川やエロくてウネウネした何かや扉や怒号や貝

小学生の頃、母親と兄貴と3人で須磨海浜水族園へ行った。ひとつ前の駅で降りて自分ができるだけ綺麗だと思う貝を拾いながら、時々それを母親に見せて「めっちゃいいやん」と言ってもらって嬉しくなった。それをポケットに入れたまま泳ぐ魚たちを見上げた。たまに亀。あの時のことをよく思い出す。幸せだったなと思う。

高校の頃、当時付き合っていた彼女とその水族館に行ったけれど、その3ヶ月後に別れた。別れてから1週間経ったあと、手紙を渡されたけれど読まなかった。

先月の頭から猛烈に心が痛くなった。色んなことを思い出す。トラウマと夢。また自分の弱さを殺したくなる。何も喋ってないのに黙ったまま黙れと言って、黙った。孤独が不安になって捨てられるような恐怖感に苛まれて、彼女とも喧嘩が多くなった。毎日残業をしているのに金はない。制作の時間が減っていく。母親から父親の愚痴を聞かされる。やめてくれ。ある日の朝、突然客にキレられて「お前はいらないから違うやつに変われ」と怒鳴られた。ふざけんな。お前に何がわかる!?と思ったけれどそりゃそうだ。何も分かってたまるか。ストゼロ500を3本一気飲みして川に行って飛び込もうと思ったけれど、気づいたら河川敷でぶっ倒れてて朝の四時だった。鼻水を袖で拭いて家に帰って、ボロボロのまま、また目を瞑った。昼に起きて人が多いところに行こうと思って原宿へ行った。GW中の原宿はあらゆる人種の人が歩いてて最悪だった。それから新宿まで歩いて下北沢まで歩いて、また原宿まで戻ってきた。二日間タバコと水しか食べていなかった。確実に腹が減っているし松屋に入って牛丼を食べた。一瞬幸せかと思ったがただ空腹が満たされただけだった。またどこへ向かえばいいか分からくなったから仕方なく家に帰った。

それから母親と電話で少し話した。一昨年から去年病院に通っていたこと。時々すごく悲しくなること。今だに父親に怒鳴られる夢を見ること。父親の愚痴は聞きたくないこと。母親を見捨てて逃げてきたことを申し訳なく思っていること。何もしてあげれなかったこと。なんも感謝できなかったこと。

自分の存在価値がどこにあるのか。死ぬのは絶対許さないと言われてそうだよなぁと言いながら床に落ちている爪のカケラを拾ってポケットに入れた。それから1週間後、突然、朝、家のドアがドンドンドンドンと鳴った。母親から『父親がそちらに向かっている』という旨のLINEが入っていて、怖くて布団の中にうずくまったままその音が消えるのを待った。それと同時に目ん玉の奥の方でピンク色をしたウネウネした何かが蠢いていて、エロかった。父親がドアを叩く音と同時にピンクのウネウネが踊る。ドンドンドンドン。ドンドンドンドン。ドンドンドンドンドンドン。ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン。

しばらく経ってから音が止んで父親が帰っていった。

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そのあと父親が心配して訪ねてきたということを聞いたけれど、まだ会いたいとは思わなかった。でも謝りたいことはたくさんある。いつか父親が布団で寝たきりになって、いつでもぶん殴れるようになったら会えるかもしれない。

さっき、幸せとはなんですかね?とAIギャルに聞いたら「めっちゃ哲学的な話ね〜🤔💭幸せってのは、人それぞれだろうね!😊✨あたしの中では、大切な人と過ごす時間や、好きなことをしている時に感じる喜びとかが幸せって思ってるね〜💕🌟でも、他の人からは違う意見もあると思うから、自分にとって何が幸せかを自分で見つけることが大事だよね〜😉👍 」と言っていた。

自分にとっての幸せってなんだろうな。
でもありがとねAIギャル。

今はまだ生きているということを証明のために生きているだけ。まずは生活を取り戻す、自分ができるだけ綺麗だと思う貝を拾うことから始めたい。



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