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オンライン写真展のすゝめ 其之壱

昨年末 2019 年 12 月 に実施された写真展のオンライン版として、 2020 年 9 月 11 日、 12 日と二夜連続で行われた「アイドンノー展オンライン」。総勢 20 名を超える猛者達の、各々の好きを表現する写真展が大盛況の内に終幕し、未だ興奮冷め遣らぬ方も多いのでは無いだろうか。そんな事無いか。

参加頂いた視聴者各位、出展者各位、主催ケンタソーヤング、発起人クウガちゃんには改めてこの場を借り多大なる感謝を述べたい。さんきゅーべりまっち。因みに未だ( 2020 年 10 月 6 日現在)チケット購入可能でアーカイブ観覧が可能な為、ちぇけらである。

アイドンノー展オンライン チケット購入ページはこちら

此のノートを書いた目的

アイドンノー展オンライン」は二人の尽力で開催に至った為、経緯や内容、自己評価は譲るとし、此処では幾つかのオンライン写真展やオンラインセミナー、又 10 年以上のリモートワーク経験を通じ、 WEB 会議型の「オンライン写真展を実施する」際の気付きや考察、注意点等を、今後実施する人に向け一つのアイデア帳として残して置こうと思う。令和オンライン写真展に爪痕を残して遣ろうと目論んで居るおじさんなので有る。

当然、自分自身にも写真展を実施するに当たり矜持や方針が有るからこそ書いて居るのだが、「こうだと良いよね!」という意図は有っても「こうじゃなきゃオンライン写真展じゃねぇよ!」とか「テメェらの血は何色だぁー!」とか否定する気は微塵も無く、飽く迄自分の考え方はこう、何か展示をやる時の指針に成ると善いよね、あ、いえゝ御礼なんて、え、サポート?え?其の様な金額を?・・・そういう・・・なんだ・・・大人の対応?の下心とか期待するとかゴニョゴニョゴニョゴニョ(フェードアウト)。

オンライン写真展とは抑々どういった物なのか

扠、オンライン写真展って抑々どういった物なのか解説するに当たり、其れには先ず対比と成る元来からの写真展がどの様な物か、写真展其の物の構造を理解した上で話しを進めなければ成らない。其の為、此処からちょっと複雑な解説に成るので、大枠眺めて御理解頂ければ是幸い。すっ飛ばしてまとめだけ御覧頂くでも吉。

其れでは以下の様に比較言及していく。

・ 物理的写真展の構造
・ オンライン写真展の種類と構造
・ まとめ、其々の特徴

其々の特性を理解し違いを明確にした上で、次回オンライン写真展実施に向けた特有の事項に就いて解説していきたい。

物理的写真展の構造

写真展を究極に要素へ分解していくと、結局「出展者側」から「観覧者側」へ情報(写真)を受け渡す行為と成る。此れに異論を唱える方は草々居ないで有ろう。

其処に開催時期や時間、見せ方、物理的写真展の場合は紙の質感や額装、照明に至るまで「出展者側」の様々要素と「観覧者側」の見る態度が絡み合い複雑に見えている。

プレゼンテーション01

其の為先ず物理的な写真展に於いて、此の情報伝達の主体が何方かという点、又其の結果、情報がどの様に変遷するかを解き明かし、オンライン写真展と比較し言及していく。

物理的写真展を実施する場合に

(イ)会場・開催期間が「出展者側」により決定
(ロ)閲覧スペースが「出展者側」から提供
(ハ)観覧方法が「出展者側」の意図である程度制限
(ニ)額装質感・照明等見せ方は「出展者側」に依存

一方、写真展の開催期間に於いては

(ホ)閲覧スペースで観る方法を「観覧者側」が取捨選択
(ヘ)作品の近くに行き「観覧者側」が主体的に観る
(ト)但し観覧順番は「出展者側」で順路で強制される場合
(チ)何の作品をどう観て、観ないかは「観覧者側」次第

詰まり会場のコントロールや開催期間等の情報伝達のインフラは「出展者側」、開催中の情報受け渡しのコントロールは「観覧者側」と成るのが物理的写真展の構造で有る。

但し、写真其の物を観せる為の額装や紙の質感、照明の当たり方等は「出展者側」に依って事前にコントロールされて居るので、実際に開催期間中に「観覧者側」が写真という情報を受け渡される瞬間で有っても、「演出」という写真体感の側面では「観覧者側」が主体にも関わらず様々な付帯情報が「出展者側」の意図に依ってコントロールされて居る。

