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嫌いの理由


 そういえば最近、夫婦の会話が減ったな。

私が何か話しかけても、「ああ、そうだね」とか「そういうこともあるよね」と、会話のキャッチボールにならない返事ばかり。
そんなに私と話したくないのだろうか。私の話に興味がないのだろうか。
長年連れ添った夫婦なんて、そんなものなのだろうか。


以前は旦那と話すのが楽しかった。
そもそも意見が合わない旦那とは、言い合いになることも多かったが、私にはない視点で物事を見ている旦那の話は、単純に面白かった。


どうして?私と話すことに興味がなくなった?私のこと、嫌い?

疑問を素直に伝えると、旦那は答えた。

「うん、嫌い」

嫌い?だと?

そっかー。嫌いになったかー。

一瞬、半ば投げやりでそれなら仕方ないと、自分を納得させようかとも思ったが、そうじゃない!

「どういう所が嫌い?」

覚悟して私は聞いた。するとそれは当たり前といえば当たり前。意外といえば意外な答えだった。


数年前の朝、旦那は突然の目眩に襲われた。突発性難聴だ。

突発性難聴を患ってから、聴力がガクッと落ちた旦那。
声をかけても返事がなかったり、かと思えばちょっと離れたところで息子と話している会話に入ってきたりと、日によって聞こえ方にばらつきがあるらしい。

家にいる時はテレビもあまり見ずに、本を読んだり漫画を見たり、とても静かに過ごすことが多くなった。

仕事では、耳を酷使する。なのでとても疲れるのだそう。

 そんな説明を旦那がしている時に、当たり前のように被せて話し始めた私を娘が制した。

「まだ父さん話してる途中だよ。聞き取りにくいと思うよ。」

なるほど!そういう事か!

見た目では分からない症状は、どうしても伝わりにくい。
 そして、自分で経験していない事を想像したりすることが、私はどうも苦手なようだ。
これからは、意識して旦那の耳の調子に寄り添いながら会話をしてみよう。

それにしてもあのまま嫌われてるのかとモヤモヤしながら、この先過ごすことにならなくて本当によかった。

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