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リーダー修行記44(修行の副産物でパートナー力が爆上がりした件について)

今日はちょっと真面目な話になります(いえ、いつだって真剣なんですが、テンションがね、低めというか…まあ、私の通常モードです)。

私は社交ダンスがとても好きなのですが、頭の片隅にはいつも「根本的に向いていない」という気持ちがありました。特に、パートナーをやっているときはその気持ちが強くて、何度もやめようと思ったことがあります。
このダンスは、人間が生まれ持っている非言語のコミュニケーション能力で成り立っているものだと私は理解していて、私は他人の非言語情報は過剰なほど敏感に受けとることができる人なのですが、自分が発することはとても苦手なのです。そういう意味で、非言語コミュニケーションがとても苦手。だから、パートナーとして踊るとき、リーダーが伝える情報に対して、どう返していいかわからなくて、どう返せば正解なのかどうすればこの人が満足するのかをいつも考えていて、不自由で仕方ありませんでした。
正直、とてもしんどかった。ずっと試されている気がしていました。伝わってくるたくさんの情報に、自分が正しい答えを返しているのか、相手が満足するものを与えているのか。

リーダーを始めて約1年。リーダーが楽しすぎて、もうパートナーをやる気にならないなあと思っていたのですが、昨日、今年最後のメインコーチャーレッスンで、踊り納めだし一回くらい踊っておくか、くらいの気持ちで、自分のリーダールーティンをパートナー側で踊ってみました。

結果。

なんか今までと全然違うな? というのが第一印象。

よく、リーダーをやると男性の足型や動きがわかるからパートナー側も上手くなる、と言われますが、そういうこととはちょっと違う感じでした。

今までの私は、リーダーが私に求めていることは、相手の求める正しいステップを踏むことで、与えられた情報には正しい答えを返さなければいけない、と思っていたのですが、そういうことを求められているわけではないんだなということが、感覚的にわかったのです。すごく端的に言うと、この人は私をとても大切にしてくれていて、見返りは求めていないんだな、と感じたのです。

最初はステップを追うことで精いっぱいだったリーダー修行も、ここ最近は、「気持ちがないとどんな技術を使っても通じない」説の講義にほとんどのレッスン時間を費やしています。ひよこリーダーにはだいぶ高度なレッスンですが、おかげで、リーダーはある意味、「無償の愛」(という言い方が正しいかはわからないけど)をパートナーに与えているのだなということは理解しました(多分)。

与えたものは返さなくていい。むしろ返さないでほしい

リーダーの私には奏でたい音楽があって、指揮者としてきっかけやリズムや緩急のタイミングを伝えていて、パートナーにはそれを受け取る奏者であってほしい。でも受け取り方に正解はなくて、たとえそれが私の思い通りの演奏でなかったとしても、そこにしか成立しない世界観があるはずで、そこにふたりで踊ることの意味が生まれるのだと思います。そして大切なのは、その音楽を聴くのはオーディエンスであって私(リーダー)ではないということです。

私は愛されずに育った人なので、愛され方を知らないし、その返し方も知らないのです。私の夫はとても健常に育っていて、自分が与えるものにまったく見返りを求めない人なのですが、私はずいぶん長いこと(今でも少し)、その愛情に何かを返さなければ見捨てられるのではないか、という強迫観念を持っていました。ちょっと大げさですが、それに近い感覚を、パートナーとしての私は抱いていたのです。

でもリーダーを経験したら、私は私が持てるもののすべてをパートナーに与えられる人になりたいけれど、見返りはいらないし、パートナーのエネルギーは美しいメロディーを奏でることに全部使ってほしいし、それは私に聴かせるものではなくてオーディエンスに向けて響くものであってほしいな、そしたらもっと頑張れるな、と思うようになって、自然とリーダーの気持ちがわかるパートナーになっていました。

数ヶ月ぶりに踊ったパートナーは、衝撃的なまでに上達してる、と先生に言ってもらいましたが、それは、リーダーの動きがわかるようになったからというより、リーダーが伝えたいものを理解できるようになったからだと思います。この人は今私に無償の愛を与えていて、私は何も返さなくても見捨てられない、という安心感を感じられるようになったのです。

以前、先生に「リーダーはパートナーに尽くしてほしくない。伝えたものは全部外に流してほしい」と言われたことの意味が、この日、私はわかった気がしました。

(ま~でも、やっぱり私はリーダーの方が楽しいですね。全身全霊をかけた「無償の愛」を受け取るのは重いよ(苦笑))

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