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男泣く時

雪の登山家 息白く
登る足元 雪深く
ウサギ駆けりて 目で追えば
光一面 染め上げて
新たな夜明け 眼前へ
ふと目覚めれば 部屋の中
奥方傍に 茶を入れて
さらなる目覚め 促して
今この私 奈良の中
仏は笑みて 鹿の足
石の道踏み トコトコと
歩いて群れる 奈良の中
味噌汁一つ すすり飲み
わかめを噛んで 飲み込めば
味の世界へ 飛び込んで
ワインの赤は 太陽の
陰となっては 味深し
和食の国は 日の本よ
遍く照らせ 日の光
桜と富士は 日の本の
シンボルなりし 宝なり
七福神の 舟乗りて
波間を行けば 潮白く
うずを巻く海 厳かで
旅の人の目 波見つめ
波乗り舟の 音の良さ
聴きて佇み 舟は行く
日の本訪ね 江戸へ着く
都会はいつも 人多く
喧騒の中 寺参り
神仏(かみほとけ)見て 桜花
咲いて散りては 世の常よ
人の死もまた 花びらの
如くなりしと 僧は言う
仏在しまし 世を照らす
御光ありて ひと生きる
その長さには 今ありて
未来永劫 輝きて
仏の姿 夢現
果たして今は 去りなんと
旅へ出る夜 我一人
笠さしてふと 見上げれば
ほろほろと散る 山吹や
その黄の色は 道の上
積もりてすべて 真っ黄色
イチョウ散る頃 我はまた
帰り着くだろ 我が郷よ
そのみ手の中 抱きしめて
一つなる時 我は泣く。

2023.3.11

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