夏休みの日記 5週目
7月29日(木)夏休み29日目 涼しい風が吹き抜ける
9:00起床。肌の調子が悪すぎる。
・《宇佐美圭司 よみがえる画家》展 11:00〜11:15
お甦りになられたのでしょうか……。
装画に使われた本たちを見て、使われると古びるな、と思った。
・コーヒーゼリー 11:15〜12:30
ロラン・バルト『恋愛のディスクール』(三好郁郎訳、みすず書房、1980)
(あの人の顔と身体のすべてを、わたしは冷静にながめていた。睫毛、足指の爪、細い眉、薄い唇、眼の輝き、特定のほくろ、煙草をもつ指の格好。わたしは魅了されていたのだ——魅了された状態とは、要するに、超脱と無関心の極端なケースにほかならない——陶化し、ガラス化したこの彩色小像のごときものによって。わたしはそこに、何ひとつ理解はできぬままながら、おのが欲望の原因を読み取ることができたのであった。)(「あの人の身体」)
あーなんかいま引用のために打ち込んでて、私もこういう文体でものを書いてみたいな!と思った。バルトしか書けねーよ。浅慮傲慢を反省してください。
・本たち 12:30〜14:00
大竹弘二『公開性の根源——秘密政治の系譜学』(太田出版、2018)
大竹弘二『正戦と内戦——カール・シュミットの国際秩序思想』(以文社、2009)
小林エリカ『空爆の日に会いましょう』(マガジンハウス、2002)
ハンナ・アーレント『アウグスティヌスの愛の概念』(千葉眞訳、みすず書房、新装版2021、初版2012、初訳2002、原書1929)
『ランボー詩集』(堀口大學訳、彌生書房、1964)
デイヴィッド・ベロス『耳のなかの魚——翻訳=通訳をめぐる驚くべき冒険』(松田憲次郎訳、水声社、2021)
カルロ・ギンズブルグ『チーズとうじ虫——16世紀の一粉挽屋の世界像』(杉山光信訳、みすず書房、新装版2021)
松井裕美『キュビスム芸術史——20世紀西洋美術と新しい「現実」』(名古屋大学出版会、2019)
・犬、虎 13:45〜13:55
歩きながら、犬種の名前をつらつらと挙げる。
シェパード、シベリアンハスキー、ラブラドールレトリバー、ボルゾイ、マルチーズ、コーギー、テン、……
よくもそんなに挙がるねと感心されて、そういえばあなたは芍薬も言葉の上でしか知らなかったよねと笑う。自然に興味がないんだ。じゃあ何なら興味があるの。人間の作ったものかな。なるほど、腑に落ちますね。
動物に喩えると、あなたは動物っぽくはないけど、強いていえば虎かなと言われたので、あなたはサモエド、とまた犬種の名前を挙げる。
・ピザ 14:00〜15:00
ピザを食べると美味しさでIQが下がって「ピザおいしい」しか言わなくなるから怖い。
クァトロフォルマッジォを大好きであるとを知れる線まで辿り着くことになるとは思わなかったな、としみじみ見る。
好きだと言うので一切れ多く食べてもらった。コーヒーゼリーも好きだと言うのであげた。好きなものは全部あげる。喜んでくれるのならなんだってあげるよ。
・マン・レイと女性たち(Bunkamuraミュージアム)
神泉を散歩したのち渋谷に降りると、Bunkamuraでマン・レイの展示があっていることに気づく。大学時代にマン・レイのソラリゼーションについてレポートを書いた時にマン・レイについてはあらかた履修したしまあいいかなと思い、展示の内容を確認するために巖谷國士監修の図録に一通り目を通す。
展示はBunkamuraらしさに満ち溢れていて、当時の流行ファッションをイメージさせるためにメゾンから借りてきた衣服や装飾品、香水瓶などもあわせて展示されているそうだ。そんなに20年代のパリが好きか。わかるけど。
マン・レイが撮ったシュルレアリストたちの肖像写真も見れるもよう。図録で見た限りだが、ブニュエルの顔がすごかった。芸術をやるためなら人のひとりやふたりは死んでもらっても構わないと思っている感じの偏執狂を感じる。そうそう、こういう顔が見たいんだよ。ブルトンとダリは相変わらず正統派の男前で、こういう男に人生を預けようと思える人間の気が知れない。
マン・レイがキキ・ド・モンパルナス(上掲の写真の女性でたしか娼婦だったか、マン・レイの恋人の女性)を美しく撮っている写真をレポート執筆のために浴びるように見たあと、私は自分の恋人の写真の撮り方ががらりと変わったと思う。学問はどんなに拙いやりかたで浸ろうとも、人生を取り返しようもなく変えてしまうものだ。
