COVID-19情報:2023.10.11

皆様

本日のCOVID-19情報を共有します。

本日の論文は、JAMA系列より3編です。
1編目は、COVID-19感染後のVTE(Venous Thromboembolism)リスクが、免疫介在性炎症性疾患(IMID:Immune-Mediated Inflammatory Diseases)のない人と比較してIMIDのある人の方が高いかどうかを明らかにすることを目的とした研究です。COVID-19に続いてIMIDを有する人を対象としたこのレトロスペクティブな集団ベースのコホート研究において、IMIDを有する人はIMIDを有さない人に比べてVTEのリスクが高いということはありませんでした。
2編目は、COVID-19が院外心停止(OHCA:Out-of-Hospital Cardiac Arrest)発症率および転帰と関連しているかどうかを評価することを目的とした研究です。COVID-19とOHCAに関するこのコホート研究において、パンデミック中のOHCA発症率の上昇と生存率の低下のかなりの割合は、SARS-CoV-2感染による直接的なものではなく、OHCA予防と治療を困難にする間接的な要因によるものであったとのことです。
3編目は、パンデミックの最盛期における出生前遠隔医療の利用のばらつきと利用しなかった理由を説明するために、米国の複数州を代表する調査を活用した研究です。この横断研究では、2020年6月から12月の間に出産した回答者のほとんどが、出産前の遠隔医療を利用しておらず、対面でのケアを個人的に好むことが最も一般的な理由でした。

報道に関しては、薬不足の背景や裏事情を分析している「薬不足の深層「赤字品を作れない…」製薬の本音」が重要な情報です。「“プール熱” 今月1日まで1週間の患者数 過去10年で最多」では、サーベイランスの専門家である、谷口清洲先生のコメントが載っています。また、「学生が感染動向予測AI開発 コロナなど10種類―東北大など」は、そのコンテンツに期待が持てる内容です。

高橋謙造

1)論文関連      
JAMA
Venous Thromboembolism After COVID-19 Infection Among People With and Without Immune-Mediated Inflammatory Diseases

*COVID-19感染後のVTE(Venous Thromboembolism)リスクが、免疫介在性炎症性疾患(IMID:Immune-Mediated Inflammatory Diseases)のない人と比較してIMIDのある人の方が高いかどうかを明らかにすることを目的とした研究です。
カナダ・オンタリオ州のDeterministic法(各データベースに共通する変数が一致するレコード同士をリンクさせる方法)でリンクされた複数の医療行政データベースを用い、2020年1月1日から2021年12月30日の間にCOVID-19陽性と判定され、2022年3月31日まで追跡された患者を含む、集団ベースのマッチドコホート研究を行いました。COVID-19陽性と判定されたIMIDを持つ個人(n=28,440)と、COVID-19陽性と判定されたIMIDを持たない個人(n=126,437)を最大5人までマッチングしました。マッチングは、出生年、性別、近隣の収入、農村/都市部の居住に基づいて行われ、データ解析は2022年8月6日から2023年8月21日まで行われました。 診断コード、処置、専門医の受診に基づくアルゴリズムを用いて特定されたIMIDの診断。等を暴露とし、主要アウトカムは、年齢および性別で標準化したVTE発生率の推定値としました。比例原因特異的ハザードモデルにより、IMIDの有無によるVTEリスクを比較しました。死亡は競合リスクでした。モデルでは、VTEの既往歴、COVID-19診断の14日以上前にCOVID-19ワクチンを2回以上接種していること、およびCharlson Comorbidity Indexを調整しました。定期的に収集された健康データが用いられたため、検証された仮説はデータ収集後、データにアクセスする前に立てられました。
結果ですが、本研究には、COVID-19初診前にIMIDと診断された28,440人(女性16,741人[58.9%];男性11,699人[41.1%])が含まれ、COVID-19診断時の平均(SD)年齢は52.1(18.8)歳でした。これらの患者は、IMIDのない対照126,437人とマッチングされました。IMIDを有する28,440人におけるCOVID-19診断後6ヵ月以内のVTE発生率は、10万人日あたり2.64(95%信頼区間、2.23-3.10)であったのに対し、マッチングしたIMIDを有さない126,437人では10万人日あたり2.18(95%信頼区間、1.99-2.38)でした。VTEリスクは、IMIDの有無による統計的有意差は認められませんでした(調整ハザード比、1.12;95%CI、0.95-1.32)。
COVID-19に続いてIMIDを有する人を対象としたこのレトロスペクティブな集団ベースのコホート研究において、IMIDを有する人はIMIDを有さない人に比べてVTEのリスクが高いということはありませんでした。これらのデータは、IMIDとCOVID-19を有する患者をケアする臨床医に安心感を与えるものであるとのことです。

