見出し画像

ありがとうと申し訳ない

訪問先への道中で後ろの軽トラックから何度もクラクションを鳴らされる。ん?と思い傍らに停車する。「給油口あいとるよー」と追い越しざまに教えてもらう。内蓋まで全開で走っていたようだ。ありがとう。

コンビニでトイレを借り、手を洗う。手洗いは大事だ。鏡に映った顔をみて、「あー、前髪が乱れて残念な前髪になっている」と心の中でつぶやく。私の前髪は私のおでこを埋めることができなくなっている。私の前髪でもあり私のおでこなのにお互いに責任を果たしてくれない。話し合って何とか折り合いをつけてくれてもいいのに。それは二十歳の頃からだ。少しずつ少しずつ私に断りなく責任を放棄し始めた。
そんな私の前髪に興味があるのは私だけで私以外にはおそらくいないだろう。

それでも前髪を整えずにはいられないので短い髪をバレない感じに整える。潔く諦めた方が良いのかもしれない。諦めるとは明らかにすることってどこかで聞いたような気がする。
そして、昨日から妻が計算機をしきりに弾いていたのを思い出す。今朝は保険の内容や証書を確認していた。解約を考えているようだ。

申し訳ないと思う。結婚してから常に経済的な不安を抱えてきた。頑張って稼げば良いのだけれど稼ぐことにも使うことにも薄っすらと罪悪感を持ってしまう人間なのです。申し訳ない。でも、何とかします。申し訳ないけどその根拠はない。申し訳ない。

申し訳ないと思いながらできるだけ家事はできることはやるようにしている。共働きだし当たり前だ。結婚しているとはいえ共同生活なのだから。お互い負担は少ない方が良い。そこには稼ぎが少ないことに対しての申し訳ないが多分に入りこんでいる。申し訳ない。稼ぎが良ければ家事をしなくてよいということでは断じてない。

今日の私の生活はありがとうと申し訳ないで成り立っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?