新機軸アイスショー「滑走屋」~博多に日帰り弾丸遠征してきたよ!~
2024年2月10~12日にかけてオーヴィジョンアイスアリーナ福岡で開催された、高橋大輔さんフルプロデュースのアイスショー「滑走屋」。
私は初日に関西から博多まで日帰り弾丸遠征を敢行してきたのでその興奮さめやらぬうちにと、取り急ぎ感想等をまとめてみました。
遠征を決めた理由についての前置きが長いので、ショーの感想だけ読みたい方は「『滑走屋』体験」の項目まで読み飛ばしてください。
配信や放送を期待されてる方も多いようですが、これは「現地の空気感をナマで味わうのがベスト」なショーだと思います。当日券も出ているようなので(立ち見席もある模様)、もし今からでも行ける方がいたら是非お勧めしたいです。
小さめの箱ですのでスケーター達を間近に見られますし、75分なので体力への負担も少ないかと思います!
遠征してまで現地に行こうと思った理由
「ナマで味わうべきショー」
遠征を決意した最大の理由は、アイスショー「アイスエクスプロージョン2023」を観に行かなかった後悔から来ています。
出場メンバーには魅力を感じたものの、「試合ならともかく、アイスショーで新横浜や福岡までは行けないわ~今年は他に行きたいショーいっぱいあるし」と検討しようとも思わずでした。
しかしショーが始まると「既存のアイスショー演出の殻を破った構成や照明が素晴らしい」との評判が伝わってきて、がぜん興味が出てきました。なので私はテレビでの放送を楽しみに待ちました。
しかし、テレビ放送されたバージョンは編集されまくっていて、いかにも「既存のアイスショー」のような仕立てになっていまして…。実際会場に行かれた方からは「会場の空気感が全く伝わってない」との不評を数多く目にしました。
スケーター達のパフォーマンスは素敵だっただけに、「もし今度新しい演出の試みをするショーがあったら、今度は配信や放送には期待することなく、現地に行ってナマでしか味わえない空気感を楽しもう」と決意していました。
遠征しやすいチケット価格
とはいえ、チケットが通常のアイスショー価格の2~3万円台だったら行く決断はしなかったと思います。交通費を加えて5万円前後を出してもいいと思えるエンタメはそうそうありません。「小さい箱で近い距離でスケーターを見られるのにアリーナ席1万円」というコストに惹かれた部分は大きいです。
私はスケーター達の疾走感をリアルに味わいたかったのでアリーナS席にしましたが、今思えば2千円高いだけなんだからスーパーアリーナ席にしておいてもよかったかなぁ。とはいえ小さめな施設ですので6千円のスタンドA席でもさいたまスーパーアリーナのスタンド最前列ぐらいの近さなので、疾走感は味わえたんじゃないかと思います。
ショーのコンセプトを応援したい
私は高橋大輔さん現役時代に大好きなプログラムがいくつもあります。(In the Gardes of SoulsとBloos for Klookの2プロが双璧で好きです)
とはいえ超熱烈ファンという程でもないので、彼のインスタまではフォローしていなかったのですが・・・昨年10月、家でPCに向かっている際に「大ちゃんが今インスタライブやってて、何だか新しいアイスショーについてのアイデアを相談してるらしいよ」って情報が流れてきまして。途中からインスタライブ覗いてみたんですよ。
<その時のインスタライブのアーカイブはこちら>
そこでは「学生スケーター等を集めた通常より低価格なショーを地方でやってみたい」との主旨を話しておられまして。各界のプロの力を贅沢に結集させた「氷艶」とは真反対の方向性のチャレンジに興味を持ったのです。私は発言もせずに見ていただけでしたが、プロジェクトの初期企画会議の端っこに加えてもらったような、当事者の一員になったような錯覚に陥りました(笑)。
「著名ではないかもしれないが素敵な滑りをするスケーター達にショーの機会を」という、浅田真央さんが手がけてこられたアイスショーにも共通したコンセプトにも共感しましたし、パンフレットやグッズ等についても、ファンに直接リサーチしようという熱心な彼の姿勢を見て、「応援したいな」という気持ちになれましたしね。
しかし、いざショーの告知が始まったら、かなだいの二人はともかく友野一希・山本草太・島田高志郎・三宅星南と現役人気スケーター達の名前がずらーっと並んでて「いやいや全然学生レベルちゃうやんw」ってなりましたが(笑)。その後青木祐奈選手まで追加されちゃうし!