Acute SARS-CoV-2 Infection and Incidence and Outcomes of Out-of-Hospital Cardiac Arrest

*COVID-19が院外心停止(OHCA:Out-of-Hospital Cardiac Arrest)発症率および転帰と関連しているかどうかを評価することを目的とした研究です。
このレトロスペクティブコホート研究は、ワシントン州シアトルおよびキング郡で実施され、参加者は、2018年1月1日~2021年12月31日の間に救急医療サービス(EMS: Emergency Medical Services)により非外傷性OHCAを受診した18歳以上の者でした。データ解析は2022年11月~2023年3月に実施しました。
主要アウトカムは、OHCA発症率と患者の転帰(すなわち、退院までの生存率)としました。媒介分析を用いて、プレパンデミック期とパンデミック期におけるOHCA発生率および転帰の変化のうち、急性SARS-CoV-2感染に起因する割合と、OHCA発生状況(すなわち、目撃状況およびOHCA発生場所)および蘇生ケア(すなわち、バイスタンダー心肺蘇生法、早期除細動、救急隊対応間隔)に関連する従来のウツタイン要素(心肺停止傷病者搬送の記録に関する統一的なガイドライン)に起因する割合を決定しました。
OHCA患者は合計1,381人(救急隊到着時に死亡7102人、救急隊による治療5979人)でした。救急搬送された患者の年齢中央値(IQR)は64.0(51.0-75.0)歳、男性3864人(64.6%)、退院まで生存したのは1027人(17.2%)でした。OHCA患者の総数は19.0%増加し(プレパンデミック期の5963人からパンデミック期の7118人へ)、10万人年あたりの発生率は168.8から195.3へ増加しました。パンデミック期間中に救急搬送されたOHCA患者のうち、194人(6.2%)がSARS-CoV-2に急性感染していたのに対し、救急搬送されたが未治療のOHCA患者191人のうち7人(3.7%)がSARS-CoV-2に急性感染していました。時系列相関分析では、市中SARS-CoV-2発生率とOHCA発生率全体(r = 0.27; P = 0.01)、およびOHCA発生率と急性SARS-CoV-2感染(r = 0.43; P < 0.001)の間に正の相関がみられました。パンデミック期の生存率は、プレパンデミック期よりも低く(483例[15.4%]対544例[19.2%])。パンデミック期間中、OHCAと急性SARS-CoV-2感染を有する患者は、急性感染なしの患者と比較して生存の可能性が低くなっていました(12例[6.2%] vs 471例[16.0%])。SARS-CoV-2感染自体はパンデミックによる生存率低下の18.5%を占めましたが、ウツタイン要素は生存率低下の68.2%を媒介しました。
COVID-19とOHCAに関するこのコホート研究において、パンデミック中のOHCA発症率の上昇と生存率の低下のかなりの割合は、SARS-CoV-2感染による直接的なものではなく、OHCA予防と治療を困難にする間接的な要因によるものであったとのことです。

