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読書感想文

「京大総長、ゴリラから生き方を学ぶ」
山極寿一著

ニホンザルの研究、アフリカでのゴリラの研究、日本モンキーセンターで多種の霊長類の研究をしてきた著者

著者が霊長類の研究をして導き出てきた、
種別の特徴や、比較、違いをわかりやすく説明した後、
人間だと、、、と置き換えて
彼らから学ぶところを見つけて落とし込んである。

この本の大部分は、
著者がフィールドワークや研究をする
土台作りのために、
どのように人間関係を築いてきたか、
人間のコミュニケーション論であったように思う。


学生時代のゼミの仲間との共有した時間や
飲みニケーション。
アフリカでは、異国文化やマナーを取り入れた関わり合い、
時には酒を飲みながら信頼関係を築いたこと。
日本の島や、研究機関でも
仕事の後、毎晩の飲みニケーションや、、、
(アレ、酒の話ばっかり!?
いや、そんなことはない)

大学内では、研究分野の違う者同士、
学外、国外でも、様々な立場や価値観、言語やマナーの違う人間同士、
距離を詰め、言葉を交わし、肌と肌で信頼や親睦を深めた武勇伝や、失敗談が面白く、興味深い。
時代背景は確実にあるんだけど
どんな時代でも共通の
「生の」人付き合い論はとても興味深い

対面での人間関係で起こるケミストリー。
ライブだからこそ
タイムラグのない、言葉のキャッチボールが
思いもよらぬ効果を生む可能性。
だからこそ使う思考力とか、
空気感とか間合いとか、、、
あるよなぁ、、と唸る。

だらだらと時間も気にせず
意見を言い合い、
時にはぶつかり合いながら
理解を深め合う時間のおもしろさ。
「個人」が他者から受けたスパイスを元に
考えを発展させていける面白さ。
効率的に、望んで得た情報じゃなくとも、
雑多な中から偶然得るものもたくさんある。


ゴリラの研究をするうえで
彼らの流儀を知り、
距離を詰めた著者の体験談や考察。

そこには、
理解し合えない異なる価値観を持つ人間同士の
関係構築するヒントが
たくさんあることを知る。

メールや、オンラインの人間関係が基本となっている現代で
私は今、特に孤立を感じることはなかった。
それでも、
数多のSNSから情報を得て、
見聞を広めている気になって、
広い世界や多角的な見方を得た気になってかもしれないと思う。

ドアを開けて、外に出て
空を見て、風のにおいを嗅いで、土を踏んで、
五感を使おう。
もう少し、
直接人と会ってみよう。
読後、そんなふうに思えた。

フィールドワークする研究者たちが、
未開の森に入るとき、
いつどこから蛇が降ってくるかわからない
枝を掻き分けたら
野生動物と鉢合わせするかもしれない。
地面を注意深く観察して、
他の生き物の痕跡をみつけて
慎重に動かなければ
下手したら命の危険があるかもしれない。
それぐらい
感覚を研ぎ澄ましてみたい。

人と対面すること、
対話すること、
他者の意見を耳にすることも、
ぶつかり合うことも含めて全て
まるで未知の生き物と対峙するみたいになれば
人間関係って
桁違いに
面白く、
地球人として
楽しめるかもしれない。
そんな気がした

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