季語研究 「星月夜」 -月のない夜-

★★★けろけろ道場 季語研究★★★
No.37【星月夜(ほしづきよ)】(三秋 / 天文)

● 概要
 星月夜とは月の出ていない、星の美しい夜をいう。

●    傍題
星月夜(ほしづくよ)

● 季語について
 星月夜というと、俳人は「なんて美しい言葉なんだ、腕が鳴る」と思うことでしょう。しかし、星月夜が月の出ていない夜ことと知ると、少なからぬ方が驚かれるのではないでしょうか。無数の星がまるで月のような明るさで夜空いっぱいに輝いている情景が、「星月夜」の基本的なイメージでしょう。
 やはり美しい映像を持つ季語ですが、美しいだけに浮ついた言葉に流される可能性があるとも言えます。また五文字であることから二物衝撃の句は作りやすいのですが、この場合も安直な発想になっていないか注意する必要があります。
 一段上の句を詠むには季語の本意を考える必要がありますが、ここでは一つのアプローチの仕方を紹介します。星月夜とは特に新月で月が見えない夜をいいます。三秋の季語ということで、今年(2024年)の秋の新月がいつかピックアップしたところ、9月3日、10月3日、11月1日でした。これらの前後の夜に何をしていたか思い出す、あるいは何をするか想像することから発想するのも一つの方法でしょう。たとえばその日飲み会でへべれけに酔ったなら、帰り道に見た光景と星月夜を取り合わせる、といった具合です。
 勿論イメージ通りの満天の星空が見えることは現実には少ないのですが、イメージと現実の差異にも詩情は宿るのかも知れません。

 もしかすると多くの人にとっては夜に空を見上げるよりも晩酌をしながらバラエティー番組を見る方が多いかも知れませんが、せわしない日常の合間にふと目に入った星月夜に思いを馳せることもたまには悪くないことでしょう。ほんの小さな感慨が、誰かを動かす。俳句にそんな力があるなら、素敵なことと思いませんか。俳句っていいものですね。皆さん、俳句を楽しんでいきましょう。

● 例句研究

星月夜さびしきものに風の音
-楓橋-

われの星燃えてをるなり星月夜
-高浜虚子-

天窓に見ゆる夜空も星月夜
-岩田由美-

照らし合ふことなき星や星月夜
-片山由美子-

◆ 主要参考文献
『合本 俳句歳時記 第四版』(角川学芸出版)
ウェブサイト『きごさい歳時記』

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