私もキキになりたかった。マン・レイのほうになってしまった。
BunkamuraのNaDiffの書店では伊豫田晃一さんの個展が開催されていて、マン・レイよりもそちらを観れてよかった気がした。
伊豫田さんの絵は、たとえばマン・レイが描いていた空に唇が浮かんでいる絵のような、上品なシュルレアリスム絵画のアップデート版という感じがする。少し世紀末美術の要素も入りつつ、ハイパーリアリズムの要素も入りつつ。闇の中に浮かんでいてすごくきれい。恍惚というのはこういう絵を観たときの感情だと思う。その絵に向かって祈りたくなる感覚。
VIRONでパンとサンドイッチ、IKEAでエルダーフラワーシロップとカラフェを買って帰宅。ハードカバーの本が4冊入ったハンドバッグも抱えて、大荷物になってしまった。
・マジックミラー 22:00〜25:00
貸してもらった千葉雅也『オーバーヒート』(新潮社、2021)所収の川端賞作品「マジックミラー」を読む。どういう感想をもてばいいのかわからなかった。
人に借りたまっさらな新品の本だけど、許可を得て線を引き、付箋を貼る。本当にいいのかな。変な感じ。
まだ眠りたい感じじゃなかったので、表題作の「オーバーヒート」にも手をつけて、少し読み進めてから就寝。
7月30日(金)夏休み30日目 曇りから雷、大雨、夜は晴れ
起床時刻不明。
7:15にメッセージを返した形跡があるが、その後すぐに起きたとも思えない。日記を書き足し続けているファイルにしがみつくのをやめてしまって、こまめな記録が取れていない。
確認のために自分のTwitterを遡ると、どうも夜は暑さでうまく眠れていなかったようだ。また寝ているうちに寝間着を脱ぎ散らかして全裸になって、床から肌で直に涼を取ろうとベッドから降りてしまっていたようだ。
本当にみっともない。人と暮らせない。
起きてからはだらだらと、昨日話題にあがった本の書誌情報について調べてメモしたり(7/29の日記参照)、「オーバーヒート」の続きを読んだり、堀口大學訳のランボー詩集の変なところを探しては原文と照合したりして遊んでいた。
生活用品の買い物に出て帰ってきたところで雲行きが怪しくなり、また雷と大雨。台風の発生地点のおかしさもスコールの急増も、異常気象なのだろうが、ちょっと好きだ。
雨が上がったので安心してシャワーを浴びて目黒へ。
・Kabi 20:30〜22:30
大学時代からの付き合いの、べたべたしているわけではないが気の置けない関係にある、まあつまり仲のいい友人と、お互い離職と休職のタイミングが重なったこともあって久しぶりに食事にゆくことに。相手のリクエストでKabiへ。
目黒駅から店への20分の道のりで、あらかた近況報告を済ませた。このかれとは互いの現在をつぶさに把握しあうような関係ではなく、箇条書きにしたような近況を適当に同期すれば、あとはとりとめもないように見えて生きるためには本質的である話をだらだら語り合うのが楽しいような付き合いなので、時間を持て余すということはない。
Kabiに着くと妙に常連顔の客が多く、そういえば大森さんが辞めてベルリンに行くんだったな。みんな、お別れの挨拶に来ているのだろう。
浅蜊の出汁とローストした夏野菜からとったエキスをジュレにして野菜と浅蜊と紫蘇の花を浮かべたもの。友人が浅蜊の砂を先に噛んでくれたので、私は噛まずにすんだ(そういう砂ジンクスがある)。
ゴーヤ、胡瓜、枝豆、あと忘れたけどなんかの緑色の野菜をそれぞれ別々のオイルでマリネして、リコッタチーズとイカと和えて酢味噌を使ったソースをかけたもの。オイルの違いは申し訳ないことにわからなかった。たしかこの料理について友人が「味のコングロマリット」とか言ってて爆笑した。自由に味について言い合える関係って楽しいね。
鮎とフェンネルとつぶ貝をファルシにして万願寺唐辛子に詰めてフリットにしたものを、パイナップルとパッションフルーツと和歌山の魚醤のソースにつけていただくもの。万願寺への熱の入り方がちょうどよくて、歯で噛み切ったところがぐしゃりと潰れなくて唸る。
五島列島の牡蠣にいろんなソースがかけてある。ベースは自家製のポン酢で、左が胡瓜のグラニテだったかな? 右の紫蘇の花が乗ってる方は思い出せない……。