その後発表されたアンサンブルスケーター達は私が毎年全日本で楽しみにしている選手たちがたくさん含まれていまして、「おおお、これは応援せねば!」となりました。
きっと私のようなタイプのファンは、かなだいの二人+アンサンブルスケーター達のみのショーでも足を運んだのではないかと思います。
でも、「フィギュアスケートの魅力を新たに知ってもらうイベント」にするには、村上佳菜子さんのようなタレントとしても活躍している有名スケーターや現役トップスケーター達が入ってくれたことは大きいんじゃないでしょうか。スポーツやエンタメ好きの層であれば、これだけのメンツで1回6千円から、75分で見られるのなら「一回見てみてもいいかな」と思ってくれる人がいそうです。
「滑走屋」体験
前置きが長くなりました。ここからがようやく感想です。
私が行ったのは2回目公演。2月10日初日の14時開催分。席は南側ショートサイドでした。
常設リンクとあって会場は少し寒めでしたが、75分のショーですので寒さに煩わされることはありませんでした。
オタ愛が試されるオープニング14分
オープニング14分はノンストップで次々にスケーター達が現れてフォーメーションを組みながら滑走していきます。
場内の照明はダークで妖しい雰囲気、流れる音楽は激しいビートが響いてきて、「真昼間からこんなナイトクラブに来ちゃっていいのかしらw」みたいな申し訳なさを感じます(苦笑)。
スケーター達は全員黒ずくめの衣装。プロデューサー兼主役として一際目立つ立ち位置にいる高橋大輔さん以外、ぶっちゃけ誰が誰だかよくわからない。もはやこれはスケオタへの挑戦状です。
「君たちはこの中から推しをすぐに見つけられるかな?」みたいな(苦笑)。
開始前、一緒に行った山本草太選手ファンの友人は「暗い照明の中たくさんのスケーターから草太くんをすぐに見つけられるだろうか。背格好が似た三宅星南くんと見間違えはしないだろうかw」と心配していました。
「いや~愛があれば滑りのスタイル&シルエットでもすぐに見分けられるはずよ!(笑)」などと話していたのですが、友人は冒頭なかなか見つけられずだったらしく、「愛が足りないのかw」と焦ったそうな。
ショーの後は「草太くんは見つけるのに手間取るのに、大島光翔くんは毎回すぐに見つけられてしまう、なぜだ~」と楽し気に話していました。(大島光翔選手には「僕を見て!」という天性のオーラがあるんじゃないかというのが我々の結論ですw)
幸い今の三宅星南選手は全日本選手権時のカーリーヘアスタイルを継続していたので、頭のシルエットだけで超簡単に見分けがつきました!村上佳菜子さんも一人明るい髪色なので見分け簡単でしたね(笑)。
「答え合わせ」できぬまま進むショー
私が今回ひそかに楽しみにしていたのは、アンサンブルスケーターの佐々木晴也選手。一昨年の全日本選手権でナマの滑りを見て気に入ってから応援していたのですが、今季限りで競技引退を表明してしまいました。あと2年は全日本で雄姿を見られるものと思い込んでいたので結構ショックでして、「滑走屋」での見納めを楽しみにしておりました。
しかし、照明が暗いし私のいる南サイドにあまり佐々木君が来ない!
