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LOVERS VOICE 写真集のように楽しむ

漁師カレンダーを毎年、応援してくださる皆さんの声を伝える漁師カレンダーLOVERS VOICE。第4回は、気仙沼漁協の臼井靖参事です。

これまでさまざまな写真家により撮影されてきた気仙沼の漁師カレンダーは、「写真集」のように手元に置いて楽しんでくださるファンも少なくありません。
今回ご登場の臼井参事もそのお一人。そこで今回、写真集として見て楽しむ漁師カレンダーの魅力について語っていただきました。

漁師さんのリアルな暮らしが感じられます。
漁師カレンダーLOVERS VOICE vol.4  気仙沼漁業協同組合 臼井靖参事

気仙沼漁業協同組合 臼井靖参事


なにげない漁師さんの表情が新鮮です

漁師カレンダーは、毎年、取引先や関係業者に配っています。私が気に入っている写真は、漁師の日常の姿を捉えたものです。大海原を相手にする「漁師さん」の、人間味あふれる様子が見られるところがいいと感じています。常日頃から漁師の姿を見てはいますが、漁師カレンダーをめくって、いろいろな漁師の写真を見れば、やっぱり新鮮です。
過去の漁師カレンダーを並べてパラパラとめくって見ると、漁そのものの躍動感を写したもの、船から降りた日常を写したもの、濃厚な読み物のようなもの、その年ごとに写真のテイストが全然違っていて面白いですね。

私が好きな写真のひとつは、自宅で過ごす遠洋漁業の船頭さんの姿です。長期間、沖で頑張ってきて、陸にあがってひと休みする姿は、漁師ならではの深みがあると思います。
漁師の食卓に新鮮な刺身が並ぶ様子や、鍋のお湯に缶コーヒーを入れて温めている写真、お風呂に入る写真も、リアルな暮らしが感じられていいですよね。あと、飲み屋の前の漁師たちの写真も、彼らの日常が感じられて面白いです。漁師=飲み屋ってイメージが自分の中にあります(笑)。

この街では、漁師さんたちは水揚げが終われば、みしおね横丁にある鶴亀食堂に行ったり、案外、市民との接点が深いです。なかでもカツオ船は旅船の人たちで、高知、宮崎、三重、いろんなとこから来ていますが、街の人と出会って交流を深めて結婚したり、と絆があります。


遠洋漁業から戻り自宅で過ごす船頭さん
2017年版 川島小鳥さん撮影


漁師さんの食卓のカツオ
2020年版 前康輔さん撮影


鍋にお湯を入れ缶コーヒーを温める
2021年版 幡野広志さん撮影


漁師さんと漁業と気仙沼のまち

気仙沼は「水産の街」です。震災で被災した面積は全市の5%なんですが、市の8割の事業所が被災しています。それだけ水産関係など海辺に事業が集中しているということです。
カレンダーにはその後、刻々と変わっていく風景も記録されています。中には、もう今は見られないものもあります。

たとえば、魚市場で魚を直接コンクリートの上に並べている写真がそうです。市場が新しくなってからはパレットの上に置きますから、今はもうない気仙沼の風景です。こんな違いも、漁師カレンダーが撮り続けてきた震災後の気仙沼の姿ですよね。
気仙沼は漁師さんがいないと成り立たない街です。漁師さんがいるから船が動いて、魚をとってくれるから水揚げがあります。それでも、漁師さんの生活のこまかいところまでは、私たちもすみずみまで知っているわけではありません。だからこそ漁師カレンダーを通して、「こんな表情もあるのか」と驚くこともあるし、そこが楽しみでもあります。

水産業のこれから

水産業は、常に人手不足です。最近は若い人も全国から集まってきていますが、それでも足りるかというとそうでもないんです。カツオが忙しい時期には、いつも短期バイトを募集して水揚げ作業を手伝ってもらっていますが、それも人が集まらないことがあります。10年前までは元漁師さんの応募がたくさんありましたが、今では少なくなりました。船に乗ったことのある経験者が減っていることや、高齢になっても引退せずに船に乗り続けていることなどが要因だと思います。

気仙沼には観光もありますが、観光の土台も水産業です。これからも継続発展していかなきゃいけない。これからの時代は資源管理とか、少ない魚の価値をどうあげていくかとか、新しいものに挑戦しなきゃだめなんだろうな、と感じています。そういう時代の漁師にスポットライトを当ててくれた漁師カレンダーは、本当に意味のあるものだと思いますし、過去の漁師カレンダーも見返してみたくなるものですね。


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