(準)断糖高脂質食実践のために(version 2020-Feb-05)

 以下のノートは、(準)断糖高脂質食によって18キロの減量=標準体重への回帰を実現できたガダス(Twitter: @ketogenidros)が、その実践において留意した事項や、原資となった情報ソースを整理したものです。
 断糖高脂質食に対しては、論壇上でもネット上でも賛否両論あります。僕自身の勉強における理解では、その長期的な健康への影響については、まだ確固たる結論は出ていないと思われ、ゆえに賛否があるのは当然だと思います。ただ僕は、糖の(過剰)摂取を是認した「バランスの良い食事」については明らかに間違っていると判断しています。また、糖質制限の害を主張するコホート研究はすでに多数ありますが、その「すべて」において被験者の糖摂取量は1日あたり数十gを超えており、1日数gを目指す断糖高脂質食の参考にほとんどなりません。よって、今後の研究動向等を注視してく必要はありつつも、現状においては、断糖高脂質食の減量における迅速な効果は高く評価するべきと考えています。何より、個人差もあるかもしれませんが、ダイエットに特有の食に対する苦悩がほとんどないのが素晴らしいです。
 以下の情報が、これから断糖高脂質食をトライされる人の参考になる部分があれば幸いです。なお、「(準)」と付けているのは、僕程度のポリシーでは完全な断糖には程遠いことを意味しています。中途半端をどうかご容赦いただければと思います。

【実践の前に、断糖高脂質食の基本を理解するために読むべき3冊】

 断糖高脂質食において重要なことは、糖質を断つことだけでなく、脂質を適切に摂取することです。「糖質制限」と「高脂質食」の両輪が必要であることは、強調してし過ぎることはなく、断糖高脂質食はただの「糖質制限」ではないことは十分理解しなければなりません。その理解を深めてダイエットを実践するために、恒常性や脂質代謝、糖代謝の生体システムにどのように働きかけることで減量が実現されていくのか、その理論的基礎を最低限得るべきでしょう。糖質制限に関する書籍はいまや巷に溢れかえっていますが、高脂質食にまで踏み込んで記述している書籍は正直多くありません。僕が触れた中では以下の3冊はその数少ない書籍であり、必読と断言できます。

1)グラント・ピーターセン著(金森重樹監訳・石黒千秋訳)『【増補完全版】まさか!の高脂質食ダイエット』(きずな出版、2019)amazon
2)ジェイソン・ファン著(多賀谷正子訳)『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』(サンマーク出版、2019)amazon
3)ジョン・ブリファ著(江部康二/夏井睦監修、大田直子訳)『やせたければ脂肪をたくさんとりなさい』(朝日新聞出版、2014)amazon

【取っ掛かりとしてお勧めできる水野医師の「蛋白脂質食の説明書」】

 断糖(厳糖)高脂質食実践の取っ掛かりとして手軽なのは、水野雅登医師@masa_doc がまとめられた「蛋白脂質食の説明書」を見て、実践してみることです。
https://mizunodoc.jp/archives/138
 ここで触れられている食材を参考に、糖質を減らし、タンパク質の適正量に気を配りながら、十分な動物性脂質を摂取します。カロリーを気にする必要は基本的にないです。

【タンパク質-脂質-糖質の大まかな摂取量を把握する】

 実践しはじめてすぐに戸惑うことの1つは、「タンパク質と脂質と糖質の量を、どうやって計るんだよ?」ということではないでしょうか。結論としては、電子天秤を用いて摂取する食物に重量を計量し、公開されている栄養成分データを参考にして栄養成分を概算するべきです。計量しながら食事なんて面倒と思われるかもしれませんが、毎食事ではないにせよ、量的感覚を得るために定期的に実施するべきと考えます。幸い、マックスさん@diet_maxが、便利なエクセル計算シートを公開してくださっており、摂取量計算の実践に非常に便利です。
https://twitter.com/diet_max/status/1192452932785987585
 このエクセルシートに掲載されていない品目については、以下の書籍やウェブサイト(カロリーSlismなど)を参考に、自分で拡張していけば良いです。
https://calorie.slism.jp/