というか私が佐々木くんだと思っているのは本当に佐々木くんなんだろうか?という不安がぬぐい切れない。動きや体格から佐々木くんだろうと私が勝手に思っているけれど、あのスケーターは果たして本当に佐々木くんなのか?…と確証が持ちきれないまま毎回プログラムが終わってしまうのです。
「あぁちゃんと答え合わせがしたい!」とどれほど思ったことか(苦笑)。
最後のあいさつで照明が明るくなり、全員の衣装のディテールが見えてようやく「あぁやっぱりあれが木科くんであれが櫛田くんだったか」などとある程度の答え合わせができてホッとしました。
ショー終了後、友人と「最初に『私は今日この衣装で滑ります!』と一人ずつ出てきて見せておいてくれれば、『答え合わせ』ができないまま見るストレスから解放されたのにね~ま、そんなことされたらショーの雰囲気ぶっ壊されちゃうけどw」と冗談交じりで語り合いました。
主役は「滑走屋」で、「個」ではない
しかし、たくさんのスケーターの中から自分の「推し」を探してその人ばかりを目で追うーという鑑賞方法自体がこのショーには全くふさわしくないのかもしれません。
そもそもこのショー、オープニングではほとんどのスケーターが「仮面」をつけています。
単にファッショナブルだからつけているーというよりも、”「誰か」を探すのではなく、スケーターたちの技術そのものに着目してくれ”というメッセージのようにも感じました。
まぁそのメッセージを感じながらもつい推しを探しちゃうのがスケオタの性かもですが(苦笑)。今回のショーは特別な「推し」がいない一般観客の方が「滑り」そのものを堪能できたかもしれません。このショーは「推しを探す」ことに全力を注いだりはせず、全力で「滑走屋全員の滑り」を見た方がいい気がします。
何より「全体」を見ようとしたところで、結局自分が好きなスケーターは目に入ってくることが多いです。「見つけづらい」のはそれだけ全体の演出の中に馴染んでいるということなので全然悪いことじゃないと思うのですが、好きなスケーターは周りに調和していたとしても向こうから目に入ってくることが多い気がします
ショーの中心を担っていたかなだいのお二人を除いて、私が最も見つけやすかったのは友野一希選手でした。好きなスケーターを感知するアンテナみたいなのが働くのでしょうか?自分好みの動きをする人=好みの選手だから自然と目に入ってきてしまうんですかね~不思議。
かなだいそれぞれの個プロ、他選手の個プロ、それぞれとてもよかったのですが(村元哉中さんのプロとか超セクシーでカッコよかった!)、一つずつ語ってると今日中にまとめられる気が全くしないのではしょります。
新しい試みの数々
75分ノンストップ×3公演×3日間
ショーはノンストップで75分間と、2時間半前後は通常あるアイスショーとしては短め。浅田真央さんのショーも90分程度にしていますが、それより更に短い。
「滑走屋」では、グループでの演技の合間にメインスケーター達の個プロが差しはさまれる形で進行します。「アイスエクスプロージョン」の時と同様、「個プロが終了するたびに四方に挨拶⇒拍手」という流れは作らず、今やっていたプログラムと次のプログラムがオーバーラップする形で始まるような小粋な演出が加えられています。(私は友野選手の「Halston」前後の傘を使った小粋な演出が心に残りました)
なので75分と言っても「本来なら90分弱のショーの内容をぎゅっと濃縮して見せてもらえた」という満足感があります。
というか75分といえど、こんなに濃密にたくさん滑ってるのに、スケーター達は1日3公演×3日連続でやるなんて体力大丈夫だろうか?と心配してしまうレベルでした。SNSに流れてくる感想が多すぎて全然追いつけていないのですが、最終日の感想をドキドキしながら待ちたいと思います。
全編観客スマホ撮影OK!
