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LOVERS VOICE 漁師という仕事の価値


漁師カレンダーLOVERS VOICE第7回は、株式会社カネダイの佐藤俊輔社長です。
カネダイは、気仙沼に寄港する船舶などへの燃料販売業をはじめ、漁業、ガス販売業、問屋廻来船業、水産加工業といった事業を展開している創業80年の企業です。
漁師さんと日々顔を合わせ、身近に接している佐藤社長は、漁師さん自身が外からの評価に気づくことが、自分の仕事を誇りに思い価値を感じることにつながると言います。
そんな佐藤社長から見た漁師カレンダーについて、聞かせてもらいました。

カッコいい漁師を見てほしい。

LOVERS VOICE vol.7 カネダイ 佐藤俊輔社長


カネダイ 佐藤俊輔社長


当たり前すぎて見過ごしてしまうものの美しさ

気仙沼の漁師たちが登場するカレンダーを作る、と最初に聞いた時「サイコーだな、ぜひ買いたい!」と思ったんです。

気仙沼の人、特に私のような水産会社など、漁業関係者にとって漁師さんは身近な存在です。身近だからこそ、当たり前すぎて見過ごしてしまうカッコよさ、美しさはきっと価値あるものだろうと思っていたので、漁師カレンダーでは、まさにそれをやってくれたという気持ちです。

第1作目から毎回、新鮮な気持ちで見ています。毎年、素晴らしい写真家に撮ってもらっていることはもちろんですが、漁師という同じテーマで撮影しても写真家によって着眼点がまるっきり異なる点も面白いですよね。

うちでいえば、本吉町にある日門定置網(ひかどていちあみ)漁業生産組合の写真を撮ってもらう機会が何度かありました。なかでも印象に残っているのはカネダイの日門定置網の初期メンバーの集合写真です。これは仲間として嬉しかったし、今思い出しても、あれは良い写真だったな、と思います。


日門定置網 初期メンバー
2017年版 川島小鳥さん撮影


あとは、勝倉漁業の船頭の写真。それから、ベテランの機関長さんの歯抜けの顔写真も味がありましたね。ちなみに我が家では、寝室に漁師カレンダーを飾っているので、毎朝目覚めに歯抜けの顔写真というのは微妙でしたけど!(笑)

とにかく、漁師カレンダーがきっかけとなって、漁師の物語やビジュアルを発信する価値があると再認識され、カッコいいんだという確信が深まったことは事実です。

勝倉漁業 勝栄丸の船頭さん
2014年版 藤井保さん撮影


2019年版 奥山由之さん撮影


様々な漁師さんとのつながり

私たちは、インド洋を中心とするマグロ漁や、ナミビア共和国合弁によるカニ漁、地元気仙沼近海に展開する定置網漁を行っています。
漁業にもいろいろな形態がありますが、カレンダーで集合写真を撮影してもらった「日門定置網」は陸に近い漁業です。小さい船で港から15〜20分ほどの沖まで、だいたい毎朝3時とかに出て、朝6時頃に帰ってきます。その後、魚の水揚げが終わったら11時ぐらいに浜に帰ります。

気仙沼市本吉町日門沖合は、暖流と寒流がぶつかる混合水域で、魚種は豊富でしたので、日門定置網は古くから盛んでした。個人的には気仙沼を出港して10ヶ月帰ってこない遠洋船よりも身近な存在なのかもしれません。

日門定置網漁
2023年版 公文健太郎さん撮影
2024年版 瀧本幹也さん撮影



私たちも魚市場にあがる6時頃には市場に出向いて一緒に水揚げ作業をします。船頭さんと話もするし、そのまま一緒に飲みに行くこともあるくらい、親しくさせてもらっています。

カネダイでは遠洋マグロ漁船もありますが、こちらは漁に出ると気仙沼に10ヶ月は帰りません。遠洋船の漁師と会社で会うのは、船の幹部が書類や精算をする時ぐらいで、年に3〜4回程度です。でも漁業部門は船のオーナーなので濃密なつきあいではあるわけです。一般的なイメージでいうと、プロ野球のオーナーやGMと選手の関係みたいな。仲間だけどいつも一緒にいるわけじゃない感じです。

さらに、私たちは船のお世話をする廻船問屋という顔もあり、漁師カレンダーに乗っている様々な船とのお付き合いもあります。問屋部門の社員は、カツオ船、サンマ船など、ほぼすべての船の船員さんたちと仲が良いです。問屋という立場で代理店業務をしています。そのほか、一本釣りの宮崎の船とも付き合いがあったりします。

そんな漁師さんたちの操業中の様子や漁を終えてプライベートな表情は、なかなか見る機会がないので、漁師カレンダーで見ると新鮮に感じますね。日頃、見ない一面です。

漁業のこれからと、情報発信

気仙沼という港町として、漁業者として、これまできちんと漁師さんや漁業についてPRしてきたかというと、十分ではなかったと思います。そんな中、少しでも若い人たちに伝わるように、SNSや動画配信などを、少しずつはじめています。

日本かつお・まぐろ漁業協同組合の公式サイトでは「漁師になるって夢を叶える動画」という遠洋漁業のわかりやすい情報なども発信されています。



また、うちの会社の新船の中を、同級生の小山裕隆さん(小山菓子店五代目)がYouTubeにのせてくれました。これはなかなか見られる機会がないので、良かったと思います。


Instagramでは、若手船員が個人でやっているものもあって、仕事をしている様子を発信しています。たぶん、漁師のために発信しようとか注目をしてもらおうという気持ちがあるわけではなくて、自然に、自発的にやっているんです。日常の漁師の姿に「いいな」と感じる。まさに漁師カレンダーと近い感覚かもしれません。

これは私の考えですけど、もともと漁師さんは総じて自分の仕事の価値を感じない人が多いように思います。これまでは、魚が高く売れるのは喜ぶけれど、そこまででした。
それがだんだん、レストランや居酒屋などで漁師を紹介して、消費者と会う機会ができてくるようになった。漁師さんに消費者の声が届くようになると、自分たちのやっていることが喜んでもらえていることがわかる。喜んでもらえることで漁師という仕事に誇りや価値を感じるようになってきたんじゃないでしょうか。

これまでは、漁師自身が自分の仕事について、外からの評価や価値に気づいていないことが多かったと思います。


漁師の仕事の価値と、カッコよさ

「漁師、カッコいい」と持ち上げられるのが本当に心地いい取り上げられ方かは、正直いってわかりません。漁師はとりあげられることに免疫が無い人も多いですし、着目されることに慣れていません。

でも、自分の仕事の価値の感じ方は変わってきていると思います。社会的に価値を感じられれば、自分の仕事にも価値を感じられるようになって、おのずと意識も変わります。

日門定置網の若い漁師さんたちを見ていると、本当に意識が高いな、と感じることが多いですね。海にゴミを捨てないし、ゴミが落ちていたら拾う。当たり前で簡単なことのようですが、当たり前ほど大変なことはないですよね。

気仙沼は街をあげて漁師を大切にする街です。気仙沼つばき会もそう発信していますし、街もそう表明しています。

漁師は相変わらず危険で命がけの仕事だし、出航する時には家族が泣いたりもするし、いろいろあるけれど、生き方がカッコいいのは事実です。見た目もカッコいい。やっていることそのものがカッコいい。

漁師カレンダーでは、ひとことで言うと、この「カッコ良さ」を見てほしいと思います。色々含めてのカッコ良さ。漁師というカッコいい生き方を見ていただきたいです。

そして、カレンダーを機に漁業や漁師に興味を持った方がいらっしゃれば、是非動画なども見ていただけたら嬉しいです。

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