本当は面白い物理の授業 014 動摩擦力
今回は「動摩擦力」について説明します。
「動摩擦力」とは、「相対的に動いている2つの物体の接触面に働く摩擦力」です。
「机」の上に「辞書」を置いて、指で押して動かしてみましょう。
「辞書」を等速で押している間、「押している方向」と逆方向に、「辞書の動きを妨げる力」を指先に感じます。それが「辞書」と「机」の間の「動摩擦力」です。
「動摩擦力」は「最大摩擦力」よりも小さくなります。物を押して動かそうとした場合、動き出す直前が1番重くなり、動き出すと少し軽く感じるのは、「摩擦力」が「静止摩擦力(最大摩擦力)」から「動摩擦力」に切り替わるからです。
そして、「静止摩擦力」と同様に「動摩擦力」も「垂直抗力」に比例します。
「垂直抗力」とは「机が辞書を押し返す力」です。
それは、「辞書が机を押す力」と同じ大きさになります。
「動摩擦係数」を求める式を考えます。
指で辞書を押す力: F’
辞書の質量: m
垂直抗力: N
動摩擦係数: μ’
「辞書と机の間の動摩擦係数」=「机と平行に指で辞書を押す力(辞書が等速で動いている時)」/「机が辞書を押し返す力(垂直抗力)」
μ’ = F’ / N
= F’ / (mg)
F’ = μ’ mg
具体的な例をあげて解説します。
「引っ越し屋さん」が重たい「家具」を移動させる時、「家具」の下に「毛布」をひくことがあります。
理由は「静止摩擦係数」と「動摩擦係数」下げることで「押す力」を低減するためです。
家具を押す力: F
家具の質量: m
家具と床の静止摩擦係数: μ0
家具と毛布の静止摩擦係数: μ1
毛布と床の静止摩擦係数: μ2
毛布と床の動摩擦係数: μ2’
※毛布の質量は小さいため無視します。
以降は、下図を参照しながら読んでください。
「家具」の底面は、設置後の安定性を考慮し、滑り難い材質が使われています。
そのため、「家具」が「床」の上に直接置かれている状態では、「静止摩擦係数μ0」が大きくなります。
動かすには「最大摩擦力 μ0 mg」以上の力が必要です。
そこで、「家具」の下に「毛布」をひきます。
「毛布」は滑り易いアクリル製です。「床」もやや滑り易い木製です。よって、「毛布」と「床」の間の「静止摩擦係数μ2」は小さくなります。
一方、滑り易い「毛布」と滑り難い「家具」の間にも「静止摩擦係数μ1」があります。この「静止摩擦係数μ1」は、「μ0」と「μ2」の間に位置します。
「家具を押す力」を徐々に上げていきます。その力が「μ2 mg」に到達すると、「家具」と「毛布」が一緒に動き始めます。
何故なら、
「家具と毛布の間の最大摩擦力 μ1 mg」>「毛布と床の間の最大摩擦力 μ2 mg」
だからです。
そして、「家具」が動き始めた瞬間に、摩擦力は「動摩擦力μ2’ mg」になるため、等速で押し続ける限り、「最大摩擦力μ2 mg」よりも小さな力で押すことができます。
また、
もし「μ2」>「μ1」となる様な関係の場合、「家具」だけが動き、「毛布」は「床」の上で止まったままになります。
ここまでが「動摩擦力」の基礎になります。
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