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元来、写真其の物はマーシャル・マクルーハン著 " Understanding Media: the Extensions of Man "(メディア論) の中で謳って居る「クールメディア」(情報の量が「低精細度」で有り、「観覧者側」が自身で情報の補完をしなければ成らないメディア)で有るが、此の演出という「出展者側」の意図を含めた場合に「ホットメディア」(単一の感覚を「高精細度」で拡張する、即ち高精細度の情報で満たされているメディア)へ昇華される事を指して居る。

プレゼンテーション03

メディア論を簡単に補足して置くと、「ホットメディア」は映画、「クールメディア」はテレビ番組と分類され、その送り手の情報量が多い物が「ホットメディア」、広く浅い情報を切り出した物が「クールメディア」と考えると理解し易いと思う。

上記の様に、物理的写真展は其の性質上、マクロ視点では一方向で「出展者側」から「観覧者側」のみの情報受け渡しという制約が有るのだが、開催期間という時間軸を得る事で擬似的に「観覧者側」主体のベクトルを作り出し、更には「出展者側」の意図で写真をホットメディア化する事で、情報伝達の主体が双方向と成り、所謂 SNS で言われる " 共感 " を生んで居る。

オンライン写真展の種類と構造

続いてオンライン写真展を、同様の視点で比較していく。

現在オンライン型の写真展は2020 年 10 月現在は大別して 2 種類有る。 WEB ページ鑑賞型と WEB 会議型だ。今後恐らく第 3 のオンライン写真展として、両者のハイブリッド型が出て来ると思われる。

其々特徴や主体について述べていく。

 WEB ページ鑑賞型オンライン写真展

 WEB ページ鑑賞型のオンライン写真展とは、通常の「出展者側」が WEB ページに貼った写真を「観覧者側」が観に行く物として此処では定義する。 WEB ページと構造が同様の為、情報伝達に関する制約が WEB ページ閲覧の制約ぐらいしか無く、比較的自由度は高い。

(チ)会場と開催期間は「出展者側」により決定
(リ)観覧はほぼ24 時間可能で観覧時間は「観覧者側」依存
(ヌ)観覧方法は「出展者側」により決められブラウザ相当
(ル)但し観覧順番は「出展者側」で強制される場合も有る
(ヲ)何の作品をどう観て何を観ないかは「観覧者側」次第

上記を見ると、制約や主体は物理写真展と大差無い様に思える。

然しながら、実はメーカー系ギャラリー等のオンライン版はこの WEB ページ鑑賞型ギャラリーとして 2000 年一桁代から有ったのだが、誤解を恐れずに言えば当初は多少話題に成った物の、その後 2000 年二桁代には Twitterや Instagram 、500px等の「写真と親和性の高い SNS プラットフォーム」に押され、差別化が曖昧で話題性が乏しかった(少なくとも話題に成った物は少なく、一番話題に成るのはフォトヨドバシでは、と思う程である)。更には何故か宣伝に SNS を効果的に使われて居無いケースが多かった。

又、 WEB ブラウザを観覧プラットフォームとして考えた場合には、写真を観覧するのは先述の「クールメディア」に相当する。 「出展者側」で情報を抽出され、其れ以外の情報を削ぎ落とされ、スマートフォンで閲覧する通常の写真との大きな差別化も無い侭提供される事で、「観覧者側」(マーシャル・マクルーハンが謂う所の受容者)の求める情報には足りて居らず、自身で情報の補完を強要されるメディア、つまり「クールメディア」として定義される事に成る。

プレゼンテーション04

特に画面越しで観るデータとしての写真は、物理写真展の紙や照明は無い事から「出展者側」からの情報不足が顕著となり、物理的写真展と比べて主体の違いや制約少なく、作品への没頭率が下がる事で結果的に写真体験の魅力が減少し、 2020 年に至る迄余り普及して来なかったと考えられる。

