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リーダー修行記46(私の脳内にバンドスコアが内臓されている件について)

遅ればせながら、2023年最初の記事でございます。みなさま、今年もよろしくお願い申し上げます。

新年最初のリーダーレッスンでは、今年は5種目制覇するぞ!という意気込みをもって、クイックステップにチャレンジしました。
結果から言うと、まっっっったく踊れなかったのですが、それはテンポが速いせいでも、パートナーが重すぎるせいでもなく、ひとえに音楽に乗れないせいでした。
前々から、いろんな人に、音に敏感すぎると言われる私。新年早々、変態的な探求心が頭をもたげてしまい、私の脳内に流れる音楽とダンスの関係性について徒然考察してみました(そんな大層な話ではない)。

私は、極めて根暗な学生時代、DTM(デスクトップミュージック)をやっていました。シンセサイザーを使って音源トラック(要はカラオケ)を作る、いわゆる「打ち込み」というやつです。まあ簡単に言うと「ひとりバンド」(根暗…)。
専用ソフト(当時はソフトのクオリティが低かったので、結構個人の技量が問われた)に、ドラム、ベース、ギター、ピアノ…という感じでひとつずつ地道に音を作り(音色も手作り)、ひとつずつそれを重ねて音楽を作っていくわけですが、この作業を続けているうちに、耳が音楽を「音の集合体」ではなく、「楽器の重なり」と捉えるようになりました。ドラム、ベース、ギター…それぞれの音がバラバラに聴こえる感じです。脳内にバンドスコア(全楽器の五線譜が羅列されてるスコア)が流れているイメージ。
これは、耳がいいとか、音感があるとかいうことではなくて、単純に、根暗な作業をし続けた結果身についたクセのようなものだと思います(多分、私に限った話ではない)。

ま、そんな根暗な私にも一応青春時代はあって、リアルバンドもちょっとだけやっていました。ステージ上の奏者の足元にはモニタースピーカーというやつがあるのですが、あれ、漫然と音が流れているわけではなくて、奏者の好みでカスタマイズできるのです。私は基本的に、バスドラムとベースを強めに流して、そこに自分の演奏を合わせるようにしていました。結果、耳がやたら重低音に敏感になりました。
楽器のことはわからないよという方のために補足すると、ドラムは低音から高音までいろんな音を出す打楽器の組み合わせでできていて、リズムを下支えする低音のタイコのことをバスドラム(通称バスドラ)と言います。ドラマーが足で蹴ってる大太鼓ね(ざっくり)。

長々となんの話をしているかというと、フロアに出るまでなんの曲が流れるかわからない、というスリルに満ちあふれた社交ダンス特有の文化に私の耳が対応できない、という言い訳の話です。
ダンスをやる人がよく、「曲は決まってないけど、同じ種目ならリズムは同じ(だから踊れる)」と言いますが、わたくし、声を大にして言いたいです。

実際にフロアに流れる曲のリズムは、全然同じじゃない

記憶に新しいところでは、ルンバで裏拍の曲が流れてフリーズしました。確かに4拍子は4拍子だけど、表と裏では違う。全然違います。私の耳は、ありとあらゆる音をばらばら拾うのですが、特に一番拾いやすい(無意識)のがバスドラなので、バスドラが裏拍を刻み出した時点で試合終了という感じでした。
「これ絶対踊らない人が編曲してるやろ」とプチキレしていたら、周囲で華麗に踊っている方々に「あんた何怒ってはりますのん?」という反応をされたので、やっぱり私の脳内が特殊なバンドスコアなんだと思います。

えーっと、なんの話かというと、リズムをとるという、リーダーが背負う重責に私が押しつぶされそうだという話です。

パートナーなら、気持ち悪いなあクソ曲め、と思うだけで人様にご迷惑はおかけしないのですが、事はリーダー。気持ち悪いリズムが入っていると、私は本当に一歩も動き出せなくなるので大事故です。
リーダーは、とにかく自分でカウントしろと教えられるけれど、裏拍のバスドラに合わせて「2,3,4~1♪」とか(2から始めることにも異議あり)、ジャズのリズムで「クイック&クイック♪」とか、小節をまたいで「スロー♪」とか、脳みそをどうぶち壊せばカウントできるのか、なんの脳トレなのか、誰かこの子羊に教えていただきたい

さらに悲劇的なのは、私が1度……3度か4度くらい、脳機能をぶち壊す病にかかったことがあるということです。主治医曰く、脳機能が低下すると「音を識別するフィルター」の機能が低下するらしいです。たとえば人間が雑踏の中で特定の人と会話ができるのは、関係のない音を「雑音」として処理するフィルターが働いているからなのですが、そのフィルターが壊れると、あらゆる音をところかまわず拾ってしまい、音の渦の中にいるような感じになるのです。
もちろんたいていの場合、病気が治ればフィルターも治るのですが、私の体感的には、完治はしない、という感じです。病前と病後では、人混みに行ったときの疲労度が確実に違うし、今の私は居酒屋のような、騒がしい場所にいるのが耐えられません。イヤホンをしないと電車に乗れないし、競技会観戦もパーティーも頻繁に途中休憩を入れないと身体がもちません。

つまり、私の脳内にはバンドスコアが流れていて、あらゆる楽器の音をバラバラに捉えていて、中でもリズムの根幹である重低音に意識がいきがちで、不必要な音もだいたい拾ってしまうという、社交ダンスのリーダーとしてはかなり致命的な耳を持っているということになります。どんな曲でも同じカウントを取ることや、曲のリズムが裏なのに表でカウントすることや、ステップの区切りが小節をまたぐことや、4拍目からカウントすることを理解する(というか受容する)のは、私にはとても難しいことなのです。
余談ですが、チャチャを「2,3,チャチャチャ」とカウントする先生に出会ったときは背中を蹴り飛ばしたい衝動に駆られました。半拍ドコニ捨テテキマシタカ?(冗談のような話ですが実在しますよ…怖)

パートナーのときから「曲が無理」「リズムが変」「音が…」「カウントが…」「曲がお・か・し・い!」と事あるごとに激詰めしては先生を困らせ、ついには「風の音さえ気になるんだから、踊ってるときは黙ってて」と言ってのけた私がリーダーなんぞ、実は正気の沙汰ではないお話なのです。

先生も、パートナーレッスンのときは、「そっかー。じゃあ曲変えよっかー」という感じなのに、リーダーレッスンになった途端、
「自分の中の音楽性を大切にするのないいけど、それをパートナーに伝えられなかったら、壮大な裏切り行為になるよ」(お前、そのリスクを背負う覚悟はあるんだろうな?)
声低めになるのは、私の最大のウィークポイントが、実はフィジカルの弱さよりも、内臓している音声認識装置の特殊性だということを知ってるからだと思います。
た、多分…。

(単に、パートナーレッスンで、「カウントするな」「黙れ」と、私に散々言われてる腹いせなのかしら。どうなのかしら)

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