詩)閉ざされた世界
風は吹いていない
音の消えた箱の中
黒い池に白い雫が落ちて
その音がピチョンと響く
波紋が広がる
侵食する様にゆっくりと
私はそこにはいない
ただ、見守るだけの存在
蝶が舞う
いくつかの線を朧げに引き連れ
波打つ様に目の前を横切る
蝶は水面に止まり
ゆっくりと溶けて赤い色を紡ぐ
クルクルと針は回り
長針と短針は重なりあうも
何もなかったかのように
世界はまた閉じて
輪郭だけを白が縁取る世界
目の前にあるのか
遠い世界の何処なのか
今はわからず
明日になれば
世界に色が戻る事を願って