小田原雅人監修『目で見る食品糖質量ハンドブック』(学研、2018)amazon

【軌道修正】

 水野医師のプロトコルでも減量効果は相当高いと思いますが、実践してみると、断糖高脂質食徹底のためには軌道修正したくなる部分が出てくるのではと思います。僕自身は特に以下の4点は強く意識するようになりました。
(1)糖質制限のさらなる徹底:水野医師プロトコルにある「1食あたりの糖20g」という方針は、断糖のスタイルから見るとかなり甘いと言わざるをえません。水野医師のプロトコルに準拠しつつも、無理のない範囲で、1日の糖質を1ケタ台にする工夫をしていくと良いと思います。理想的には1日5g以下を目指すべきですが、僕自身はもう少し甘く1日7gを指針としています。
(2)油の種類の選択:オメガ3系油の健康への好影響はすでによく言われているところですが、より重要なのはオメガ3系とオメガ6系の比率とされています。オメガ6系を極力減らしていくことで、体内の慢性炎症を抑制し、それが減量効果を高めるとするのが最近の科学的知見です。これに従うと、オメガ6系を大量に含むゴマ油やサラダ油を僕はほとんど摂取しなくなりました。代わりに、牛脂、バター、ココナッツオイル、グラスフェッドギー、そしてMCTを多用することになります。
(3)肉の種類の選択:上述のオメガ3/オメガ6バランスから考えると、鶏肉と豚肉はあまり取らなくなり、牛肉、魚、そして卵を主とするようにしました。
https://twitter.com/dts_hohomi/status/1169287146349314048
ただ…、個人的に鶏のヤゲン軟骨や塩煮豚は大好きで、しばしば楽しむのは許与しています。
(4)人工甘味料の回避:水野医師プロトコルでは、エリスリトール等のカロリーレス人口甘味料は許容されています。しかし、たとえカロリーレスでも、これらの人工甘味料はインスリン分泌を促しうることが指摘されており、減量効果を高める意味でもあまり積極的に摂取するべきではないと考えます。

【金森重樹さんや在野実践者たちの様子を見る】

 断糖高脂質食を自分なりのやり方を日々模索していく過程においては、先達たちの意見を常に参照するべきです。今や、断糖高脂質食のオーソリティたちがTwitter上で日々意見や最新情報を発信してくださっており、ありがたい限りです。特に、このムーブメントを牽引してくださっている金森重樹さん@ShigekiKanamoriのTwitterフォローは必須です。
 また、在野の多くの実践者のTwitterの情報は参考になることばかりです。CHOBITAさん@CHOBITA13が作成された「金森式ダイエット」リストに、多くの実践者が掲載されています。
https://twitter.com/i/lists/1165307865784967169
 非常に個人的ですが、特にキヒロフさん@95kg_online、moeさん@moe27184405、そして筋トレ旧石器人さん@workout_cavemanのTweetは、頻度高く参考にさせていただいています。

【メガビタミンへの理解を深める】

 断糖高脂質食にある程度慣れてくると、次の段階として、脂質代謝を高めて適切な恒常性を維持するために鉄やビタミンをある程度大量に(いわゆる「メガビタミン」)摂取する必要性を感じてきます。このためには、分子栄養学(オーソモレキュラー栄養医学;俗に言う三石理論あるいは藤川理論)をある程度理解しておくことが肝要です。藤川徳美医師@niyGkvyHvjd7ytqのTwitterと以下の著書が大変に参考になります。

藤川徳美著『医師や薬に頼らない! すべての不調は自分で治せる』(方丈社、2019)amazon

(2020-02-26注記: EAA騒動に対してさすがに飽きれた対応をした某K氏の文献は削らせてもらった。二度と信頼することはできない。)

 飲み方については個人差が大きいと思いますので、これらの著作や情報を元にしながら、それぞれの試行錯誤が必要です。

【有益な反対派からの情報】

 冒頭にも述べた通り、断糖高脂質食に対しては根強い反対意見があります。僕としては、単なる感情的なだけの無知な意見に耳を傾ける気はありませんが、一方で経験と知識に基づいた非常に重厚な反対派の方もいらっしゃり、そうした人々の意見は参考にしていく価値があると思っています。個人的には、堀江俊之さん@ToshiyukiHorieと梅本奈穂さん@Meal_ManagementのTweetはとても勉強になります。断糖高脂質食には反対の両氏ですが、一方で炎症を回避するためのナチュラルフードの重要性や、メガビタミンの摂取の必要性など、実は断糖高脂質食にも有益な意見をたくさん知ることができます。

【ガダスの最近の食事ルーチン】

 食事の方針を決めたなら、金森さんがしばしば指摘するように、「凡事徹底」、軌道修正は加えながらも淡々と食事していくだけです。現在、僕の基本的なルーチンは以下の通りです(もちろん日によって、食材に応じて、多少のmodificationはあります)。このルーチン(調味料込み)で、糖質は1日7g以下には抑えられます。毎食、非常に満足感を感じて終了できています。

朝:紅茶300mL(+ココナッツギー5g、MCTオイル7g)、塩プリン(https://twitter.com/ShigekiKanamori/status/1178851411099971584のレシピの1/3量)、B-50 x 1、鉄18 mg x 1、オメガ3 x 1、ナイアシンアミド500mg x 2、ビタミンC 1000mg
昼(職場に弁当持参):牛脂かバター40g、肉類150-200g+調味料、かつお節3g(これに調理時に滲み出た牛脂を吸わせる)、卵1個、野菜類/キノコ類少量、B-50 x 1、マグネシウム400mg x 1、ナイアシンアミド500mg x 2、ビタミンC 1000mg
職場での間食:紅茶かマテ茶。空腹感に耐えられない時はクルミかナチュラルチーズ(乳化剤なし)
夜:牛脂かバター40g、肉類か魚介類150-200g+調味料、卵2個、野菜類/キノコ類少量、B-50 x 1、マグネシウム400mg x 1、E-400 x 1、オメガ3 x 1、ビタミンC 1000mg
就寝前:ナイアシン(←アミドではない)500mg x 1

