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本当は面白い物理の授業 013 静止摩擦力

前回の授業では、「摩擦力」の概略について学びました。

今回は、「静止摩擦力」の詳細を説明します。

「計算方法を丸覚えする」ことは大変です。
それよりも、「摩擦力が発生する原理を理解する」ことに焦点を当てて学習しましょう。


それでは、例を挙げて、順番に考えていきます。


「012の授業」で「机の上に置かれた辞書」の「摩擦力」について、説明しました。
その例を使い、「静止摩擦力」が発生する理由について説明します。

「机」の上に「辞書」が置かれています。
この「辞書」は、ただ置かれている状態のため止まっています。

「辞書」が止まっているということは、「辞書」が「外部から力を受けていない」ということでしょうか?

そんなことはありません。

「辞書」は「地球の重力」を受けています。現に、「机」を取り除くと、「辞書」は落下します。

「辞書」が落下しないのは、「机」が「辞書」を上向きに押し返しているからです。


そして、「机」が落下しないのは、「床(家)」が「机」を上向きに押し返しているからです。さらに「床(家)」が落下しないのは、「地面(地球)」が「床(家)」を上向きに押し返しているからです。

上図に示す様に、「辞書」は「重力」により、鉛直方向下向きの「(緑の矢印)」を受けています。

「辞書が重力から受ける力」=「辞書が机を押す力」

です。

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ここで「力」について、説明します。
「力」の定義について理解している方は、スキップしてください。

物理での「力」は、「ある質量の物体を、ある加速度で移動させることができる力」を意味しています。

具体的に書くと、

「質量1kg」の物体を、「加速度1m/s^2」で加速させるのに「必要な力は1N(ニュートン)」

となります。
「力」の単位は、上記の通り「N(ニュートン)」を使います。単位の考え方は、

「質量」✖️「加速度」=「力」

 kg・m/s^2 = N(ニュートン)

となります。

よって、
質量 m(kg)の物体を、加速度 a(m/s^2)で加速させるときの力 をF(N)とすると、

   F = ma

となります。

また、物体が「重力から受ける力」を考えると、この「加速度 a(m/s^2)」が「重力加速度 g(m/s^2)」になります。

 g = 9.8 (m/s^2)

「重力」は「質量m(kg)」の物体を「加速度9.8(m/s^2)」で鉛直方向下向きに加速させます。

よって、「質量 m(kg)」の物体が「地球から受ける力」は、

    F = mg

です。
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「摩擦力」の話に戻ります。

「辞書」の質量が1.0(kg)の場合、「辞書」は「机」を9.8(N)で押します。しかし、「机」も「辞書」を9.8(N)で押し返します。

それでは、「辞書」の質量が2.0(kg)になった場合はどうでしょう。「辞書」は「机」を19.6(N)の力で押します。やっぱり「机」は「辞書」を19.6(N)の力で押し返します。この関係は、「机」が壊れるまで続きます。
(有効数字を考慮する19.6N→20Nになります)


この様に、「面(机面)」に「垂直な力(辞書が押す力)」を加えた時、その力の大きさに応じて、「面(机面)が押し返す力」を「垂直抗力」と呼びます。
また、「垂直抗力」の記号を「N」とすると、

「辞書が机を押す力」=「机が辞書を押し返す力」

    mg = N

図示すると、下図になります。

そして、
「机」の上に置いた「質量m(kg)の辞書」を水平方向にF(N)の力で押した時、「辞書」が動き始めようとしたとします。

この「辞書」が動き出す直前の「押す力F(N)」を「垂直抗力N(N)」で割ったものが、「辞書」と「机」の間の「静止摩擦係数」になります。
「静止摩擦係数」は記号「μ」で表します。

「机と辞書の間の静止摩擦係数」=「机面に対して平行に辞書を押す力」/「辞書に働く垂直抗力」

    μ = F / N    (静止摩擦係数の単位は無し)

    F = μ N
       = μmg


この様に、「静止摩擦係数」は、「実験」により求めます。

また、
その物体の「材質」や「表面荒さ(ザラザラ度合い、ツルツル度合い)」により、「静止摩擦係数」は一定の値になる傾向があります。

以下、余談です。
「摩擦力」が発生する原理はいくつかあります。必ずしも「ツルツルの面」の摩擦係数が小さく、「ザラザラの面」の摩擦係数が大きいわけではありません。
相互の物体が影響し合って、摩擦係数が決まります。
よって、実験して求める必要があります。

「本当は面白い物理の授業014」へ続く

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