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懐かしさに勝てない大人が国と人の進化を邪魔している

日本は今、大きな岐路に立っている。急速に変化するグローバル社会の中で、かつての経済大国としての地位を徐々に失いつつある。その原因の一つとして、指摘されているのが「昔取った杵柄」症候群。過去の成功体験にしがみつき、新しい変化を恐れる指導者たちが、国と人の進化を妨げているという指摘である。

 過去の栄光にしがみつく昭和と平成の遺物たち

バブル経済の絶頂期を経験し、その後の「失われた30年」を生き抜いてきた世代。彼らの多くが、今なお日本社会の中枢を占めている。政界、経済界、官僚組織など、あらゆる分野で彼らの影響力は健在だ。しかし、彼らの多くが、過去の成功体験という重荷を背負っているのではないだろうか。

ある大手企業の重役会議室。平均年齢65歳を超える面々が、最新のAI技術導入について熱い議論を交わしている。

「AIだのIoTだの、若い連中は新しいものばかりに飛びつく。我々の時代は、人間の勘と経験で商売をしてきたんだ!」

と、まくしたてる御年70の専務。彼の隣では、スマートフォンの操作に四苦八苦する取締役が頷いている。

この光景は、何も一企業に限った話ではない。政界でも、地方自治体でも、似たようなシーンが日々繰り広げられている。「昔は良かった」症候群に囚われた指導者たちは、過去の成功体験にしがみつき、新しい時代の波に乗り遅れている。

デジタル化vs伝統"変革を恐れる日本社会"

2020年、新型コロナウイルスの感染拡大は、日本社会の多くの課題を浮き彫りにした。その中でも特に注目を集めたのが、行政手続きのデジタル化の遅れだ。

ある地方自治体の窓口。マスクをした市民が長蛇の列を作る中、職員たちは黙々と書類にハンコを押し続けている。

「オンライン申請?そんなの導入したら、我々の仕事がなくなってしまう!」

と、ベテラン職員が若手にささやく。

この光景は、日本社会に根深く残る「石橋を叩いて渡る」文化の行き過ぎた例と言えるだろう。慎重さは美徳だが、過度な慎重さは進歩の妨げとなる。まさに「石橋を叩きすぎて崩れる」状況だ。

ある市では、オンライン申請システムの導入を検討したものの、セキュリティリスクを過度に警戒するあまり、何年もの議論を重ねた末に計画を断念した。その間に、システムの技術は進化し、当初の計画は完全に時代遅れとなってしまった。結果として、市民サービスの向上の機会を逃すだけでなく、貴重な時間と資源を無駄にしてしまったのだ。

若者の声、届かぬ天井"失われるイノベーションの種"

日本の未来を担うはずの若者たち。しかし、彼らの声は往々にして無視されるか、軽視されがちだ。

ある大手企業の新規事業企画会議。20代の社員が、斬新なアイデアを熱心にプレゼンテーションしている。

「この計画なら、若い世代の心をつかめると確信しています!」

と、熱弁をふるう若手。しかし、幹部たちの反応は冷ややかだ。

「面白い案だが、リスクが高すぎる。我が社の伝統的な商品ラインを大切にすべきだ」

と、ベテラン役員が一蹴する。

この「若者の声を無視する」という姿勢こそが、日本のイノベーション力を低下させる一因となっている。若者たちは、デジタルネイティブとして生まれ育ち、グローバルな視点と柔軟な発想を持っている。彼らの斬新なアイデアや、既存の枠にとらわれない思考は、組織や社会に新たな風を吹き込む可能性を秘めている。

近年、日本発のユニコーン企業の数が、他のアジア諸国に比べて著しく少ないことが指摘されている。これは、若者の斬新なアイデアや挑戦を支援する土壌が乏しいことの表れとも言える。

変革への道:過去の知恵と未来への挑戦の融合

「昔取った杵柄」症候群に囚われた指導者たち。彼らの経験や知恵は確かに貴重だ。しかし、それらを絶対視し、新しい時代の波に乗り遅れることは、日本の未来にとって大きな損失となる。

必要なのは、過去の成功体験にしがみつくのではなく、それらを土台としつつ、新しいアイデアや変化を積極的に取り入れる姿勢だ。若者の声に耳を傾け、デジタル化やグローバル化といった時代の潮流を恐れるのではなく、それらを活用する知恵が求められている。

日本の伝統的な価値観や文化を尊重しつつ、新しい技術やアイデアを取り入れることで、独自の競争力を生み出すことができるはずだ。例えば、「おもてなし」の精神とAI技術を融合させた新しいサービス産業の創出や、伝統工芸の技術とデジタル製造技術を組み合わせた新たな産業の発展など、可能性は無限に広がっている。

change is the only constant(変化こそが唯一の不変のものである)。この言葉を胸に刻み、日本が真の意味で「令和」の時代にふさわしい進化を遂げることを願ってやまない。それは、「昔は良かった」と嘆くのではなく、「明日はもっと良くなる」と信じ、行動する勇気から始まるのだ。過去の栄光にしがみつくのではなく、その栄光を礎として、新たな挑戦に踏み出す。そんな勇気ある一歩が、日本の未来を切り開く鍵となるのではないだろうか。

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