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ボーカロイドの深淵を覗こう #8

こんにちは。ボカロが好きです。ボカロはいいぞ

 さて、「アンダーグラウンドボカロジャパン」「感性の反乱β」「POEMLOID」「VOCALOIDよれよれ曲リンク」「ボカイノセンス」の全曲周回を目指して感想を書いていくシリーズの8回目です。最終的にこれらのアングラボカロジャンルの目録として機能するようにするのが目標です。

 クレジットについて、概要などに表記がなければ作詞作曲を投稿者本人が行ったとして表記します。絵や動画については概要欄にクレジットがある場合のみ表記します。

 というわけで、さっそくいきます。


0071. アサ・カフェ / njn

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:njn
ボーカル:初音ミク
投稿:2008/8/14

 朝と言うにはかなり面白いミクノポップ。MPCで作ったかのようなフレーズの繰り返しが聞いていて楽しいです。
 内容は「Neko Mimi Mode」を想起させるようなふわふわとした感じがあります。いろいろなミクの声が押し寄せてきてかわいいです。


0072. 落下感 / ypl

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:ypl
ボーカル:初音ミク
投稿:2008/8/20

 初音ミクのコーラスが美しいミニマルアンビエント。同じフレーズの繰り返しとアンビエントな拍動を感じさせないサウンドによって世界と溶け合うような没入感があります。とても落ち着く。


0073. インスタント絶望。 / ヒッキーP

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:ヒッキーP
動画:しょうこ
ボーカル:鏡音リン
投稿:2008/8/24

 とてもかっこいいヒッキーPのリンレンの厭世感ある曲。約1分と短いですが、エレクトロな効果音が何重にもサンプリングされたようなサウンドや達観した歌詞がとてもかっこいいです。2007年に1期、2008年1月~3月に2期がアニメが放送されたさよなら絶望先生へのアンサーだったりもするんですかね? 一度そう考えるととてもシャフトっぽさも感じるPVもまたかっこいいです。


0074. 君に☆スプラッシュ / ヒッキーP

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:ヒッキーP
絵:よもりん
ボーカル:鏡音リン / 鏡音レン
投稿:2008/8/31

ヒッキーP暴れすぎwという感じの人類には早すぎる電波曲。
急にノイズをいれるなど、歌詞、内容、音量、MV、そのすべてが暴れている曲です。色んな意味ですごすぎ。


0075. 君に☆スプラッシュ / ぽこたんP

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:ぽこたんP
ボーカル:初音ミク
投稿:2008/8/31

 クラシックをサンプリングしたような音素とハイレベルなエレクトロが融合するプログレ。先程と同じ曲名なのはどちらも2008/8/31に「キミに☆スプラッシュ」というタイトルで投稿する曲名統一祭が行われ、どちらもその参加曲だからです。
 かっこいい曲の中で挿入される「スプラーッシュ」というけだるげな声がいい味を出しています。また、4:30頃から雰囲気ががらっと変わりメタルロック調になります。そちらもかっこよくて面白いです。


0076. TAPATA! / 新日暮里 仕方ないね

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:新日暮里 仕方ないね
絵:TAB
ボーカル:初音ミク
投稿:2008/9/2

 とりあえずP名らしいものが不明だったのでユーザ名をそのまま載せておきます。ひたすら初音ミクがTAPATAと言い続ける電波ソング。ザ中毒的です。前回の「にゃ!」「にゅ!」「にょ!」「にぇ!」の系譜なのかもしれません。
 うにょうにょ動く初音ミクのイラストもなかなか不気味さもあります。TAPATA。


0077. 第一話:my name ~起動00~ / マイんドP

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:マイんドP
絵:零花
ボーカル:初音ミク
投稿:2008/9/2

 「ワタシノナマエワハツネミク」を繰り返す、科学者と初音ミクの物語の序章。
 2008年というと、19's Sound Factoryの「Dear」などFirst Sound Storyシリーズが1月~6月、トラボルタPの「ココロ」が同年3月、悪ノPの「悪ノ娘」が4月、オワタPの「ベンゼン」が11月と、ストーリーのある楽曲や連作が流行しはじめた時期です。後にカゲロウプロジェクトなどへつながっていく偉大なボカロの作品形態の誕生過程を彩る楽曲の一つです。
 個人的にはこうした物語音楽の系譜は、前年2007年の「聖戦のイベリア」などのSoundHorizonのニコニコでの受容が、ある程度影響しているのではないかと思うのですがどうなのでしょう。ファンの身内贔屓かも。ただ、2008年に投稿されたサンホラ楽曲を使用したローゼンメイデンの手書きPVやテイルズMAD、作業用BGMが伸びているのは事実なので、なくはない気もしています。
 話を戻して、歌詞は「ワタシノナマエワハツネミク」だけですが、サウンドの広がりがあって、途中から増えていく音、激しいシンバルやテクノ感ある音が物語の始まりを強く印象付けています。


