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リーダー修行記51(本番直前スペシャル~リーパー逆転の落とし穴~(前編))

半年前に出たDance GALA の直前にも同じタイトルの記事を書いた気がしますが、本番直前になると混乱をきたすのは男女逆転の宿命なのでしょうか。それとも私の宿命なのでしょうか。

半年前に比べたら、それなりに経験を経て成長したはずなのに、私の成長曲線をはるかに上回る勢いでルーティンが難化しているので結局プレッシャーは変わらなくて、むしろ強まってる疑惑がある今日この頃(先生がパートナー側でやりたいステップをここぞとばかりに詰め込んだ疑惑がある今日この頃)。
本番に向けた追い込みで、ワルツの「アウトサイドランからのクイックスピン~スロースピン」という鬼ステップに苦戦していたときの話です。そう、教室の他の先生に「それやるんですか(笑)」と苦笑され、コーチャーには「大変そうだね(笑)」と失笑されたステップです。(ルーティンを作った当人が、何故そんなに他人事なのか)
リーダーの私にとってスピンは、テクニックの難易度というより、フィジカルの難易度が高くて、どのスピンも「パートナーを支柱にして回転する」という男女逆転の禁じ手を使ってしのいでいる有様なのですが、中でもこのステップは「命がけで回っている感」がにじみ出てしまって優雅さの欠片もなく、その割に音に遅れるという残念さ。そもそもランに入るときも、スピンに入るときも、私の視界はパートナーの身体で阻まれていて、向かう先がまったく見えないのです。そりゃ命がけにもなるさ

先生「けやきさんは回るときに僕の下に潜っちゃう感じなんだよね。まっすぐ立って
私「私のスピンのイメージは、下から上に巻き上がっていく感じなんですけど」
先生「下に降りないし、巻き上がらないよ。まっすぐ立って

そ、そうかな。スピンって乱高下するイメージなんだよな。
腑に落ちないまま、言われたとおり、極力まっすぐな姿勢を崩さないように踊ってみました。

先生「ほら、余裕が出るでしょ」

いや……?
いやいやいやいや?
余裕は確かに出るけど、それはそうなんだけど、その前にちょっと待って。
スピンの間の数秒間。私、今まで観たことのない光景を目にした気がしますよ?

このとき見えた光景をわかりやすく例えると、「ガラスの仮面」の「奇跡の人」で北島マヤが「ウォーター!」と叫ぶシーンみたいな感じなんですけど、「ガラスの仮面」知らない人にはまったく伝わらないですよねどうしよう。

私、その瞬間に、フロアを上から見下ろす感覚を得たのです。実際に見えたわけではなく(物理的にそれはない)、たとえるなら、パートナ―を懐に入れてフロアに立った、みたいな感覚です。

今まで私の中には、パートナーが大きいから下から見上げるしかないし、重量が違う相手と吊り合うためにはより下側の円周を回るしかない、という気持ちがあって、スピンに限らずずっとそうやって踊ってきたのですが、それはパートナーのサイズのせいじゃなくて、自分自身がパートナーとしての感覚で位置関係を決めていたせいではないか、ということに初めて思い至りました。

私、なんだかんだで、やっぱりどこかパートナー感覚で踊っていたんじゃないのかな。
自分が仕掛けることも、ルーティンを先取りすることも、方向を決めることにも慣れたけれど、根底のところはリーダーになっていないんじゃないかな。

思えば先生と踊るときも、武者修行に出たときも、いつもどこかで、最後の最後は相手がどうにかしてくれる、という気持ちがあったような気がします。フィジカル以外はもうすっかりリーダーになれたと思いあがっていたけれど、私の視点はまだまだパートナーでした。

なるほど……。
なるほど!
けやき、またひとつ開眼しましたよ。
真のリーダーの視点とは、パートナーを懐の中に入れて世界を見下ろしているような感じなのだな。

「つまりリーダーには、空間を支配している、みたいな感覚が必要なんじゃないですかね?」

あ、なんかカッコいいこと言っちゃった。

とひとりで照れていたら、
「それ、僕がよくコーチャーに言われてることだよ」
と、先生に真顔で言われました。

………マジか。
ぴよぴよ🐣してるわりに、ときどき本質を突くわね。けやき、恐ろしい子!(白目)

先生「まさかけやきさんと『その域の話』をする日が来るとは思わなかったよ。よし、本番は『支配する』でいこう」

あ、なんかまたハイドのスイッチ押しましたか私?

いやあの……もちろん私も、ようやく理解した「リーダー」の視点を身につけて真のリーダーになりたいし、修行のレベルが上がるのはやぶさかではないのですが、いかんせん、本番1週間前。レッスンできる日はあと2日。北島マヤのように、本番初日の朝に公園で開眼して午後には舞台で「ウォーター!」と叫ぶ才能は、私にはないのです。

何故あと1ヶ月早く開眼しなかったのか私……。

いや!それでもできるだけのことはやろう。パートナーモードをなんとか捨てて、一歩でもホンモノのリーダーに近づこう。
そう心して行った、次のレッスン。なんと今度は「先生がリーダーモードを捨てられない事件」が発生しました。

本番まであと5日。
………なんで今?

(後編へつづく)

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