これはね、カレーでした。メインの仔羊なんだけど、皮目をがりっと焼いたラムに、ナスタチウム、ミント、かぼちゃの種、コリアンダーとミントのペースト、ひまわりの種、何かの葉っぱ(忘れた)、何かのペースト(忘れた)、彩りのエディブルフラワー、に手前の黒いのは辛いやつ(何でできてるかは忘れた)、クミンとかガラムマサラが振ってある。を、ぐちゃぐちゃに混ぜて召し上がってくださいとのことで、カレーじゃん……と感動しながら食べたもの。混ぜる文化だいすき。
鮒寿司の鮒を混ぜ込んで炊いたお米に、お米に……何のソースを……思い出せない、この緑、また胡瓜のおソースか……?(思い出したら差し替えます)「旬なので、新鮮なトウモロコシをたっぷり乗せました!」と言われて「やった〜♡」と返したことだけは鮮明に覚えている。
ライ麦パンから作ったアイスクリームなんて初めて食べた。右下の茶色いのがそれ。左はリコッタチーズかなんかのおいしいやつ。チーズがだめな友人は白いパーツについては原料をホワイトチョコレートとラムでチーズに代えてもらっていたが、そっちのインパクトが強くて、自分の皿が何チーズの何だったか忘れた。
目の前の料理がどんなに美味しいかばかり語り合える関係性というのは稀有だ。親しくなさすぎても、親しすぎてもだめ。他人でも恋人でもだめ、きっと親友でもだめ。いい友人を持ったものだ。
食事が終わったのが22:30ごろで、僕あしたトレイルランで6時起きなんだよね〜、私もあしたは川遊びの予定があって7時には起きなきゃだわ、あはは、お互い起きられるといいね〜と手を振って別れた。ひと気のない地下鉄に乗ったら急激に眠気に襲われて、一駅乗り過ごしてしまった。
・オーバーヒート 24:00〜27:00
眠れず読む。読みつつ、パリにいる街子とメッセージを交わす。
自己肯定感の話になって、「私は生まれたときは100点で、そこから毎日自分で減点して減点方式でやってる感じ」と街子が言うので、「私は逆で、生まれながらの0点を50点にできた自分よくやった!という世界観で生きているから、もし互いに同じ点数を世界に叩き出していたとしても、その受け止め方のベクトルが180度違うんだろうね」と返すと、「なるほど、やっと我々の自己肯定感についての論文の結語が書けそうな感じ」と街子。そうだね。本当に。
7月31日(土)夏休み31日目 びっかびかの川日和
7時起床。
強すぎるくらいの日差しが部屋に入り込んでいる。川日和だ。
・川 8:00〜20:30
7/17のパフェタイム、集った友人たちの「釣りをしてみたい」という声に応え、川に行くことが決まった。
近場で予約したレンタカーをピックアップして、メンバーを迎えに行くべくまずは東京を東から西へ走る。運転すると地形や地名がわかって楽しい。
今日のメンバーは、音楽をつくるふぁに太郎・デザインと翻訳をやる栗原・写真を撮る㠀・無職の私。
私のiPhoneのみがBluetoothに繋がって、音楽の人がいるのに申し訳ないなと思いつつ、車内にはDavid GrubbsとかPuma BlueとかCIKIとかを流した。
運転は好きだ。特に同乗者がいるとき、かれらに貢献していると思えて健やかな気分になれる。自らの能力を他者に貢げるのは気持ちいい。
あきる野市の秋川国際マス釣り場に到着。綺麗な川に放流された養殖マスを釣る。
栗原が一番多く釣った。この人は世界を理解しているから、何につけても飲み込みが早い。私の釣果は1匹だった。私も少なからず世界を理解しているとは思うのだが、身体をそれに馴染ませるのにけっこう長い時間がかかる。釣果のあがりは栗原の次は㠀、その次がふぁにだった。
釣り場では川の水に浸かれないというので、釣ったマスを塩焼きにしてもらって食べたあとは遊浴場をさがしてぐるぐる。
ようやく見つけた遊浴場の付近の駐車場が17時には閉まってしまうらしいが、それでも、1時間だけもいいから川の水で遊びたいので水遊びを敢行した。
私も水着を仕込んで行ったが、いちばん川遊びを満喫したのは㠀だった。
流れの早い川をすいすいと泳ぐ様が目に焼き付いて離れない。かっぱだ。私は自然の水が苦手で、今回の川遊びもかなり気合を入れて臨んだのだが、結局彼女のように高いところから川に飛び込んで遊ぶようなことはできなかった。
