リーダー修行記(『リード』というワードで先生がハイドになる件について)
女性の私がリーダーに手を出したのはダンス歴も3年くらいになった昨年夏のことでした。元々やってみたかったリーダー。とりあえず入門者サークルで適性を確認してみることにしました。結果、まあ適性はともかく、大半との女性との身長バランスは問題なし。ステップもフロアクラフトも慣れればなんとかなりそう。何より、なんだこれ楽しい。パートナーより楽しいじゃないか。
という感じで調子に乗った私。当時習っていたラテンの先生に、ちょっと逆転して踊ってみてくれません?と申し出ました。
さあルンバだ。とりあえず右足から予備歩だな。うんうん。リズム取るのは自信あるぞ。
(1、2、3,4!)
先生、下がらない。
ん?
先生「それだと、いつ出ていいかわからない」
いつになく冷たい。
まあ、気を取り直して。
(1、2、3、うっりゃあ!)
一応下がってくれた。
が、「3」で停止。戻ってきてくれない。逆に私が引っ張られて前のめりに突っ込む。
先生「それだと、下がるしかない」
冷たい。目つきがいつもと違う。なんだどうした、ジキルとハイドか?
私「どうすれば…戻ってきてくれるか…わからないんですけど…(恐る恐る)」
先生「そこはね、男性はチェックという動きで女性を止めてるんですよ」
(あ、ジキルに戻った。)
そこからの鬼解説で、ラテンリーダーは無理ぽん…となった私。
だってさ、ほら、私モダン人だし、リーダー始めた目的も燕尾が着てみたいからだし。
と気を取り直してスタンダード目的にサークルに通い続けていたのですが、それから間もなく、不本意ながらルンバのリーダーでトライアルをやることになりました。ほぼ成り行き。相手は踊れる女性とはいえ、リードのなんたるかを知らないまま1分半はさすがに無理じゃないかい?と思った私は、ちょっと知っている先生に単発で習いに行くことにしました。(単発都度払いで教えてくれる先生は希少です。ありがたし)
普段はとっても穏やかでやさしい男性の先生なのですが。
「リードを教えてほしいんです」
言った途端、先生の目つきが変わった。
ん?なんだこの感じ、デジャヴだぞ。
とりあえず出だしだな。音は外さない自信あるぞ。
(1、2、3、4!)
下がってくれない。
先生「それだと動き出せない」
冷たい。デ、デジャヴ…
気を取り直して。
(1、2、3、うっりゃあ!)
一応下がってくれた。
(おっしゃ次はチェックだな。これは学んだぞ!)
先生「遅い!」
ハイドになった! 何これ、リーダー界隈ではルンバ3歩目でハイドになるシステムかなんかあるの?
なんとかクリアしてファンポジションへ…
なら、ない…。
そして左腕に身体を取られて引きずられる私。
先生「女性がなんでファンで踏みかえるかわかる?」
私「後退を男性に止められるから、ですよね?(知識だけはある)」
先生「止めてないよね?」
止めて…ませんね…。
先生「そこは死ぬ気で止めに行け(名言)」
先生「あと、動き出しが全部遅い」
うーむ。私は、ルーティンが決まっている場合、ほぼ完ぺきに覚えて次のステップを考えながら踊るタイプの、一般愛好家レベルではわりと少数派パートナーだと思うのですが、それでも「今!」次のステップを考えるスピード感。
先生「5手先くらいまで考えといて」
私(なんですと?)
先生「アレマーナで左手を上げた瞬間に次のリードを始めなきゃ駄目」
私(なんですと?)←アレマーナしながら次のステップなんだっけ?と考えている人
先生「脳の構造変えて」
私(なんですと???)
そこからは、ひたすら「遅い」「相手のこと見て」「ちゃんと腕取って」「死ぬ気でチェック!」とダメだしされ続けた50分。
先生「リズムは合ってるし、足型間違えないし、よく踊れてると思いますよ」
(あ、ジキルに戻った)
なるほど、レッスン終わるとジキルに戻るシステムなのか。
そんな先生方の厳しい指導のおかげでなんとかルンバを踊れるようになった私。
ふと我に返りました。
私、燕尾が着たいんじゃなかったっけか。
サークルではリードは学べないと悟ったので、個人レッスンで教わるのが一番早い。あとは誰に習うかだけど…。
このダンスにはなんか知らないけど流派っぽいものが存在する。今まで自分が習ってきた踊りと全然違う流派で教えられたら混乱するなあ。と考えたら、自分のコーチャーに習うのがベストやんな。
と結論付けたわけですが、現在、絶賛デモレッスン中。わりとお尻に火が付いている感じなので、その時間を削ってリーダーレッスンに充てる余裕はない。というわけで、もう1レッスン追加してリーダーを習うことにしました。
そして、普段の感じでるんるんレッスンに行き、いつものレッスンをして、デモのルーティン完成したねよかったねーって感じでシューズをティーチャーズに履き替えて、さ、リーダーの時間。
先生「何が一番知りたいですか?」
私「リードを教えてほしいんです」
言った途端、目つきが変わった。デジャヴ…
とりあえずタンゴをやることになり…。
うん、タンゴはプレパレーションも予備歩もないしな、左足からな、出ればいいやんな。
(1、2、3、4、ワンっ!)
下がってくれない。
先生「それだと動けない」
ブルータス、お前もか。
私もこの頃には悟りましたよ。男性の先生は、「リード」というワードでハイドになる。
リーダーをやってみようと思っている女性のみなさんに伝えたい。日頃、どんなにちやほや甘やかしてくれるやさしい先生でも、「リード」というワードを出した瞬間、もれなくハイドになる。間違いない。そういうシステムになってる。
(ジキルとハイドって、「ハイド」の性格が怖いんちゃうんやな。「ジキルがハイドに変身する」から怖いんやな)
というわけで、この日のレッスンは、「それ伝わらない」「直進しないで」「女性を押して出るな」と言われ続けて25分終わりました。25分でウォークとリンクしかしていない。
先生「踊り出す前に、ルーティンの最後まで全部考えといて」
私(マジで?)←PPになってから次なんだっけと考えてる
いやあ、男性は大変やなー。初期に脱落していく人が多いはずだわ。続けてる男性、続けてるだけでえらいので自信持ってください(何目線?)。
ちなみ私、女性の先生にも不定期で習っております。
女性の先生は、一歩目をちゃんと出てくれます。なんなら逆リードしてくれます。くれますが…。
「遅い」(ここでも言われる)
「私がオンタイムで踊れるように出て」(自分がオンタイムで出てる)
「アウトに出ると見せてインに出るトラップ仕掛けないで」
「そっち向かれると、こいつLOD突っ切るつもりかと不安になるんだけど」
徹頭徹尾、女性目線。
私を!困らせるな!不安にさせるんじゃねえ!きれいに躍らせろ!!!
という圧…圧が……。
途中、たまにパートナー側の話になるのですが、「こういうふうにやるといいんだよ(やさしい)」みたいなテイストになるので…やっぱりそういうシステムなんやな…。
まあ…あれですよ。ハイドの指導にめげず、パートナーの「殺すわよ」という圧にも心折れず、艱難辛苦を乗り越えて続けた勇者だけがなれるもの。それがリーダー。
ということを悟った。悟りきった今日この頃です。燕尾デビューできる日まで地道に頑張りたいと…思います……(自信なさげ)。
(おわり)
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