🍎詩)在りし日に
夜の帳を蝶が舞う
騒がしい街の律動
禍々しさを眩い光に隠し
隣の人はのっぺら坊
慌ただしく口をパカパカと
ザーザーと漏れ出す音は
右から左へと流れて行く
カチカチと正確な音は
白黒の世界を進む蝸牛
ゆっくりと砂山の頭は高くなる
蝉取りにはしゃぐ幼子の頭に
白が疎らに散らばると
目尻には皺
汚らしい無精髭
小さな渦が私を飲み込む
重いため息の分だけ軽くなった自尊心
腹の腫れた体が鏡の中で顔を背ける
空っぽなのを見透かされぬようにと
他所の言葉を端々に飾り
それを笑い飛ばす事も出来ず
美味い美味いと麦酒を飲み込んだ
雷に恐れも尊厳もなく
あの頃と変わらぬ美しい夕日
それを見上げる事もせず
唯、目の前の飯を
減ってもいない腹の中に押し込んだ