0078. Love Love Nightmare / Kiichi(なんとかP)

タグ:感性の反乱β
作詞・作曲:Kiichi(なんとかP)
絵:u
ボーカル:初音ミク
投稿:2008/9/4

 初の殿堂入り曲! かっこいい展開に引き込まれるエレクトロ。4つ打ちで途中で刻んだり、テンポが変動したりとずっと緊張感が保たれ続けます。
 イントロが約130秒続く構成もすごいです。サウンドで聴かせるという意識とそれを達成するクオリティが凄まじい。
 中毒性が高くとてもかっこいい感性の反乱βです。


0079. なんでもおまんこ / Millipede

タグ:POEMLOID
作曲:Millipede
作詞:谷川俊太郎(「なんでもおまんこ」, 小説新潮1995年11月号初出, 谷川俊太郎選集3(集英社, 2005)所収)
ボーカル:鏡音レン
投稿:2008/9/6

 谷川俊太郎の一部で有名な(?)詩の朗読。とんでもないP名がついてますが、この一作しか投稿されていないのは、辞めてしまったのか、P名に耐えきれずアカウントを変えたのか……後者なら賢明だと思います。
 元の詩の終わりのところで一旦落ち着いてから、もう一度盛り上がってサンプリングが繰り返されるアウトロがかっこいいです(内容はアレですが)。
 歌詞の内容については曲としてでなく谷川俊太郎の詩の話になってしまうのですが、個人的にはネタではなく詩としてとても好きです。「でもこれじゃまるで死んだみたいだなあ/笑っちゃうよ/おれ死にてえのかなあ」を最後に持ってくるのやっぱり凄いなあと思います。生命にあふれる世界にエロスを見出しつつ、エロスとタナトスの両義性を最後に明らかにする構成の美しさがあります。世界が生に満ちているということは死にも満ちているというわけで。デカルトは『情念論』で「蛆虫に触れること、揺れ動く葉の音、その影」などの出来事が「明らかな死の危険が感覚に示された場合の如き」「嫌悪から生じる欲望」の原因すなわち、タナトスとして語っていますが*、谷川俊太郎がエロスの結果として「おれに土かけてくれよお/草も葉っぱも虫もいっしょくたによお」と語りかけるのはエロスとタナトスの価値転倒を表現していると感じます。

*黒岡浩一「デカルトにおけるエロスとタナトスの一考察」, Gallia : bulletin de la Société de Langue et Littérature Françaises, de l'Université d'Osaka, 41巻, pp.1-8, 2001, 大阪大学フランス語フランス文学会


0080. はらぺこさん / 100sP

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:100sP
ボーカル:初音ミク
投稿:2008/9/13

 大体100秒の曲を投稿する100sP。こちらも100秒の曲ですが、DS-10で作られた激しいサウンドが癖になります。
 歌詞は佃煮とごはんをミクさんが要求する謎の内容ですが、そういう謎さもよれよれ曲の魅力です。


今回はここまで。それでは!


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周回の中で特に気に入った曲をマイリストに入れておきます



日記 2022/5/5
 夜行音楽スペシャル見ましたか?? めちゃくちゃ良かった……2014年頃のボカロの温度感をDECO*27、ピノキオピー、syudou、かいりきベア、Neruという錚々たるメンツが語っていたのが貴重でした。固定化されかけていた「ボカロっぽさ」を2014年頃の間隙が緩和してむしろ多様なボカロ曲が生まれるに至ったという話はなるほどなあと思いました。確かに、2014年頃は爆発的なヒット曲こそ少ないですが、カンザキイオリやOrangestarなど次なる才能がメキメキ成長していたような時期な気がします。実際2014年発表の「アスノヨゾラ哨戒班」は今や神話入りです。
 ライブもよかった……ヴァンパイア可愛かったですねえ、MIKU EXPO Onlineで磨いたAR技術が十全に発揮されていました。クラファン参加してよかった……。
 ところで、そのヴァンパイアでミクが「DECO*27のミク」になったのをみて「ミクは口パクで歌っています」と鬱Pが冗談をTwitterで言っていましたが、なかなか示唆的だと思います。ボカロって、その製作者を初音ミクというフィルターを通して表現する点で、初音ミクはイタコと言えるかもしれない。

 紹介の方の谷川俊太郎の詩と夜行音楽で思い出したのですが、谷川俊太郎とDECO*27が対談したインタビュー記事がありとても好きです。

Conti Newの頃のDECO*27さんの歌詞作りに対する深い話をしています。

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