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季語研究 「百千鳥」 -意外に狙い目季語!?-

★★★けろけろ道場 季語研究★★★
No.22【百千鳥(ももちどり)】(三春 / 動物)

● 概要
 春に多くの鳥たちが一斉に鳴く様子をいう。

● 季語について
 皆さん、こんにちは。まだまだ寒い日が続きますが、お元気にお過ごしでしょうか。
 私は実力も句歴も乏しい一介の素人俳人でして、恥ずかしながら「百千鳥(ももちどり)」を知らず、「百舌鳥(もず)の仲間かな」などと思ってしまいました。無知な私をどうか叱ってください。そんな私ですが、不遜な一言から今回の記事を始めたいと思います。

 「百千鳥」、意外に「狙い目季語」ではなかろうか。

 理由の一つ目、五文字なんですね。四文字の場合「や」を置いて上五に置きやすいものの下五に置きにくいのですが、「百千鳥」は上五も下五もいけるので、幅が広いと言えます。
 理由の二つ目、情景とイメージとの両方を兼ね備えているということです。写実句と物語句の両方を詠むことができ、句作の幅が広いと言えます。

 では、写実句と物語句両方につき、もう少し考察を進めましょう。
 まず、写実句から検討します。やはり、森や川や田舎などの舞台設定を中心に考えるべきでしょう。先日けろけろ道場Noteにおいて上梓した「言の葉千本ノック ② -視覚的表現(風景描写)-」も参考にしていただけると嬉しいです。
 次に物語句(私の造語です)について。「百千鳥」の本意は「賑やか」「楽しそう」「(春という季節とも相俟って)生命の喜び」といった辺りになるので、これらのイメージに近いプラスの内容との取り合わせが王道になってくるでしょう。「死」など重い内容・悲しい内容との取り合わせは、少なくとも王道とは言えないでしょう。
 例えば「雛祭り」は取り合わせの句を作るとしても季語との関わりが弱ければ物足りなさを感じますが、「百千鳥」は季語との関わりが薄くてもさほど違和感がなく、句作の自由度が高いと言えます。
 勿論、高く評価される句を詠むには「百千鳥」の本意を鮮明に捉え、絶妙な内容と取り合わせる必要があります。
 険しい道ですね。一緒に頑張っていきましょう。

● 例句研究

入り乱れ入り乱れつつ百千鳥
-正岡子規-

百千鳥雌蕊雄蕊を囃すなり
-飯田龍太-

河上は柳かうめか百千鳥
-其角-

おのづから膨るる大地百千鳥
-村越化石-

八荒やこゑふえそめし百千鳥
-森澄雄-

尼の手の障子ぴしやりと百千鳥
-大木あまり-

◆ 主要参考文献
『合本 俳句歳時記 第四版』(角川学芸出版)

◆ 文中で紹介した記事
・言の葉千本ノック ② -視覚的表現(風景描写)-
https://note.com/kerokero_dojo/n/n5538614916ef

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