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SS)熊のぬいぐるみ

こないだキャバクラに行った時に、
『誕プレって何を貰ったら嬉しいの?』って話をしてたら……。
『本当は現金が1番なんだけど……。それだと可愛い気がないからぁ。お花とかケーキっていかにも可愛い系の女の子がが欲しがりそうなものを言ってるんだよねぇ。あっ!これは田中さんだから言ったんだからね。内緒だよぉ』

『可愛い物の定番の大きな熊のぬいぐるみが抜けてるやん』

さっきまで明るく振舞っていたみかが急に神妙な顔つきに変わり
『…熊のねいぐるみはちょっとぉ……』

『え?なに?熊のぬいぐるみでなんかあった?分かった元彼絡みとかだろ?』

『元彼とかじゃなくてぇ…実は前のお店の時なんだけどぉ……』

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『あっ!鈴木さんお久しぶりですぅ♡お元気でしたかぁ?』

『俺は元気だよ。みかは元気だった?会いたかったよー』

『みかは元気でしたよぉ。鈴木さんたら、LINE送ってもあんまりお返事くれないから、もう来てくれないのかと思ってましたァ。今日は来てくれて本当に嬉しぃ♡
ありがとうございますぅ』
『鈴木さん髪型変えられたんですね?前の長い時も良かったけど、今の短髪のが若く見えてかっこいいですね♡』

『あっ!そう。……ありがとう。今日は久しぶりの再会を祝して沢山飲もうね。あっそうだ。はい。コレ』
鈴木は大きな袋をみかに手渡した

『えっ?なに?なに?開けていいの?』

『みか、もうすぐ誕生日でしょ。だから前に欲しいって言ってた大きな熊のぬいぐるみ』

『うわぁー。嬉しい♡ありがとうございます。大切にお家に飾りますねぇ』

『そんな事言って……店に置き去りにしないでよー笑』

みかは帰宅後にぬいぐるみを持ち帰り、ベッドの横にぬいぐるみを飾った。その写真をLINEで送ると鈴木はとても喜んでくれた。
その日以来、鈴木から頻繁にLINEが来るようになり、店にも毎週の様に顔を出すようになった。
最初はたわいないのない内容のやり取りが続いたが、ときおり
『カーテン可愛い色に変えたねぇ』
とか
『昨日みたいに暖房をつけっぱなしで寝ると乾燥で喉を痛めちゃうよ』
と実際に見ていなければわからないようなメッセージが送られて来るようになった。
それを不気味に思い鈴木が来店した時にみかは思い切って、その事を聞いてみる事にした…。

『鈴木さんにカーテン変えたって話ってしましたっけ?なんでそんな事が分かるのかなぁ?って事がちょこちょこあって不思議だったんですけど…』

『みかのことならなーんでもわかるよ。だって熊のぬいぐるみが全部教えてくれるから』

みかは閉店後、1人で家に帰るのが怖くなり店のボーイに事情を説明して一緒に帰宅して貰う事にした。家に帰るとすぐに熊のぬいぐるみの中に盗撮用のカメラが仕掛けられていないかを調べた。すると中からはカメラではなく白い封筒がでてきた。封筒を開けて見ると中には髪の毛の束とおびただしい数の爪、それに血で何かの文字が書かれた木札がでてきた……。

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『って事があったんで、それ以来熊のぬいぐるみは貰わないようにしてるんです』

……何が怖いかって、こんな事があったにもかかわらず、それでもこの仕事を続けているみかちゃんのメンタルの強さが1番怖い…。


おわり

※言うまでもなく、これは作り話です。