Use of Prenatal Telehealth in the First Year of the COVID-19 Pandemic

*パンデミックの最盛期における出生前遠隔医療の利用のばらつきと利用しなかった理由を説明するために、米国の複数州を代表する調査を活用した研究です。背景として、COVID-19の大流行により、多くの妊産婦ケアの臨床家がバーチャルケアを取り入れるようになり、単一の臨床施設における研究では、出生前遠隔医療へのアクセスと満足度についてさまざまな結果が得られています。しかし、複数の臨床施設にわたるデータを用いた研究はほとんどありませんでした。
この横断研究はSTROBE報告ガイドラインに従い、29の州または地域(サイト)の2020年妊娠リスク評価モニタリングシステム(PRAMS)のデータを使用しました。サンプルには、50%の回答率を達成したサイト月間にCOVID-19経験アンケートに回答した回答者を含めました。
主要アウトカムは、出生前遠隔医療を利用したことがあるかどうかのバイナリ指標でした。出生前遠隔医療を利用しなかった回答者には、その理由を尋ね、4つの副次的アウトカム(個人的な好み、予約の可否、技術的障壁、またはその他の理由)に分類しました。
出生前遠隔医療利用の回答者特性との関連を記述するために、完全調整線形確率モデルを用いました。出生前遠隔医療訪問がなかった回答者のサブグループでは、理由の未調整率を算出しました。すべての分析は、統計的有意性の両側検定(P<0.05)を用い、PRAMSの調査ウェイトを適用し、Stata統計ソフトバージョン16.1(StataCorp)を用いて実施し、データ解析は2023年1月から6月まで行われました。
サンプルには、2020年6月から12月の間に出産した回答者12,073人(加重数、628 473)が含まれました。6274人(53%)が民間保険に加入しており、4904人(54%)が非ヒスパニック系白人で、9733人(87%)が都市部の郡に住んでいました(報告されたパーセンテージはすべて加重平均値である)。
回答者の約3人に1人が出産前の遠隔医療を利用しており、民間保険に加入している回答者と比較すると、メディケイドに加入している回答者は出産前遠隔医療の利用に調整後の差はありませんでしたが、無保険の回答者は出産前遠隔医療を利用する傾向が14.6ポイント低かくなっていました。ヒスパニック系、アジア系または太平洋諸島系、および先住民の回答者は、非ヒスパニック系白人の回答者よりも出生前遠隔医療を利用する強い傾向が見られました。農村部の回答者は、都市部の回答者よりも出生前遠隔医療を利用する傾向が低く、出生前遠隔医療を利用しなかった7686人の回答者のうち、最も報告された理由は、対面でのケアを個人的に好むこと(5470人[70%])であり、次いで予約が取れないこと(1873人[26%])、その他の理由(1160人[14%])、または技術的障壁(490人[5%])でした。
この横断研究では、2020年6月から12月の間に出産した回答者のほとんどが、出産前の遠隔医療を利用しておらず、対面でのケアを個人的に好むことが最も一般的な理由でした。患者の好みは、利点も欠点もある妊産婦遠隔医療をどのようにケアに取り入れるかに影響するはずです。
民間保険加入者とメディケイド受給者の遠隔医療利用率が同程度であるのは、遠隔医療アクセスを可能にするメディケイドプログラムの努力によるものかもしれません。先住民の回答者におけるより高い利用率は、インディアン・ヘルス・システムの流行前の遠隔医療インフラと関連している可能性がありました。
限界としては、遠隔医療調査の質問が2020年以降は実施されていないこと、ケアの質や遠隔モニタリングについて尋ねていないことなどがあったのに対し、強みは、多施設データを使用したことである。保険タイプや人種・民族別のわれわれの結果は、出生前遠隔医療に関する単一施設での研究よりも、条件を超えた全国調査と一致しており、ベストプラクティスを知らせるための多施設調査の重要性を強調しているとのことです。

2) 治療薬、 ワクチン関連       
国内   
新型コロナと季節性インフルの両方に効果、第一三共が混合ワクチン開発へ
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20231011-OYT1T50122/
*「新型コロナとインフルの混合ワクチンは、冬季に流行しやすい2種類の感染症の予防が1度の接種で済む。mRNAワクチンの開発を独自に進める同社は、新型コロナのオミクロン株から派生した「XBB」系統に対応するタイプの製造販売の承認を厚生労働省に申請中。新たに開発する混合ワクチンもmRNAを使う方針で、政府のワクチン開発の司令塔「先進的研究開発戦略センター( SCARDAスカーダ)」が開発費を支援する。」  

コロナワクチン、厚労相がインフルと同時接種 予約できない地域も
https://digital.asahi.com/articles/ASRBB5CYDRBBUTFL016.html?iref=pc_special_coronavirus_top
*コロナワクチン予約できず 「いつ打てる?」「ワクチン不足」の声も
https://digital.asahi.com/articles/ASRBB5Q3QRB6UTFL016.html?iref=pc_special_coronavirus_top
*「厚労省は「希望するすべての人が接種できるようにする」としているが、現時点でコロナワクチンの10月分の予約について、ほとんど埋まっている地域もあり、住民から「予約できない」との声が届いている自治体もある。
 コロナワクチンの全体的な確保量について、武見氏は「必要な供給数の確保はしている」とした上で、「供給量の問題なのか、あるいは流通ルートの問題なのか。個別のケースを精査し、必要とあれば対応していく」と述べた。」

