夢の中の音を探して②~DTMに出会うまで~

最初にいきなり頭の中で聞いたことのない曲のフレーズが流れることがある、と気づいたのは小学校高学年頃だったと思います。通学途中に歩いている時にふっと浮かんで頭の中をぐるぐるしていた記憶があります。
中学生になると、夜眠りに落ちる直前に頭の中で音楽が聞こえてきて「ああ、キレイな曲だけど明日目が覚めたら忘れてるんだよなー」と思いながら眠りについたことが何度かあったのも覚えています。

ですが、10代の頃の自分はバンドや弾き語りなどで自分の頭の中に突如流れてくるメロディーを表に出そう、という思いはありませんでした。
というのも、当時の自分にとってバンドなどの活動をすることが許されるのは、ちょっと不良っぽかったり、おしゃれだったり、人気者だったり、個性的だったり、要は「イケてる人たち」だけであり、「イケてる」とは対極の側にいる自分などにはそもそも門戸が開かれていないと思っていたからです。
自宅でピアノを弾いて一人でアウトプットすることも物理的には可能でしたが、家族に「何をしてるのか」と聞かれたら、と思うと耐えられませんでした。自意識のこじらせ具合がヤバかったですね。。。

小・中学校時代はピアノを習い、合唱部に所属していたのですが、これも時代的に音楽教育を受けたくても受けられなかった親の、せめて子供にはという勧めに乗っただけで、自ら進んで始めたわけではなかった気がします。そしてついぞ楽譜を見るだけでどんな曲かわかったり、初見でピアノを弾けるようにはならかったし、テレビやラジオで流れている曲を耳コピして弾く、なんてこともできるようにはなりませんでした。歌の方もリズムや音程が壊滅的に取れないわけではないけれども、鑑賞向けの声質ではないため、続けていれば上手くなるというものでもなく。
ただ、その中でいつしか身についた特技、というほどでもないですが、長年アルトでメロディーではなくハモりパートを歌っていたせいか、大抵の曲は聞くとコーラスパートを聞き分けて歌える、なんならコーラスパートがない曲でも、適当にバックコーラスをつけてハモれる、という技を手に入れました。

そんなこんなであまりマニアックな音楽を聞いたりはせず、普通にメジャーどころのヒット曲を聴き、時々気に入ったミュージシャンのライブを観に行き、カラオケに行けば他人の曲に乗っかってハモる(ちょっと迷惑ですね…)、という大人に仕上がったわけですが、そこに突然思いもよらない形でDTMとの出会いが訪れました。

今から20年ほど前、友人が引っ越しに伴う断捨離の結果不要になったDTM機材一式を譲ってくれたのです。CASIOの小さなMIDIキーボードと、YAMAHAのMU50というMIDI音源、そしてSinger Song Writerというソフト。それまでその友人がそんな趣味を持っているとは知らなかったし、私もそういうことに興味があるような話はあまり他人にしたことがなかったので、どういう話の流れでそうなったのかは今となってはよく思い出せないのですが、ともかくいきなり「音を作り出せる手段」を手に入れてしまったのです。

まずは使い方が全くわからないため、いきなり「頭の中で鳴ってる音楽をアウトプットしよう」というところまでは思い至らず、使い方を覚えるためにはまずバンドスコアを完コピで打ち込むのがよいと聞いて、いそいそと鼻息荒くお気に入りバンドのバンドスコアを購入し、DTMとの日々が始まりました。

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