COVID-19情報:2023.08.18

皆様

本日のCOVID-19情報を共有します。

本日の論文はLANCET系列より1編、MMWRより2編です。

Lancet論文は、Long COVIDとも呼ばれるCOVID後遺症を抱える患者を支援するための現在のばらばらなアプローチを、ある程度統一させることを意図した研究です。得られたコンセンサスでは、LongCOVIDには専門的で包括的な支援メカニズムが必要であり、介入は患者のニーズによって導かれる個別化されたケアプランを形成すべきであることが提案されています。
MMWRの1編目は、米国において、あらたに承認された乳幼児向けのワクチンの効果について検証した研究です。ワクチンメーカーに関係なく、少なくとも一次接種シリーズを完了し、2価ワクチンを1回以上接種した小児と未接種の小児を比較した2価ワクチン1回以上の接種の有効性は、接種後58日(中央値=IQR=32-83日)経過した6カ月-5歳の小児で80%(95%CI=42%-96%)でした。
2編目は、18歳以上の米国成人におけるLong-COVIDの有病率と、それに関連する有意な活動制限を年齢層別に推定するために、全米の反復横断Household Pulse Surveyデータを分析したCDCによる調査研究です。年齢で層別化すると、60歳未満の成人だけが有意な減少率を示し(p<0.01)、以前にCOVID-19を報告した成人では、30~79歳の有病率は秋または冬まで減少し、その後安定しました。
2023年6月7日~19日の間に、Long COVIDを報告した成人の26.4%(95%CI=24.0~28.9)が著しい活動制限を報告し、その有病率は経時的に変化しませんでした。

報道に関しては、今回は記事が充実しています。「コロナ感染でも注目、「味覚」は鼻と深いつながり…味の異変は病気発症のサインかも 」、「クラスター施設のスタッフ「3割はうつ状態」、抱えた罪悪感とは」、「<新型コロナ>神奈川県、自己評価の甘さ露呈 死亡原因の記述わずか 政策検証の報告書」などは必読です。味覚の異常に関する記事は、コロナに限らず、幅広な情報を伝えようとしています。

高橋謙造

1)論文関連      
LANCET
Forming a consensus opinion to inform long COVID support mechanisms and interventions: a modified Delphi approach

https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(23)00322-X/fulltext

*Long COVIDとも呼ばれるCOVID後遺症を抱える患者を支援するための現在のばらばらなアプローチを、ある程度統一させることを意図した研究です。
背景として、英国だけでも約210万人、世界では数百万人がこの病態を患っており、患者のための支援戦略や介入策を考案することが切実に求められている。
3ラウンドのデルファイ法によるコンセンサス手法が、オンライン調査を用いて国際的に配布され、医療専門家(臨床医、理学療法士、一般開業医を含む)、長期COVID患者、長期COVID学術研究者によって回答されました(ラウンド1 n = 273、ラウンド2 n = 186、ラウンド3 n = 138)。3つのラウンドを通じて、回答者は主に英国(UK)におり、その他の地域(アメリカ合衆国(USA)、オーストリア、マルタ、アラブ首長国連邦(UAE)、フィンランド、ノルウェー、マルタ、オランダ、アイスランド、カナダ、チュニジア、ブラジル、ハンガリー、ギリシャ、フランス、オーストリア、南アフリカ、セルビア、インド)にいる回答者は17.3~15.2%(ラウンド1 n = 47; ラウンド2 n = 32, ラウンド2 n = 21)でした。回答者には登録後約5週間の回答期間が与えられ、第1ラウンドは2022年2月15日から3月28日まで、第2ラウンドは2022年5月9日から6月26日まで、第3ラウンドは2022年7月14日から8月9日まで行われました。第1ラウンドでは、5段階のリッカート尺度が使用され、自由記述による回答の機会が設けられました。
55の声明が、i)状態としての長期COVID、ii)長期COVIDに利用可能な現在の支援とケア、iii)長期COVIDの臨床評価、iv)長期COVIDの支援機構とリハビリテーション介入という領域にわたってコンセンサス(80%以上が同意、強く同意と定義)に達し、さらに考慮事項、包含事項、焦点によって細分化されました。得られたコンセンサスでは、LongCOVIDには専門的で包括的な支援メカニズムが必要であり、介入は患者のニーズによって導かれる個別化されたケアプランを形成すべきであることが提案されています。支援的アプローチは、疲労、認知機能障害、呼吸困難を含みますがこれらに限定されない個々の症状に焦点を当て、ペーシング、疲労管理、日常活動への復帰支援を活用すべきであるとの意見に収束しました。長期の Long COVIDとともに生活することの精神的影響、身体活動への耐性、感情的苦痛と幸福感、筋痛性脳脊髄炎など同様の症状をもつ既往症の調査も、長期のCOVID患者を支援する際に考慮すべきであるとの合意が得られました。
長期のCOVID患者を支援する特注の仕組みの設計と実施に活用できる、関係者のコンセンサスを得たアウトラインが提供されました。

