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いつかの土曜日で待ってて

金曜日
撮影が夜中まで長引き気づけばメールを打ちながら船を漕いでいた。銀座から家までの道のり、社長からもらったタクシー券がどこでもドアみたいに輝いている。先輩が「今日ももの家に泊まる」というので一緒にタクシーに乗り込む。ここから先輩の家は近いのに週末に1人でいたくない理由はそれぞれある。タクシーの中から見る流れていく街並みが好きだ。人の人生が点在している。「化粧だけは落とそう」と言って2人並んで顔を洗い布団に入る。ファジーは私たちの間にはいってお腹を見せる。明日、好きな人に会えるね。


土曜日
好きな人と友達と4人でホルモン。夜、家で飲み直し。友人達がタバコとトイレにたった時好きな人の顔が近づいてきて唇にふれる。お酒で濡れている唇がひっついて離れる。彼は私の顔を見て意地悪く笑う。私だけが酔っている。お酒が脳みそに浸ると何も記憶に残らない事をよくわかっているからこのシーンだけは覚えておきたい思うのだけどいつも残像だけだ。容量が足りない。長い指が私の耳の後ろを通り後頭部と首に触れる。沼だと分かっているからやっぱりどこかでもう会いたくない私もいる。でも笑顔を見ると諦められない。細い首、小さな顔、無駄のない綺麗な鼻、思わせぶりなセリフを吐かない薄い唇。私のものにならないあの人のすべて。トイレが流れる音で現実に引き戻される。土曜日、いつだって好きな人に逢える時、それは夢と現実の狭間だ。

日曜日
皆とまっていったので朝人数分のコーヒーをいれる。誰かにコーヒーを淹れる時間が好きだ。親友が昼過ぎにきて全員でお昼を食べる。私の家に私を形成するみんなが居る。幸せ。他愛もない話をして夕方好きな人達は帰っていった。波がないのでだらだらして涼しくなってからファジーの散歩と遊びを終えて「温泉でもいくか」と箱根まで車を走らせる。目の前に三日月。夜はもうだいぶ涼しくて鈴虫の声が聞こえる。短い夏だった。カメラロールに残る好きな人がファジーに話しかけている写真を見て泣きそうになる。どんなに愛してもなびかない。

月曜日
朝起きて「今日も波がない。伊豆いかなくてよかったわ」といいながら海沿いをドライブして鎌倉へ。鶴岡八幡宮でお参りして、おみくじをひくと凶だったけど私ほど凶や大凶をひき続けると何も動揺せず本当のところで「まじでツいてる」と思い込めるので能天気は最高。海には人がたくさんいて、月曜日なのにいつものような夏の日。ファジーは連日人が来ていたから愛想を振りまくのに疲れたのが本気の姿勢で眠っている。短い夏休みが終わった。

火曜日
仕事の人たちと食事。店に行くと1人しかいなくてすべてを悟る。随分前から好きだと言ってくれている人とサシでご飯になってしまった。帰り、送ってもらう車中で俺と付き合ってみるのはどうかと提案されたので「私もう1年も片思いしている人がいるんですよ」と断る。どんな人なのかと聞かれたので猫みたいな人と答える。猫みたいではねーか、と思いながらどんな人なのか考えてみる。自由で、真面目で、勝手で、自分の都合でしか連絡してこない。帰り、コンビニに寄るというので外で待っていると大量のアイスを渡され「別に好きにならなくてもいいから次のデート考えといてよ」と言われたので「ご飯にいくのはいいけど、今日みたいなやり方は好きじゃない。あと多分期待には答えられない」ときちんと答える。とくに気にしてない様子。帰宅して冷蔵庫にアイスをいれていたけど私の好きなアイスは1つもなかった。好きになってもらっても応えられず機会損失だけが多くなり、私と好きな人の距離はうまらないまま好きになって1年が過ぎた。好きになってくれる人と向き合えたらもう悩まなくていいのかもしれない。もういい歳なのだ。片思いしてる場合じゃないんだけど、はいじゃあやめて違う人と付き合います。とは出来ない。馬鹿ほど一途なのだ。どうしようもない。いつもほしい言葉をくれるのは違う人だ。さみしい。

水曜日
カラッと乾いた夏の日に洗濯物を干すときに感じる「よく乾く」というなんの紛れもない自信が好きだ。部屋の窓を全部開けて流れ込む風が気持ち良い。kool&thegangのsummer madnessを流す。いつかみた夢を思い起こさせる、または、引きずり込まれるように瞑想をする。いつものように7分間。頭がすっきりする。最近、なんとなくで人生を生きていたので目標を決めたら毎日それに向かっていっているみたいで楽しい。いつも欲しいと思うものは絶対的に手に入れてきたし、やりたいと思った事はとりあえずやってみた。人の感情以外全部。ドレッドも、ブレイズも、タトゥーも首や顔に開けたピアスもその他のいろんな悪いことや刺激的なことも。母は「やらなきゃわからないなんて想像力が足りない」とよく言っていたけど、私は頭が悪いからいるもいらないも楽しいも楽しくもないも全部肌で感じたい。満足することなんかきっと永遠にないってLoyle carnerも歌ってる。今住んでる部屋だって「15畳以上のリビングで上の階がいい」ってずっと言って不動産屋さんがだしてきてくれた。住んだら案外広過ぎて寂しいからきっと2年後にはまた引越ししてる気がする。海の近くでの犬との生活も、サーフィンも私が欲しいピースだったから手に入れた。人生のパズル。来年の冬、また新しいピースを手に入れて笑っていられますように。健やかならそれでいい。



集中して書くためのコーヒー代になって、ラブと共に私の体の一部になります。本当にありがとう。コメントをくれてもいいんだよ。