「アイスエクスプロージョン」や昨年の「ワンピース・オン・アイス」「フレンズオンアイス:Friends on Ice」などではショーの一部で観客にスマホでの写真動画撮影を既に許可していました。観客を通じてSNS拡散することで宣伝につなげたわけですが、今回はなんと全編撮影OKとなりました。SNS等で拡散されても問題のないよう、使用楽曲も著作権をクリアしたものだけを使用したのでしょうね。
しかし、このショーは75分間ノンストップのうえ、場内はスモークが立ち込める中およそ20名のスケーター達が交錯しつつ演技が進むので演技を撮影するのは至難の技。写真だけでも…とは思うけど、暗い照明の中快速ですっ飛ばすスケーター達をスマホで撮るのは至難の技です。ちょっと間違うとこんな写真になります(笑)。
開始早々「これを初見で撮影しながら見ようなんて到底無理、ショーを見ることに全力を注がねば!」となりました。二日目以降はどうだったかわかりませんが、会場で撮影している人は思ったより少なかったですね。
しかし全然何も動画が残らないのも寂しいと思って、フィナーレと思われる最後の集団演技は途中から頑張って撮影してみました。撮影サイズは固定のままにして、目は手元の画面ではなくスケーター達を直接見ていました。
へたくそな撮影ですが私が見たフィナーレのおすそ分け置いておきます。
パンフレットでも新しい試み
私は当初、このショーのパンフを買わないつもりでいました。フィギュアスケートの試合やアイスショーのパンフレットは普段買いません。「〇〇選手のインタビュー内容が凄くよかったよ」という評判を聞いて購入することはたまにありますが、「その記事だけを電子版で売ってくれたらいいのに」と恨めしく感じてしまう(苦笑)。「記念品」としての紙パンフには全く興味がないクチです。
その私が今回は公演終了後に長蛇の行列にまで並んでパンフを購入しました。その理由は、パンフレット内にQRコードが記載されていて、そこから公演後の関係者インタビューらしき内容が「回想録」として後日読めること&宣伝用写真や稽古中の写真などがダウンロードできることを知ったからです。(パンフも邪魔になりにくい小さめサイズでしたしね)
高橋大輔さんが事前に開いていたインスタライブでは、パンフレットについては「実際に観たショーの写真が掲載されているアフターパンフの方が嬉しい」「想い出になるものだし、パンフはショー当日に絶対に欲しい」「紙より電子データでほしい」と希望が見事にバラバラでした。うま~くその間をとった印象ですね。
今回は「どのプロにどのような曲が使われていて、誰が参加していたのか」も後日こちら経由、もしくはSNSやホームページ経由で入手出来たら嬉しいなと期待しています。ショーそのものはもちろんのこと、このような関連グッズ等にも新しい試みを取り入れてくれるのは嬉しいです。
「滑走屋」では、事前練習を撮影した映像が後日有料で配信されるとのことなのでので、そこで誰がどのプログラムに参加していたかは大体判明するとは思います。
しかしながら、今回は開演直前にスケーター達の体調不良が相次いで演者が直前でかなり変わったので、この映像で練習していたスケーターと実際にショーで演じたスケーターは異なるかなと思うんですよね。
(熱心に稽古を重ねていたであろう島田高志郎選手、長谷川一輝選手、北村凌大選手が出演できなかったのは本当に残念です)
というか初日と二日目でも演者が変わったと聞いたので(初日は山本草太選手&三宅星南選手でやっていた「ハバネラ」は二日目は友野一希選手が加わったとか!)、3日間毎日セットリスト&参加者の組み合わせ一覧は変化し続けるのかもしれません。
出演人数が急に変わり、フォーメーションに若干の変更が出たためかスケーター同士が軽くぶつかるところも何度か見かけました。ただでさえ慣れないグループでのスケーティング、男女or同性でのリフト技に挑戦したりしていたのに、直前での配置変更調整は本当に大変だったと思います。でもそこを合わせていく演者の力を見るのもまたライブのショーの見ごたえでもあるので、そこも含めて堪能させてもらえたなと思っています。
今回練習を重ねていたのに出られなかった選手たちを含め、また別地域での「滑走屋」を見られたらいいなと思います。イープラスならまだチケット買えるみたいですし、当日券の販売もあるようです。今からでも行けるという方は是非!
※「滑走屋」福岡公演は2月12日で終了しました