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サムシング・フォー

6月ですね。
ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』の物語の中にsomething fourを見つけたので報告します。

①第5章
『ウィリアム父さん、もう年だ』
"You are old, Father William."
something old

②第2章
自分の足に新しいブーツをプレゼント
"I'll give them a new pair of boots for Christmas."
something new

③第3章
ドードーが「アリスから借りた指貫」をアリス自身に贈呈する
something borrowed

④第4章
A large blue caterpillarが登場
something blue

⑤第12章
「この詩の意味が分かったら6ペンスあげる」
"If any one of them can explain it, "
"I'll give him sixpence."
sixpence

(③⑤の場面は『地下の国のアリス』にはありません)

something fourはご存じですね。

Something old,
Something new,
Something borrowed,
Something blue,
And a sixpence in her shoe.

マザーグースより

古いもの、新しいもの、借りたもの、青いもの、そして6ペンス硬貨。
花嫁が身に付ける品々です。

やはり「指貫贈呈」は「指輪贈呈」のアナロジーだったか···。

私はこれまで『不思議の国のアリス』を「求愛」、『鏡の国のアリス』を「求婚」の暗号物語であると位置付けてきました。
(『不思議の国のアリス』は「署名の無い手紙」第6連で大アルカナの第6番「恋人」を示唆、『鏡の国のアリス』はチェス手順とレント、3個のプラムプディング等で1872年の結婚を示唆)

しかし、今回のsomething four仮説が正しければ『不思議の国のアリス』も「求婚」ということになりますね。

···呼び方を変更すべきか。

そのヒントになるパズルがあります。

『不思議の国のアリス』第2章でアリスが掛け算を暗唱する場面。
multiplication tableから同義語であるtimes tableを連想させ、times tableからtimetableへと導きます。
timetableは「予定表」の意。

このtimetableを答とするパズルは、第7章のお茶会の話題のシャレード、第3章のコーカスレースとマウスの話としても出題されています。
(お茶会の話題は前半がtableで後半がtime。コーカスレースは円を描く競走が「時計」の謎々でtime、マウスの話はtail/tale→ta○le→table)

少なくとも3回は強調されているわけですから、重要な意味があるはず。
どんな「予定」なのでしょう。

掛け算の暗唱直後、作者はアリスに「いつまで経っても20にならない!」と言わせていますね。
この台詞は「20歳になりたいのに」と望んでいるように読めます。
作中アリスは7歳という設定ですが、実は「早く大人になりたい」···?

当時の法律上の結婚可能年齢は13歳。資料によっては12歳とも書かれているので満年齢か数え年かということだと思います。
同様に成人年齢は満20歳(数え21歳)。

『地下の国のアリス』は1864年。
『不思議の国のアリス』は1865年。
『鏡の国のアリス』は1872年。
(刊行は1871年だが表記は1872年)

『鏡の国のアリス』で結婚を示唆された1872年は1852年生まれのアリスの成人年齢です。

『不思議の国』と『地下の国』のラストシーンに出てくるrun into your teaというお姉さんの台詞は「貴女の分のお茶が冷めてしまうから急ぎなさい」とも「Tea(キャロルのニックネーム)の元へ行きなさい」とも採れるダブルミーニングのメッセージ。

キャロルは弟が15歳年下の女性と結婚する際「彼女が20歳になるまで待った方がいい」とアドバイスしています。

ここまでの諸々を考え合わせると、「法的な結婚可能年齢である満13歳でプロポーズして、成人年齢の満20歳になった時点で結婚」というtimetableが浮かぶわけですが···。
うーん、キャロル側の希望ですよね。

『不思議の国』と『鏡の国』。
「婚約」と「結婚」の暗号、かな?

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