【「準」断糖高脂質食における不徹底部分】

 本ムーブメント牽引役である金森さんは、断糖高脂質食による減量効果を高めるために、上述した以外にも幾つかの方針を提示していますが、僕自身は従っていない部分も多く、断糖高脂質食を徹底しているとは言い難いことを告白しなければなりません。以下に列挙する部分は、「金森式」を徹底している方々には受け入れがたい部分があることを理解しており、。
(1)食事回数は何回にするべきか?:金森さんは、食事回数を減らすことでインスリン分泌回数を減らすことが、脂質燃焼に重要であることを強調しています。理論的には、この意見に何ら反対するものではありません。しかし、僕自身は空腹時間の長時間化は正直耐え難く、3食のスケジュールにしたままです。そのせいで減量ペースが金森さんの考えるようには早くないと思いますが、それでも僕は十分な減量効果を得られました。
(2)野菜、キノコ、ナッツ、そして豆は取らないべきか?:これらの食品の摂取重量が多くなると、反比例的に肉魚卵脂を十分に摂取できなくなり、結果としてタンパク質不足と脂質不足を招きがちです。よって、僕自身もこれらの摂取量は、断糖高脂質食実践前に比べると激減しました。
 一方で、金森さんが主張するように、植物毒の存在ゆえに野菜は取るべきではない、という主張をそのまま賛同するのは個人的には抵抗があります。というのも、植物に含まれるファイトケミカルは、ヒトによって有益な部分は間違いなくあるだろうと文献的にも思えるからです。植物毒とファイトケミカルのバランスの解明は、今後の研究に望む部分かも知れません。結局のところ僕自身は、野菜摂取総量は大きく減らしつつも、海藻、白菜、ブロッコリー、オクラ、クルミ、そして納豆程度は時々楽しんでいます。重要なのは、1日あたりの糖質量を抑えることを留意しながら摂取することだと思います。
(3)調味料はどうするか?:金森さんは醤油や香辛料の糖質の高さを指摘しています。僕も、調味料使用を抑制する方向で考えていくことには同意です。
参考:https://twitter.com/ShigekiKanamori/status/1224935846832304128
 ただ僕自身については、恥ずかしながら、これらの調味料を完全にゼロにすることには非常に抵抗感があり、醤油、コショウ、そしてカレー粉はしばしば料理に使っています。もちろん、量を過剰に使うことがないように留意しています。
(4)コーヒーを飲んではいけないのか?:金森さんはコーヒーを回避していますが、僕はいまだにコーヒー大好きです…。日常生活では紅茶とマテ茶をメインにしつつも、外出時の喫茶店でコーヒーを楽しむことは時々しています。こちらも、1日あたりの糖質量を抑えることを留意しながら摂取すれば良いと思っています。
(5)外食対応:この点が最も僕がいい加減な部分ですが、飲み会や出張、あるいは旅行の際にはあまり神経質にならずに過ごしています。当然、体重は増えますが、増えてしまった分はその後の日常生活の断糖高脂質食の徹底で補正すれば良いという態度です。ただそれでも、外食時に白米やうどんに手を出すことはさすがにほとんどなくなりました(ビールについては、会合の乾杯で一口二口飲むことはまだあります…)。

【補遺:専門的/発展的な考え方を知るための6冊】

 断糖高脂質食を実践していると、さらなる生理学的・分子生物学的背景はもちろん、科学が発展する前の先人たちの知恵、疫学や栄養学、そして人類学の知見、あるいは栄養学や医学がどのような業界的構造にあるのかにも自然と関心が湧いてくると思います。特に僕が有益だと思った6冊を以下に挙げます。

1)大平万理著『「代謝」がわかれば身体がわかる』(光文社新書、2017)2)ルイジ・コルナロ著(中倉玄喜訳)『無病法』(PHP研究所、2012)
3)近藤正二著(萩原弘道解説)『新版 日本の長寿村・短命村』(サンロード出版、2015)
4)佐々木敏著『佐々木敏のデータ栄養学のすすめ』(女子栄養大学出版部、2018)
5)ウェストン・A. プライス著(片山恒夫訳)『食生活と身体の退化』(恒志会、2010)
6)笠本新一著・浜崎智仁監修『コレステロールは高いほうがいい』(マキノ出版、2004)

 本文書は、今後もどんどん改良していきたいと思います。異論あれば、@ketogenidrosのDMまで是非お寄せいただければ幸いです。■

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