『アリス』の謎解きレポートを終えて

ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』について、9月9日からnoteに書いていたレポートが終了しました。

「世界一有名な未解決の謎々」とも称される帽子屋の謎々への回答から始めて、1日約1話のペースで70話、よく続いたものです。

来年の2021年が『鏡の国』刊行150年ということで見切り発車気味にスタートしたのですが、予想外に新たな発見が多くて嬉しい悲鳴状態となりました。

謎解きの内容はネタバレになるので伏せますが、作品の印象や位置付けが大きく変わるのは間違いありません。

「ネタバレになるから感想は書けない」ってどんな感想文なんだか。

とりあえず、「伏線回収型のパズルが最終的に暗号メッセージに至る」としておきます。

普通はパズル集を1問も解かずに問題文だけ読み上げたりしたら極めて味気無いはずですが、この『アリス』は問題文だけであっさり時代を越えてしまいました。

バケモノです。

『不思議の国』が1865年、『鏡の国』が1871年ですから、1845年の『黄金虫』より後で1887年以降の『ホームズ』より前。

ミステリ好きが暗号文学としての『アリス』をどう評価するかも気になりますね。

しかし、なぜ150年間も謎解きが放置されていたのでしょうか。

マーティン・ガードナーのAnnotated Aliceのシリーズが面白過ぎたということもあるのでしょうが、ナンセンスとかノンセンスとかの言葉が一人歩きしてしまったのが最大の要因のように思われます。

「ナンセンスだから答などあるはずがない」
そんな思考停止が、目の前にあるヒントまで見えなくさせる悪循環を招いた、とか。

・・・まあ、おかげで私がこんなに楽しめたというわけなんですけどね。

それにしても。

作品を読むことで書くための材料が生まれ、書くことで、読むだけでは見えなかった要素が見えてくるようになる。
両者が一体化したこんな貴重な読書体験は、一生に一度あるかどうか。

最近は、やればやるほど底が見えなくなっていくという感じで、面白いやら怖いやら。

パズルにおいては、「英語・かな混じり文」で思考できる日本語の特性が武器になるのも実感しました。

私は主にマザーグースの謎々詩に用いられていた技法を参考にしたのですが、アナグラムやゲマトリアを探すのは苦手。
シェイクスピアもろくに読んでいないので、これからはそういった角度から『アリス』のパズルに挑むのも有効かもしれません。

解けてない問題も多いのですが、2021年のタイムリミットを考えるとこの時期に書いておいて正解だったはず。

今回のレポートが、議論を始めるための
叩き台になってくれれば嬉しいと思います。

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