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詩)景色

夜のとばりうに降りて、本来ならば黒が景色をいろどる筈が黒ではなく淡い群青の空が広がっていた。
人工の光が青く照らすせいだろう。

静寂はタイヤが地面に削られる音で、所々に穴をあけられ気まずそうにうつむいている。

1人でいるには途方もない時間も束の間であれば、静かな夜に溶けていたいと望む事もあるわけで…。
それすらも叶わぬ今をうとましくも愛おしくも思う。

目の奥を行き来する景色はほんの一部にしか過ぎず、それが私にしてみれば全てであって、小さなひずみが生じれば右往左往しながら駆けずり回り、答えなどは、出るはずもないのにカモメのジョナサンに問いかけたりもする。

目の前にある景色は私だけの物。
伝えようとすれど上手くは伝わらず、『わかるよ』って上辺だけの言葉が白と黒のコントラストに色を付ける時もある。

橋を渡る電車が『ガタンゴトン』と喧騒を運び
風で波立つ水面みなもに魚の群れが泳ぐ。

『また、明日は来るよ』

明るくなれば目の前の景色もガラリと姿を変えるのだろう。変わらないのは、ご都合主義に美化された思い出だけで現実は目まぐるしく動いているのだ。まるで沈没する船から鼠が逃げ出すかの様に…。