此の事が SNS 上の写真が " 消費される " と言われる所以でも有る。

最近では東京カメラ部の写真展が WEB ページ鑑賞型で開催されて居るが、此方の観覧者数やフィードバックがニューノーマルとなった現在、既存メディアに比べどういった影響を与え変化が有ったかは知りたい所だ。

 WEB 会議型オンライン写真展

続いて昨今出てきた WEB 会議型オンライン写真展について述べる。

此れは ZOOM や SkypeTeams 等の WEB 会議用のアプリケーションを利用し、其の中で写真を何らかの情報と併せて見せる方法として定義する。其々のアプリケーションの機能にも依存するが、会議用ツールをベースとしている為、参加者間でコミュニケーションは取れるものゝ、写真の観覧となると制約が多い。

又、ニューノーマルに依り一般的にリモートワーク用のツールとして利用が普及した事で、「出展者側」と「観覧者側」がオンラインで実施するイメージが共通認識と成り、此の形式の写真展が可能と成った。結果的では有るが、コロナ禍に依るパラダイム・シフトが発生し、成立した方式で有る。

(ワ) PC やスマホの画面越しに観覧者が出展作品を観覧
(カ)会場や開催時間、観覧順番等も含めて「出展者側」依存
(ヨ)観覧方法も(例えば ZOOM 等)「出展者側」により決定
(タ)観覧環境(デバイス・服装・態度・飲食等)は「観覧者側」依存

環境因子に依存する上述(タ)を除き、特徴的なのは写真の見せ方を含めた「観覧者側」の観る方法迄も、主体が「出展者側」依存と成る点である。この制約は、オンラインイベントや所謂プレゼン等と全く同じ一方向の情報伝達という構造で有り、元来オンライン=双方向で有るというメリットは薄れ、写真体験が「一方方向」と成る。

但し、観覧の順番迄も「演出」として強制的に「出展者側」に決められる事に依り、その他情報をチャットや作品解説等で出展者側が強引に補完する事で、クールメディアだったオンライン上の写真が高精細度の「ホットメディア」に昇華され、其れに依り写真体験として物理的写真展と同様の没頭感を擬似的とは言え得る事が出来る様に成る訳だ。

プレゼンテーション05

此れは SNS で写真を投稿した際、「クールメディア」だった写真がコメントやリプライ等がリアルタイムで流れていく(リアルタイムで情報伝達が行われる)事で、「出展者側」と「観覧者側」が同じ時間軸を共有し、情報が「出展者側」に依って補完されていく状況と非常に似て居る。

詰まり先述の SNS の方が写真との親和性が高く WEB ページ鑑賞型写真展が普及しなかった理由が、更に昨今共感が其のキーワードに成っている点が、此の WEB 会議型オンライン写真展の構造を紐解く事で明らかに成った訳で有る。

まとめ

物理写真展まとめ
・「出展者側」で会場、写真の見せ方を決定
・開催中、観覧時間・方法・作品選択は「観覧者側」が決定
・紙や照明、額装等に依り「ホットメディア」と成る

 WEB ページ鑑賞型オンライン写真展まとめ
・「出展者側」で会場・開催期間、見せ方を決定
・鑑賞時間・方法・作品の選択は「観覧者側」が決定
・写真とブラウザ特性の為「クールメディア」

 WEB 会議型オンライン写真展まとめ
・「出展者側」で会場・開催期間、見せ方を決定
・時間・方法・作品の選択も「出展者側」で決定の一方向
・ 会議型に依り情報を補完し「ホットメディア」

プレゼンテーション06

WEB ページ鑑賞型は実際主体や制約自体は殆ど物理写真展と変わら無い筈だが、結果「クールメディア」で有るが故、写真体験として( 2020 年 10 月現在では)現行の方法では適して居無いと考えられる。一方 WEB 会議型では主体の制約が多い反面、時間軸を共有し「ホットメディア」化する事で「観覧者側」の共感を得易く成る為、物理的写真展迄とは言え無いが写真体験として適して居り、又違うベクトルでその価値を提供出来ると考えられる。

次回は上記を踏まえた、 WEB 会議型オンライン写真展其の物の実施について、注意点や準備に関する解説を行う。

次回はもう少し簡単な筈だよ。筈だよ。多分。

(文:HertZ)


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