MMWR
Effectiveness of Monovalent and Bivalent mRNA Vaccines in Preventing COVID-19–Associated Emergency Department and Urgent Care Encounters Among Children Aged 6 Months–5 Years — VISION Network, United States, July 2022–June 2023

*米国において、あらたに承認された乳幼児向けのワクチンの効果について検証した研究です。
背景として、2022年6月19日,オリジナルの一価mRNA COVID-19ワクチンが,臨床試験から得られた安全性,免疫橋渡し,および限定的な有効性データに基づき,生後6ヵ月~4歳の小児(Pfizer-BioNTech社)および生後6ヵ月~5歳の小児(Moderna社)に対する一次シリーズとして承認され、2022年12月9日,CDCは更新された2価ワクチンの使用推奨を6ヵ月齢以上の小児に拡大しました。
2022年7月4日~2023年6月17日の期間,VISIONネットワーク内で,6ヵ月~5歳のCOVID-19様疾患の小児を対象に,救急外来または緊急医療(ED/UC:Emergency department/Urgent care)受診に対するmRNA COVID-19ワクチンの有効性(VE: Vaccine effectiveness)を評価しました。
2022年8月1日~2023年6月17日の期間にPCR検査を受けた生後6カ月~5歳の小児において、ED/UC遭遇に対する2回の1価モデルナ投与のVEは、投与2日後14日以上(中央値=投与2日後100日;IQR=63~155日)で29%(95%CI=12%~42%)でした。2022年9月19日~2023年6月17日に PCR 検査を受けたCOVID-19様疾患の生後6カ月~4歳の小児において、ファイザーの一価3回投与のVEは、投与3日後14日以上(中央値=投与3日後75日;IQR=40~139日)43%(95%CI=17~61%)でした。ワクチンメーカーに関係なく、少なくとも一次接種シリーズを完了し、2価ワクチンを1回以上接種した小児と未接種の小児を比較した2価ワクチン1回以上の接種の有効性は、接種後58日(中央値=IQR=32-83日)経過した6カ月-5歳の小児で80%(95%CI=42%-96%)でした。
すべての小児は、COVID-19の接種が可能であれば直ちに接種を開始するなど、推奨されるCOVID-19ワクチンを常に最新の状態に保つべきであるとのことです。

Long COVID and Significant Activity Limitation Among Adults, by Age — United States, June 1–13, 2022, to June 7–19, 2023

*18歳以上の米国成人におけるLong-COVIDの有病率と、それに関連する有意な活動制限を年齢層別に推定するために、全米の反復横断Household Pulse Surveyデータを分析したCDCによる調査研究です。
2022年6月1日~13日および2023年6月7日~19日に実施された調査のデータによると、COVID-19の既往歴にかかわらず、米国の成人全体ではLong COVID有病率は7.5%(95%信頼区間=7.1~7.9)から6.0%(95%信頼区間=5.7~6.3)に減少し、COVID-19の既往歴を報告した米国の成人では18.9%(95%信頼区間=17.9~19.8)から11.0%(95%信頼区間=10.4~11.6)に減少しました。
両群とも、有病率は2022年6月1日~13日から2023年1月4日~16日にかけて減少し、その後安定しました。
年齢で層別化すると、60歳未満の成人だけが有意な減少率を示し(p<0.01)、以前にCOVID-19を報告した成人では、30~79歳の有病率は秋または冬まで減少し、その後安定しました。
2023年6月7日~19日の間に、Long COVIDを報告した成人の26.4%(95%CI=24.0~28.9)が著しい活動制限を報告し、その有病率は経時的に変化しませんでした。
これらの知見は、現在進行中のCOVID-19予防の取り組みと、Long COVID症状管理および将来の医療サービスニーズの計画の指針となるとのことであり、推奨されるCOVID-19ワクチン接種の最新情報を入手すること、Long COVIDの症状管理や医療サービスの必要性を計画することなど、COVID-19予防の取り組みは引き続き重要である。

2) 治療薬、 ワクチン関連       
国内     
モリモト医薬、ワクチン「飛沫・凍結」で常温保管:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF2823Y0Y3A720C2000000/

海外     

治療薬      

3)診断・検査、サーベイランス関連
変異株 
米CDC、新型コロナで新たなウイルス系統を追跡 WHOは「監視下の変異株」
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-usa-cdc-idJPKBN2ZT0C5    

