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リーダー修行記⑨(リードとは『信じる』ことと見つけたり)

始めに気持ちがあって…!
言葉と動きがある…!

と叫んだのは北島マヤ(ガラスの仮面)なわけですが。

最近、それに近い呪文を先生が耳元で囁き出して、宗教か北島マヤかどっちだと思いながら、スマホの中に着々と静止画を増やし続けている今日この頃です、皆さんお元気ですか。

私、リーダーの基本中の基本、シャドーも満足にできないのに、そんな高度な魔法を要求されるレベルですかね。
と遠い目をしていたら気持ちがダダ洩れしたのか、ここで間違えて覚えたら簡単には直せないから、と恐ろしいことを真顔で言われました。学校や習い事や部活で散々脅されたセリフをまさかこの年になって聞くことになるとは…。子供の頃に脅されすぎたせいで必要以上にびびった私、何教だかよくわからんこの宗教に自我を捨てて入信すべきか真面目に悩みました。

思えば2年半くらい前、当時組んでたリーダー氏から、「気持ちがないから伝わらないんだよ!」とかつての師匠に散々怒られ続けた話を聞いたことがありました。カップルレッスンを受けていたときも、「もっと気持ちを込めて女性に伝えてほしいんですよ」と、先生が懇々と説いていた記憶があります。
当時、完全に他人事として聞き流していたこの難題を、よもや自分が突きつけられる日が来るとは思わなかった。あのとき「俺はいま何を言われているの?」という表情で困惑していたリーダー氏もきっと、いったいなんの宗教に勧誘されているのか、と悩んだに違いない。その戸惑いにまったく寄り添わず、「とりあえずピクチャーポーズで私に大外刈りかけるのやめてくれる?」とか言って申し訳なかった。

以前、ラテンの先生に、「ふたりの間にはお互いの鳩尾をつなぐ見えない糸があるから両手を離していてもリードは通じる」と断言されて、その狂気に恐れおののいたこともありました。今思えば、あれは狂気ではなく、教義のひとつだったのだな。最近も、リードは「念じれば」通じる、という話で盛り上がっている先生たちの会話を聞きました。きっと社交ダンスのプロリーダーには、専門を問わず、等しく入信しているリーダー教という教団があるんだと思います。(きっぱり)。

先生が「一切自分の身体を動かさずに、気持ちだけで、パートナーに後退してもらうんですよ」と言い出したときは怖すぎてホールドを振り払いそうになったけれど、これまで関わってきた先生たちとリーダーさんたちの言動を顧みるに、ガチリーダーを目指す上は、恐怖を押し殺し、無宗教主義を捨ててリーダー教団に入信するしか道はないのかもしれないとも思いました。

不確かなものは、押しなべて信じないタイプの私ですが。
リードの神髄は「気持ち」だと信じて。
「念じれば」通じると信じて。
みよう…(小声)。

タンゴは静止画になる気配しかないから、まずは多少なりとも事前準備ができるワルツで試してみるか…(すでに気持ちが逃げてる)。

最初の一歩。これまで静止画を量産しまくって学んだので、相手を先に行かせる(自分が先に踏み出さない)ことは、いい加減理解した。パートナー様に下がっていただいたのち、この辺に左足を出して、あの辺まで回り込めばいいんだな。よっしゃ、プレパレーションだ!←この時点で、自分がどこに進むかでもう脳量を使い果たしている。

1、2、3!

おお!出でくれたぞ!

先生「自分が先に出ないという心意気は感じたけど」
私「はい!」←成長した!と思ってる
先生「出て、っていう気持ちも感じないんだよね」
私「・・・・・」
先生「僕は音楽のタイミングで出ただけなんだよね」
私「!!!!!」

なんということだ。ついに、ハイドに忖度をさせてしまった!
堕落。これは堕落だ。なんだこのものすごい敗北感は。

き、気を取り直してスローをやろう。3拍子より1拍多いんだから、プレパレーションで都合2カウント分、考える余白があるはずだ(短絡的)。

うん、気持ち。気持ちだな。
プレ…プレパレーションに気持ちを込めるんやな…。←明らかにワルツより余裕がない。

1、2、3、4、5、6、7…

おりゃ! これでどうだ!!

先生「これはさすがにまずいっす(爆笑)」

な、なんということだ。
ハイドをジキルのテンションに戻してしまった。
か、完全なる敗北…。これは完全なる敗北だ。なんだこの虚無感は。情緒が翻弄されすぎてわけがわからん。

私はその日、入信しても功徳を積まないと悟りは開けないのだよ愚か者め。という神の声を聴いた気がしました。

(やっぱり還俗したい)

(つづく)

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