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知識ゼロからnote社AIチームが業務効率化を生み出すまでの成功と失敗

2023年12月にnoteの100%子会社「note AI creative株式会社」が設立され、自分はそこに出向しチームリーダーという形で1年間働きました。

note AI creative設立後、半年間は、生成AIを使ったnote社内の業務効率化に取り組みました。

生成AIの社内浸透・業務効率化を進める中で、やって良かった・もっとこうすれば良かったと思うことをこの記事では書いていきます。

これから、生成AIを使った業務改善や社内浸透を進める担当者の方に参考になれば幸いです。

この記事はnote株式会社 Advent Calendar 2024の19日目の記事です。


「チーム全員、生成AI全然詳しくない」からスタート


note AI creative株式会社は、「AIによる創作のバリューチェーンの革新」をコンセプトに、AIを使った社内生産性向上からAI領域での事業展開までを見据えて、2023年12月に設立されたnoteの100%子会社です。

チームとして、エンジニア正社員3名で構成されています。
もともとは、noteのバックエンド開発をしていたチームが、そのままチームごと子会社に出向になりました。

スキル的なバックグラウンドとしては、ML Ops出身が1名、ソフトウェアエンジニア出身が自分含め2名で、「チーム全員、生成AI全然詳しくない」レベルがスタート地点でした。

そういったチームでどこまでできるのかは不安も大きかったですが、結果としては、業務生産性向上・社内のAI浸透について数字で示せる成果を出せたと思っています。

生成AIを使った業務効率化でやって良かったこと


生成AIを使った業務効率化を進める中で、「これはやって良かったこと」と思えることを書いていきます。

1. 最初に「プロンプトエンジニアリング」を学ぶ
2. note社内全体に向けた広報活動
3. 依頼が来たものは、"開発せずに"素早く打ち返す
4. 削減した業務時間をKPIとして置く
5. 福利厚生へのアプローチ

1. 最初に「プロンプトエンジニアリング」を学ぶ

自分たちが生成AIに詳しくないと業務効率化も進められないため、最初の1〜2週間はキャッチアップ期間を設けました。しかし、問題は何から学べばいいかが分からないことでした。

この点については、CXO深津さんから「一番重要なのはプロンプトエンジニアリング」というフィードバックをもらいました。
このフィードバックの通り、1週間程度はOpenAIから出ているガイドなどを参考に、プロンプトエンジニアリングの学習をしました。

Prompt engineering - OpenAI

結果的に、良いプロンプトの基礎や「Few shot」「Chain of thought」などの基本的な考え方について、共通理解を深められたのは、後から見てもかなり役立ったと感じています。

2. note社内全体に向けた広報活動

社内広報目的で、毎週実施される全社会議で高頻度にLT(ライトニングトーク)を実施し、生成AIを使った業務改善のやり方やツールの紹介、プロンプトエンジニアリングの解説などを行いました。

LTの様子

2023/12〜2024/2くらいまでは、高頻度に全社会議で生成AIのトピックを発表していたので、生成AIを業務に取り込む具体的なイメージは伝えられていたかなと思います。

3. 依頼が来たものは、"開発せずに"素早く打ち返す

社内認知を獲得すると、社内から色々と問い合わせが来るようになりました。

エンジニアリソースも限られている中で工数削減のインパクトが大きいタスクに集中するためにも、個々の依頼については素早く打ち返せる手段を取るようにしました。
具体的なイメージとしては、以下の1から検討していく感じです。

1. プロンプトだけ渡し、業務への組み込みは担当者に任せる。
2. GPTs、Zapier、その他SaaSの業務組み込みまで伴走する。
3. 個別ツールを作成する。

「note AI creativeに頼んだら、すぐに動いてくれる」という社内からの信頼を得ることが重要と考えており、上記の対応方針によって、依頼に対するレスポンスのスピードは速く保つことができていました。

また、プロンプトの打ち返しを基本方針としていたため、プロンプトエンジニアリングを実践する場が作られたことで、「生成AIってこういう癖(バイアス)があるんだな」という学びが実体験として得られたことも良かったと思います。

4. 削減した業務時間をKPIとして置く

note AI creative設立初期の半年間は「削減した業務工数」をKPIとして置きました。依頼を受ける際には、

・その作業が発生する頻度
・1回あたりの工数

を聞くようにしていました。これらをスプレッドシートで一覧化しておくことで、依頼の中での優先度決めが可能になり、KPI進捗を確認できるため自分たちのモチベーションにも繋がっていたと思います。

依頼一覧スプシ

5. 福利厚生へのアプローチ

自分自身note AI creativeで働き始めてから、業務以外の日常的な場面でも生成AIを使いまわすようになり、「(業務以外の)生活全体でAIを使うことで、プロンプト力があがっていく」という感覚がありました。

「note社の社員も日常的に生成AIを使えるようになれば、note社全体のAI活用力が底上げされる」と思い、テックチャレンジというnoteのスキルアップ補助の対象にChatGPTとClaudeを対象にするよう働きかけをしました。

2024年6月にChatGPTとClaudeは補助の対象となっており、その後さらに補助対象のAI系サービスは拡大していっています。

個々の業務を改善するだけではなく、会社全体に影響があるようなところにも動けたのは良かったと思っています。

社内ツール開発におけるしくじりと学び


上記に書いていた通り、プロンプトを使ったクイックな打ち返しを基本としながらも、ツール開発もいくつかチャレンジしてきました。

その中でも、うまくいかなかったものもあるので、そういったしくじりもここでは紹介していきます。

うまくいかなかったツール開発とうまくいったツール開発

社内ツールをつくる際、当然「投資対効果がある開発か」を考える必要がありますが、自分自身はこの判断を誤っていたケースもあったと思います。

業務に定着しなかったツール

以下の記事で紹介しているChrome拡張などは、業務にはあまり定着しませんでした。
このツールは、色々な業務で利用でき、自分でプロンプトのテンプレートを作れたりするカスタマイズ性を重視しものです。

業務に定着したツール

息が長く使われ続けていて、工数インパクトも大きかったツールもあります。例えば、以下の記事で紹介している議事録ツールです。
こちらは、議事録作成という特定の業務を楽にすることに特化したツールです。

学びとツール開発のチェックリスト

自分のしくじりも踏まえ、ちゃんと社内で使われるツールにするうえでは、AIリテラシーがなくても使えるようにすることが何より大事だと思っています。
例えば、議事録ツールも「プロンプトを書かずにワンクリックで使える」ようにしています。

そのようにリテラシーなくても使えるようにした結果として、汎用性の高いツールではなく、個別業務に特化したツールのほうが業務には定着しやすいと思っています。

ツール開発前とツール開発時のチェックリストをつくるとすると、以下のようになるかなと思います。

✅ 既存のSaaS製品を導入するだけではダメか。
✅ その業務を改善することによるインパクトは十分大きいか。
✅ 汎用的なツールを作ろうとしていないか。
✅ ツール化した場合のアウトプットは実務で使えるレベルになっているか。

開発する前のチェックリスト

✅ 「プロンプトは書かなくて良い」くらいにシンプルにする

開発するときのチェックリスト

さいごに:今後のチャレンジ


以上が、note AI creativeとして生成AIを使った社内業務効率化でやってきたことやしくじりの紹介です。

今後のチャレンジとしては、noteなど既存プロダクトでの生成AIを使った新機能の実装や、新規事業なども取り組んでいく予定です。

興味がある方は、ぜひカジュアル面談にお越しください。

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