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マインド・ザ・ギャップの衝撃

日本の街中のあらゆる看板はすっかり他言語表記が一般的になりました。東京オリンピック2020大会の開催が決まり、日本が積極的に外国人を誘致し始めた2013年頃から、急速に他言語での表記が増えてきました。今までは日本語と英語だけだったものが、韓国語や中国語なども加わり、東京のど真ん中にいても、空港にいるかのような気分さえ感じることがありました。

新型コロナウイルスの影響で、渡航に制限がかかり、また東京オリンピックも無観客での開催となるなど、当初の思惑とは大きく異なった現実もありますが、これからも観光立国として多くの人たちに日本という国を知ってもらい、ぜひ滞在してほしいですね。

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そんな他言語表記は、外国人にも理解してもらうために設置しています。しかし、特に駅など、あまりにも情報が多すぎて、枠内にぎっしり文字が詰め込まれ、肝心の情報が伝わらない、といったことが起きています。もちろんですが、その看板を頼りにしたい最も多くの層は日本人です。しかし、他言語表記に押され、日本語での表記が文字を小さくなってしまい、結果的に誰もわからない看板が出来上がってしまっています。

韓国語や中国語の表記を不要だとは言いませんが、小さな枠に収めなければいけないなどの制約がある場合は、それらを入れなくでも良いのではないのでしょうか。あくまで目的は「情報をわかりやすく伝えること」なので、そこにフォーカスしてほしいものです。

そもそも日本人が考えるものはどこか丁寧が行き過ぎているのではないか、と思うことはあります。もちろん、日本に来る外国人観光客に対して、日本のおもてなしの精神をもって対応していくことは大事だと思うし、利用者にそういった思いが伝わることはとても喜ばしいとは思います。しかし、上に挙げた他言語表記もそうですが、駅や電車のアナウンスなど、言語に関して違和感を覚えることがいくつかあります。

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現在、僕はフィリピンのマニラに住んでいます。フィリピンはローカル言語にタガログ語(フィリピン語)がありますが、英語も公用語に含まれ、国民の多くは流暢な英語を利用できます。街中にはタガログ語と英語の表記が混在しているものの、日本ほどの煩雑さはあまり感じることはありません。

先日、アラバンという少し離れた郊外のビジネスエリアに行くのに、ローカルの電車を利用することにしました。駅のホームで電車を待っている時、僕はひとつ大きな衝撃を受けることになりました。駅の床に注意喚起として以下の言葉が書かれていました。

Mind The Gap

直訳すると「その隙間に注意せよ」。電車とホームの間に隙間があるから気をつけてください、といった意味を込めて書かれていたのだと思いますが、ここまで簡潔でわかりやすい表記にできる、ということにとても驚いてしまいました。しかし、思えば「頭上注意」は「Watch Your Head」だし、このWatch Your構文はいろいろと応用もされるので、既に似たような形で目にすることはありました。

ちなみに日本の駅にある同様のメッセージは以下の通りでした。

For your safety, please stand behind the yellow line.
「安全のため、黄色い線の内側で立ってください」

Please watch your step when you leave the train.
「電車をお降りの際は、足元にご注意ください。」

もちろん正しい英語のため意味は通じるのですが、どこか冗長化して回りくどい文章のように見えてしまいます。

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僕はあの駅のホームで見た「Mind The Gap」という簡潔さこそが「情報をわかりやすく伝えること」なのではないかと思っています。公共の物は老若男女が利用するため、回りくどいような表記は極力避け、少しでも簡潔にしてほしいです。また、日本人が知っている英語は学校で習うものばかりで、こういった実際に外国で用いられているものを知る機会があまりないかと思います。なので、こういったものを参考にしつつ、その上で日本ならではの個性が出せればいいなと思います。

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