季語研究 「色鳥」 -美しい色鳥は優しいのだろうか-

★★★けろけろ道場 季語研究★★★
No.36【色鳥(いろどり)】(三秋 / 動物)

● 概要
 秋に渡ってくる小鳥類のうち、花鶏(あとり)や尉鶲(じょうびたき)、真鶸(まひわ)など、色とりどりの美しい鳥をいう。

● 季語について
 私は俳句を始めた頃にいくつか偏愛季語があって、「色鳥」もその一つでした。色とりどりの鳥たちが飛来する様は絵としても美しく、どこかファンタスティックな味わいをも感じます。
 ただし、言葉の美しさに囚われて実感から遊離した句を作りがちになってしまうという落とし穴もあります。渡り鳥といったら普通はカモメや燕であって、派手な鳥はそれほど見かけないと思います。勿論、実際に見ていない光景を詠んでもよいのですが、説得力のある作品にするのは難しさがあるでしょう。
 句作のヒントはと問われると難しいのですが、頭の中で具体的な映像を描いて(あまりファンタスティックになり過ぎないように)、丹念に写生するというのは一つの手法かも知れません。

● 例句研究

(1)  海が舞台の句
瀬を早み色鳥の声はるかにす
-臼田亜浪-

水際にきて色鳥の色こぼす
-津根元潮-

色鳥の残してゆきし羽根一つ
-今井つる女-

(2)  山が舞台
色鳥やきらきらと降る山の雨
-草間時彦-

鳥に先ず色を添へたる野山かな
-浪化-

(3)  その他
色鳥の中に黄なるはしづかなり
-一青-

「水際にきて色鳥の色こぼす」は色鳥から外界に色が映る句、「鳥に先ず色を添へたる野山かな」は外界から色鳥に色が映る句です。このモチーフはどちらの方向にせよ美しい情景を想起させ、これからも多くの俳人が挑むことでしょう。少々シニカルな言い方になりますが、「人と違った光景を描こう」と思った人が飛びつきがちなモチーフでもあり、特に初心者の方が挑戦するには注意が必要と言えるかも知れません。

◆ 主要参考文献
『合本 俳句歳時記 第四版』(角川学芸出版)
ウェブサイト『きごさい歳時記』

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