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本当は面白い物理の授業 017 位置エネルギー

前回に続き、「エネルギー」の説明になります。

「エネルギー」には、様々なかたちがありますが、今回は「位置エネルギー」の説明です。

位置エネルギーとは?


「位置エネルギー」とはなんでしょう?

「位置エネルギー」の一つに、「重力による位置エネルギー」があります。

例えば、物体を地面から持ち上げた場合、手を離すと落下します。落下運動をするということは、エネルギーを持っているということです。

地面を基準として考えてみます。
「2mの高さから落とす1kgの鉄球」と「10mの高さから落とす1kgの鉄球」があるとします。
どちらの「エネルギー」が大きいでしょう。

感覚的に10mの方が大きいとわかります。

これは、10mから落とした方が、地面に衝突する時の速さが大きくなることを経験しているからです。



次の場合はどうでしょう。
「2mの高さから落とす1kgの鉄球」と「2mの高さから落とす10kgの鉄球」があるとします。
どちらの「エネルギー」が大きいでしょう。

これも、これまでの経験から、10kgの鉄球の方が大きいと推定できると思います。

小学生の頃、あんなに高い遊具の上から飛び降りても大丈夫だったのに、大人になると怪我をしてしまうのは、運動不足だけではありません。体重が重くなった分だけ、「位置エネルギー」が増えているからです。
(まだ、体が丈夫な高校生の方にはわからない感覚かもしてません)

私達の経験からもわかるように、「重力による位置エネルギー」は「高さ」と「質量」に比例します。

位置エネルギーの公式を導き出そう


地面から「高さh(m)」まで持ち上げた物体を手から離すと、「自由落下」します。地面に衝突するまで「自由落下」するということは、その物体が「エネルギー」を持っていると言うことです。
(空気抵抗は無視して考えます)

物体が地面に衝突するまでに、地球の重力が物体に対して行ったことは、

「質量m(kg)」の物体を「重力加速度g(m/s^2)」で「移動量h(m)」だけ移動させる仕事

だと言えます。下図のイメージです。

そして、これはもともと物体が持っていた「位置エネルギー」が「仕事」に変わったいえます。


この現象を式に表すと、

    位置エネルギー : U (J)
    物体の質量 : m (kg)
    基準からの高さ : h (m)
    重力加速度 : g (m/s^2)

    U = mgh

単位で考えると、

    (J) = (kg) ✖️ (m/s^2) ✖️ (m)
         = (N) ✖️ (m)
         = (J)

当然ですが、右辺も(J) になります。

「位置エネルギー」と「運動エネルギー」の関係


高さを持っている物体が「位置エネルギー」を持っていることはわかりました。

ここからは、

「位置エネルギーが、どの様に運動エネルギーに変換されるのか」

を考えます。また、「空気抵抗」は無視して考えます。

考え方を下図に示します。

「もともと物体が持っていた『位置エネルギー』が『自由落下(等加速度運動)』をすることによって、『運動エネルギー』に変換される」

と考えます。

「自由落下の運動」は、「物体が重力のみの力を受けて加速し続ける運動」です。

よって、「等加速度運動」です。

    物体の速度    : V (m/s^2)
    物体の初速度 : Vo (m/s)
    物体の加速度 : a (m/s^2)
    時間             : t (s)

とした場合、
等加速度運動している物体のt秒後の速度は、

    V = Vo + a・t  ・・・①

となります。「自由落下」の場合、「加速度a」は「重力加速度g」になります。よって、

    V = Vo + g・t  ・・・①’

です。


そして、t秒後の移動量をX(m)とした場合、

    X = Vo・t + 1/2・a・t^2   ・・・②

となります。(上図の射線部の面積が移動量です)

①の式をtについて解くと、

    t = (V - Vo) / a

これを②の式に代入し、aについて解くと、

   V^2 - Vo^2 = 2aX    ・・・③

という式が導き出されます。

これも「自由落下」の場合、「加速度a」は「重力加速度g」になります。そして、「移動量X」は物体が持っている「高さh」になります。

よって、

   V^2 - Vo^2 = 2gh    ・・・③’

そして、物体は初期に「位置エネルギー」しか持っていませんので、「初速度Vo」は「0(m/s^2」です。

   V^2 = 2gh

これを「速度V」について解くと、

    V = √(2gh)    ・・・④

式④は「高さh(m)」から自由落下させた場合の地面に衝突する直前の速度を表していることになります。

物体が地面に衝突する直前の「運動エネルギー」を

    K = 1/2 ・m ・v^2

とした場合、その時の速度は④になっています。
よって、④を代入すると、

    K = 1/2・m・(√(2gh))^2
       = 1/2・m・2gh
       = mgh
       = U

となります。
「位置エネルギー」と同じ式になりましたね。

この「運動エネルギー」は、もともと物体が持っていた「位置エネルギー」が変化されたものだということが証明できました。

本当は面白い物理の授業018へ続く

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