河原では栗原と㠀が火を熾す。火を熾すことに固執している二人を見て、火の何がそんなに楽しいんだろうと思って体を乾かしがてら付き合うも、熱いこと以外よくわからなかった。夜になったらわかるのかもしれない。
みんなでマシュマロを焼いて遊んだ。今日は朝マックのベーコンエッグマフィンと焼いたマスしか食べていないので、マシュマロの甘さが肉体にすごく沁みた。
帰路の車中、「なくなったら困る食べ物」という話題になって、みんなが「大福、パイナップル」「豆腐、白桃」「コーヒー、桜味のものたち」と綺麗な答えをあげる中、「ワイン、ウィスキー、チョコレート」と廃人の答えを出して申し訳なかった。でもワインとウィスキーとチョコレートがない世界では生きていけないな。かっこつけているわけじゃなく、味のいいもので酩酊できないと、私はこの世を生きぬけない。目を瞑るべき汚いものが多すぎるから。
よくよく知っているつもりだった友人たちの知らなかった食へのこだわりを知れて楽しかった。見かけたら買っていってあげたい。
栗原が「7文字しりとり、ただし回答は挙手制」というゲームを考えてくれて、「ハイッ!!!千歳空港!!」とか叫ぶのも楽しかったな。このゲームが催されていたときのBGMはシガーロスでした。瞑想。
精算のためにみんなでデニーズに行って、思い思いにパフェやらケーキやらオニオングラタンスープやらオムライスやらを頼んでいて、この自由な感じが許されるメンバーが好きだなと思った。またみんなで遊ぼうね。
・余韻 22:00〜27:00
今日が楽しすぎたせいで、今日を終わらせたくて、なかなか眠れない。悪い癖だ。
8月1日(日)夏休み32日目 痛いほど晴れ
10:30起床。
本当は6:30にばちっと目覚めたのだが、3時間睡眠で疲れが取れているとも思えず、延長した。
この夏休み、二度寝の自由を謳歌しまくっている。そんなしょうもない自由を欲していたのか私は。
・足裏リフレ 12:00~14:00
台湾人のお母さんに足を揉んでもらう。台湾人のマッサージやさんの皆さんは仕事中でも構わず同僚とおしゃべりしてて楽しそうでいいですね。痛いところがあって顔をしかめたら「ここ腰ね~」と言われた。腰か~。腰は悪くないはずなんだけどな~。
お母さんはもうワクチン打てたらしい。私日本人なのに打ててないのなんでなんだろうな……。
足のついでに背中も揉んでもらったけど、なんかすごい特殊な箇所を押される施術を受けた。えっそこ?ってところ(骨の上とか)を押されて普通に痛くて、全然きもちよくない……つら……。しかし確かに体は軽くなった。謎である。
帰りに立ち食い寿司を食べた。最近どうも立ち食い寿司が我慢できない。おすしだいすきクラブ廉価チーム。
・『ファーザー』 16:30~18:30
アンソニー・ホプキンスが認知症の老人を演じる映画。
認知症って世界がこんなふうに見えるのか。そりゃあ混乱するし、自分のことが信じられない状態って怖くて怖くて仕方ないだろう。すごくかわいそうだった。悲しかった。この映画で観た認知症の症状のことをずっと忘れないように気をつけておきたい。身近な人が認知症になったときのためというよりは、自分のために。こういうふうに世界が見え始めたら認知症を発症したのだと了解して、なるべく世界から身を引くようにしたいと思う。
アンソニーが失敗するたびに後ろの観客がちょっと笑っていて、そのことがものすごく嫌だった。よくもまあそう高みの見物を決められるよな、自分だって同じ仕組みの肉体をもつ人間だろうに。
他者の痛みを笑う人間はすべからく最も痛い方法で死んでほしい。全身の毛穴からスイカが生まれるような痛みを味わってくれ。
・日比谷 19:00~20:00
飲食店視察。日比谷の高架下もいくらか飲める店があって、そこそこ客が入っていた。新橋にはもっと多いだろう。
日比谷の高架下にできていた小ぎれいな商業施設を歩いていて、東京ビエンナーレというのが催されていることを初めて知る。ふーん。
なんというか、「東京」とつくだけで興味がわかない。日本国や東京都が演出したがっている東京のセンスにもう全然乗れなくて、東京というだけでダサい。なるべく関わりたくないという気持ちになる。内藤礼、宮永愛子、柳井信乃はちょっと観たいかもしれないけど、こんな状況で出歩きたくない気持ちの方が勝る。