海外     

治療薬      
薬不足の深層「赤字品を作れない…」製薬の本音
https://toyokeizai.net/articles/-/706530?utm_source=morning-mail&utm_medium=email&utm_campaign=2023-10-10&utm_content=1
*「患者の増加と在庫の偏りが供給不安の一因だが、それだけではない。根底にあるのは薬のサプライチェーンの歪みだ。その起点は2017年の政府の大号令にある。
政府は医療費を抑えるため、当時7割だった後発薬の使用割合を「2020年までに8割にする」という目標を掲げた。特許が切れた先発薬と同じ成分を使って製造される後発薬は、価格が安い。政府は後発薬への変更を患者に促すことで薬局の収益が上がる仕組みなどを導入。その結果、2022年度には後発薬の数量シェアが目標の8割に達した。
ところが急速なシェア拡大はひずみをも生んだ。2020年、後発薬中堅メーカーの小林化工が製造する爪水虫薬に睡眠薬が混入する事件が起きた。健康被害が続出し、死亡者まで出た。2021年には大手の日医工でも製造や品質管理に問題が見つかり、1カ月の業務停止命令が下る。」

せき止め薬不足に「あらゆる手立て」、武見厚労相
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA102NE0Q3A011C2000000/
*せき止め、たん切り薬が不足 9割の医療機関が入手困難 医師会調査
https://digital.asahi.com/articles/ASRB674X7RB6UTFL011.html?iref=pc_special_coronavirus_top
*「武見敬三厚生労働相は10日の記者会見で、新型コロナウイルス禍の影響で生じているせき止め薬やたん切り薬の供給不足に言及した。「迅速に対応できる措置がないか、あらゆる手立てを考えてほしいと指示した」と明らかにした。足元の需要逼迫について「大変憂いている」と語った。」

3)診断・検査、サーベイランス関連
変異株     

Long COVID

国内       
“プール熱” 今月1日まで1週間の患者数 過去10年で最多
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231010/k10014220821000.html
*「子どもの感染症に詳しい国立病院機構三重病院の谷口清州院長は「都市部から、これまで流行がなかった地域にも広がりきって、そろそろピークを打つだろうと思う。ことしは、さまざまなウイルスや細菌がこれまでの患者数の少なさを取り戻すような形で流行し続けていて、この冬くらいまでは影響があると思われる。体調の悪いときは学校や保育園を休んだり、手洗いやマスクをして必要な場面での感染対策をとってほしい」と話していました。」

海外       
鳥インフルで2歳女児死亡 カンボジア
https://www.afpbb.com/articles/-/3485483

4)対策関連
国内      
学生が感染動向予測AI開発 コロナなど10種類―東北大など
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023101000148&g=soc
*「予測対象は新型コロナのほかにインフルエンザや手足口病、プール熱など。全国の気温や降水量など過去10年分の気象データや感染者数などをAIが分析。週1回、都道府県・感染症別の感染動向を「大幅に増加」「増加」「少し増加」「横ばいもしくは減少」の4段階で表示する。」

「とても心強い」イクコロ隊…コロナ自宅療養でSNS活用、医院・薬局素早く連携
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20231008-OYT1T50064/

海外       

5)社会・経済関連  
昨年度の都道府県決算、歳入歳出とも4年ぶり減少…コロナ対策費減で
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20231008-OYT1T50227/
*「都道府県の歳入総額は前年度比6・7%減の63兆7357億円、歳出総額は同6・9%減の61兆7395億円だった。歳入歳出いずれも、過去最大だった21年度に続く2番目の規模で、4年ぶりに減少した。
減少したのは新型コロナウイルス対策費が少なくなったのが主な要因で、歳入では地方創生臨時交付金など国庫支出金が3兆5053億円減少し、都道府県が支出する時短営業の協力金などの歳出も減った。一方、コロナ禍で落ち込んだ経済活動の回復や企業業績が好調だった影響で、地方税収は9265億円増えた。」

水際対策緩和1年 侍体験など人気 訪日客消費額はコロナ前水準
https://www.sankei.com/article/20231011-SDWWSTEPDFPIDJBKW5SOLL3B7A/

   


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