Long COVID

国内        
コロナ感染でも注目、「味覚」は鼻と深いつながり…味の異変は病気発症のサインかも 
https://www.yomiuri.co.jp/science/20230816-OYT1T50224/
*「2020年から続く新型コロナウイルス感染症では、「味を感じない」といった味覚障害が、自覚症状の一つとして注目された。
 厚生労働省の研究班が陽性者251人を対象に調査したところ、味覚障害を訴える患者101人のうち、9割以上が「においがわからない」などと嗅覚の異常も感じていた。また、味覚障害と自覚する人たちを検査した結果、7割は味覚を感じる機能は正常だった。研究班代表を務めた三輪高喜・金沢医科大主任教授(65)は、「ウイルス感染に伴う鼻の奥の炎症などによる嗅覚の異常が、味を感じにくくさせた可能性が高い」と話す。
 苦手な飲食物を口にする際、鼻をつまむと味が弱く感じられて何とか食べられる。そんな味覚と嗅覚の強いつながりは、実験でも確認されている。
 産業技術総合研究所の小早川達・上級主任研究員(56)は、味覚、嗅覚、視覚が互いにどう関係するかを探るため、味やにおい、光を実験の参加者に与えた。その結果、味と光、においと光は別々に認識できた反面、味とにおいは感じ分けにくいことがわかった。味とにおいを一体的に感じて「風味」と認識している可能性が示されたという。
 味をおかしいと感じる原因は、嗅覚障害のほかにも、ビタミンや亜鉛の欠乏、加齢、心理的な負担などが複雑に絡み合っているとみられている。」

クラスター施設のスタッフ「3割はうつ状態」、抱えた罪悪感とは 
https://mainichi.jp/articles/20230814/k00/00m/040/090000c
*「私たちが調査した範囲では、クラスターが起きた医療機関のスタッフは3~4割がうつ状態になっていました。「自分が感染するのではないか」「他人を感染させてしまうのではないか」といった感染への不安を感じていたのですが、それ以上に「職務をうまく果たせなかったのではないか」という自責の念がスタッフを苦しめていました。
たとえば患者が亡くなった時に寄り添えなかったり、遺体を丁寧にケアできなかったりしたことに申し訳ないという感情が生まれてしまう。「モラル・インジュリー(職業モラルの傷つき)」と呼ばれる精神的な状態に陥ってしまうのです。これは元々、米国などの軍人のトラウマを表す言葉です。コロナの流行で全世界の医療者について使われるようになりました。」

都内コロナ感染者、下旬まで「第9波」のピーク続く見込み…名古屋工業大がAI使い予測
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20230815-OYT1T50138/
*「新型コロナの感染症法上の分類が5類となった5月8日以降、新規感染者数は一部の医療機関の「定点把握」となっている。研究チームはそれを基に、主要駅の滞留人口やSNSの投稿などのデータを分析し、感染者数を算出した。
 都内の感染者は5月以降増加傾向で、研究チームによれば今月3日に約1万500人と推計されるなど、感染の第9波に入ったとみられる。お盆で人の流れが活発化することもあり、予測では今月上旬から下旬までの約3週間は都内の新規感染者数は1万人台で推移するとみられるという。」

全国のコロナ感染者、2週続けて減少 厚労省「3連休の影響も」 
https://www.asahi.com/articles/ASR8L5T7KR8LUTFL002.html?iref=pc_special_coronavirus_top
*「厚生労働省は18日、全国に約5千ある定点医療機関に7~13日に報告された新型コロナウイルスの新規感染者数は計6万7070人で、1定点あたり14・16人(速報値)だったと発表した。前週(15・81人)の約0・90倍で、2週連続の減少となった。厚労省は「週の後半が3連休で医療機関が休みだった影響もある。減少傾向が続くかはもう少し様子を見る必要がある」とする。
 都道府県別でみると、最多は佐賀の24・59人で、石川21・06人、鳥取20・76人と続く。東京10・37人、愛知20・70人、大阪10・23人、福岡14・11人だった。前週比では秋田(約1・45倍)など、12道県で増加した。」

都内在住の外国人3割、コロナで「差別を経験」…最多は「感染広げていると悪者扱い」 
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230817-OYT1T50114/
*「コロナに関して偏見や差別を受けた経験があるかどうか尋ねたところ、「ある」と答えた人が30・5%に上った。都民全体を対象に同様の質問をした今年2月のアンケートの回答(4・2%)を大きく上回った。
 差別の内容は、「外国人は感染を広げていると悪者扱いされた」が50・7%で最も多く、「外国人のため、病院などできちんとした説明を受けられなかった」が37%、「感染対策をしていないと決めつけられた」が33・8%と続いた。」
*多言語できちんとアンケートを取ったのでしょうか?

帰国ラッシュ、国際線利用者は4年前の水準に…「コロナの影響感じず観光できた」
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230817-OYT1T50121/

海外       

4)対策関連
国内      
<新型コロナ>神奈川県、自己評価の甘さ露呈 死亡原因の記述わずか 政策検証の報告書  
https://www.tokyo-np.co.jp/article/270196?rct=coronavirus
*「神奈川県は、新型コロナウイルスが国内で初めて確認された二〇二〇年一月から、感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザなどと同じ五類へ移行した今年五月までに講じた政策を「対応記録(保健医療編)」にまとめ、県ホームページ(HP)で公開した。これまでの取り組みを検証し、今後の危機対応に生かすのが狙い。成果だけでなく課題にも触れているが、踏み込み不足の記述や言及を避けた問題も目立ち、自己評価の甘さが浮かび上がった。」

海外       

5)社会・経済関連     
境界の呪縛「我慢しているのに…」 コロナ禍、行政に管理された身体 
https://www.asahi.com/articles/ASR885W9VR81ULLI00K.html?iref=pc_special_coronavirus_top


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