毎日新規感染者が1000人以上にのぼっていて、それでも人を出歩かせようというのは一体どういう政治的判断なのでしょうね。
・私の人生 22:00~26:00
小林エリカの『空爆の日に会いましょう』を読ませてもらってからというもののどうもイライラしていて、だって男の家に泊まりに行って何もされないわけないじゃん。「泊まる、しかしセックスはしない」なんていくらこちらが条件として掲げたって実現するわけなくない? 「セックスはしない」と掲げてそれを尊重してもらえる小林エリカが死ぬほど羨ましくて本当にムカつく。
親しい性愛が老いによって失われていくだろうことを考えて、寂しくて仕方なくなる。
8月2日(月)夏休み33日目 曇りと晴れ
12:00起床。本当によく寝るね。
・入社手続き
社会保険等についてこんなに明確な資料を受け取れるなんて、なんて真っ当なんだろう。
システムに住所や緊急連絡先などの情報を入力して、システムがないと管理しきれない規模の会社の一員になるのだなと思う。
・いもうと 19:00〜翌8:00
いもうとが家に遊びにきてくれた。うれしい。
しばらく飲めていなかったお酒がまた飲めるようになったというので、よいシャブリを買って冷やしておいた。
近所のイタリアンで買ったサラダとパスタとミートボール、適当に作ったサーモンのカルパッチョを準備していたところ、手土産にスープストックでヴィシソワーズと海老のビスクを買ってきてくれて天才だった。すばらしい心遣い。さすが私のいもうと。
「あねは私の全部で会話できる唯一の女性だけど、気の置けない仲でも気を遣って愉しい時間を共にしたいひとなので手土産等はいつもよく考えて選んでしまう」とのこと。うれしい。親しい人が「あなたと会うから」ときちんとしてくれるたびに自分がとてもよいものに思えて嬉しくなる。襟を正す存在としてあること。
いもうと、半月ほど前に会った時にはまだ栗毛色だったはずの髪の毛がハイトーンになっていてかわいい。透き通ってきれい。いいなあハイトーン。私も色を抜きたいけど、この黒髪が死ぬのは少し惜しい。
2年前の今日も会ってたみたいだよ、と話すと、写真フォルダを遡ってほんとうだ!と嬉しそうに叫ぶいもうと。もう何年も一緒に遊んでるんだね。いつだって素敵な夜になる。
姉貴分から受け継いだけれど私も履けなくなってしまった綺麗なスカートを譲り受けてもらえてうれしかった。あと、冷蔵庫にくっつけてたメンダコのかわいいマスコットマグネットも「かわいい〜♡」と言うので一つあげた。なんでもあげてしまう。
シャブリが空いたので在庫しておいたルイ・ジュリアンも開けて、あれだけ持て囃されているので期待に胸を膨らませていたのだけど、あねにもいもうとにもあまり好みの味ではなかったので氷をぶちこんで適当に飲んだ。
いつもするような話をだらだらと交わして、遅くなったので泊まって行ってもらうことに。準備していなかったので何かと不十分で申し訳なかったけど、本当に久しぶりにさみしくない夜になった。ありがとね。
8月3日(火)夏休み34日目 外出したのに天気がわからない
7:30起床。
目を覚ますといもうとが隣に寝ている。
酔いも醒めた頭で、せめてシーツを新品に替えればよかったなと大いなる後悔。
いもうとは「まだお酒が残ってます」とふらふらしていた。お味噌汁を出す。
彼が目を覚ます前に帰ります、目覚めたときに私がいないと呼ぶんです、彼。
そうなんだ。かわいいひとだね。大通りでタクシーを拾って見送った。
なぜか朝から食欲がひどくて、いもうとが帰ったあともう一杯お味噌汁を飲んだ。
・歯科 14:30〜15:00
マウスピースをゲット。薄くてきれい。私の歯のかたち。
・会議 17:00〜19:00
前職の仕事のお片づけ。まだまだ終わりそうもない。会議への出席はとりあえずあと3回の予定。
会議終了後、元同僚と与太話をしていたら、元勤務先に労基署の監査が入ったと聞かされた。
・帰省の準備
その日を最後に消えるというFleet機能でやりたい放題遊び散らかしつつ、スーツケースに荷物を詰め込む。
電動歯ブラシ、本6冊、着替え(黒い服ばかり)、寝巻き、化粧品、お薬、フランス語と英語の教材、家族たちへのお土産、飲みかけの赤ワイン、PC。一週間家を離れるだけで大仰だ。