつづきを書いておかねばと思います。備忘録を兼ねて。

前回格闘を繰り返した燕尾服は、数度の調整を経て、無事、ホテルパーティーデビューを果たしました。
でも、納品されたばかりの燕尾は、私のボディを締め上げ、心肺機能を低下させる凶器のような状態で、着用練習はほぼ高地トレーニングでした。

私、鳩尾がほんの少しでも抑えられると、身体が苦しく動かなくなるのです。パートナーをやるとき、鳩尾までコンタクトしろと言われた瞬間に、足が出せなくなるくらい、鳩尾がウイークポイント。
パンツがだいぶ高い位置まであるのがRSの特徴らしいのですが、納品された燕尾は、パンツのウエストラインが私の鳩尾にぴったし重なっていて、そこから伸びる4本のサスペンダーが鳩尾ラインを締め上げていました。
RSのサスペンダーは太い上に縫い付けで調整具がなく、4本で肋骨まで締め上げる仕様。
いや別に締め上げる目的はないと思いますが、私の身体にそいつらが巻きつくと上半身の3分の2くらいが締め上げられる感じなのです。しかもその起点が鳩尾。

かくして最ウィークポイントの鳩尾を固められ、肋骨を締め上げられ、肺の動きを止められた私。マックスの出力で全身を押し込んでいかないと、まともに動けない状態でした。
もはや踊るとか、音楽に乗るとか言ってる場合じゃないんです。ステップを踏んでる場合でもないんです。
戦闘機の操縦桿・・・は握ったことないけれど、気持ちはそんな感じ。あれですよ、いわゆるトップガンの”G”に耐えてる感じ。

おおげさだと思ってます?
この感覚、誰とも共有できなくてつらいんですが、燕尾初号機で踊っているときの私は、Gの限界に挑戦してる気分でした。
私が出せる限りの最大出力で押し込んでいかないと身体が動かない。身にまとう衣装・・・というか大気が、私の動きを全力で阻んでいる感じなのです。

せっかく作った燕尾服。
どうにかして着こなしたい。パーティーデビューさせたい。正装ドレスのパートナーと踊りたい!
その一心で、負けてたまるかうおおおおおーーーーという気持ちで踊ったら、先生(メインコーチャー)にサクッと言われました。

「けやきさん史上、かつてないリーダーの強さを感じる。それがいいよ」

それがいい・・・。
それがいい???

それがいいと言われましても、これで3分踊ったら私は死ぬよ。毎度リンクに倒れ込んでた十代の頃の羽生結弦みたいになるよ。彼は絵になるけど、私がやったらただの頭おかしい人だよ。

長時間着ていられないので、レッスン途中でレッスン着に着替えたのですが、燕尾に比べたら圧倒的によく動けているのに、先生には浮かない表情をされました。

先生「さっきの方がいいよ」
私「!?!?!?」
先生「さっきの強さがない」

それは何かい。私にリンクで倒れろと言っているのかい。

着るだけで生命を吸い上げられる燕尾をもう一度着る気にはとてもならなかった私、先生の反応を見て考えました。

燕尾を着たときの方がいいということは、強さがあるということは、つまりGに耐えるトップガンを再現したらいいんじゃない?
レッスン着の私を阻むものは何もないけど、なんならゴールデンレトリバーサイズのパートナー様がいちばんの壁なのだけど、スタジオに満ちる大気のすべてが私に抵抗していると思って踊ったらいいんじゃない?

そう考えて、燕尾を着ているときの感覚をイメージして、うおおおおーーーーっと身体を押し込んでいったら、

「そうそう、これこれ!これがいいよ!」

と感嘆されました。そして、

「けやきさんがいま動くんだな、と感じてから実際動いてくるまでに時差があるから、パートナーとして準備ができる」

ということばに、ちょっと納得しました。

リーダーとしてひ弱だと言われ続けていたひよこ🐥。「重く、強く」踊るとはこういうことかと体得しました。
足りない質量と重量とパワーは、トップガンで補えばいいのだな。
いまここに満ちている大気のすべてが抵抗勢力というつもりで踊ったら、だいたいちょうどいい感じになるんだな。
パートナーを操縦桿だと思えばいいんだな(すみません)。

でもそれは、ゴールデンレトリバーを相手にしているからじゃないのか。ダンスとしてこれでいいのか、と若干の疑問を抱きつつ、次のサブコーチャーとのレッスンで再現してみたら、先生に「かつてない強さを感じる」と感嘆されました。

先生「頼りがいのあるリーダーって感じ!」

マジか・・・。

この踊り方をしているときの私の気分はトップガンなのですが、もう少しわかりやすくたとえると、プールにもぐって踊っているイメージです。トップガンもプールも経験はないですが、Gよりは水圧の方がまだイメージしやすいかなと思います。私の気分はあくまでもトップガンなんですけど。

この感覚、殺人燕尾を着て踊らなければ、おそらくずっとわからないままだったと思います。
質量のある男性は自然にできることなのかもしれませんが、私には学習しなければ理解できないことでした。

強さがない、重みがない、というのがどういうことなのかわからないまま悩んできた2年間を、燕尾初号機が解決してくれました。

ちなみに「そういうイメージで踊る」ことと、「リアルにGをかけられている」ことには雲泥の差がございまして、リアルは生命に関わるので、燕尾は、3分間踊っても羽生結弦にならない仕様に調整してもらいました。現在、3号機です。

調整したとは言っても、男性仕様の燕尾服。3号機は、5分くらい着ていられますが、5分で私の筋肉を燕尾の形に形状記憶させてしまう程度の破壊力はあります。私の燕尾姿を見る機会がありましたら、Gと闘ってるんだな、と見守っていただければ幸いです。

(おわり)




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?