短歌連作『一月の積乱雲』

どの人も冬になにかを期待して息が白くて泣いたりもする

持っているマッチすべてが濡れていて闇は意外とあかるいと知る

ひび割れたグラスに水は溜まらない 素晴らしいってときどき呪い

心にも少しいびつな場所があり金平糖のとげを舐め取る

どちらかのコードを切れば本当にきみは爆発しないのですか

こうやって冬を味方にしていくの、ってきみが何度もはく白い息

久しぶりだねって言わずこないだの積乱雲の話をしよう

船を出す つまりここから先にある波止場すべてが私の味方

最後にはちっぽけだったと笑い合うマトリョーシカみたいな隠し事

透明な犬はぼくらを引っ張って春のはじまる方へ導く


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