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THE LET'S GO'sの新しい5曲入りCD 5x2

 THE LET'S GO'sってバンドを知っているかい?いるんだよ、そういうバンドが。で、そのTHE LET'S GO'sが「5x2」という5曲入りのCDをリリースした。2人で作った5曲のサウンズだから5x2。

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 バンドの歴史は古いっぽい。割と自分と近そうで遠いところで活躍していて、観る機会聴く機会はあったけど、ちゃんと聴いたのは前作「平凡チェリー」から。これも自分から進んで聴いた訳ではなく、当時ガールフレンドであった奥さんが当時住んでいた中野と高円寺の間のサージェントペパーズと同い年のボロアパートにCDを持ってきたからというのがキッカケだったわけ。
だからバンドのメンバーが変わったりとかそういう内情は音楽を聴く上で自分にとって大きなことではなく、ギターウルフのメンバーのご息女が在籍しているとかって話も別に重要ではなかった。そしてTHE LET'S GO'sが過去に作ってきた作品に関しても知らないので、私のTHE LET'S GO'sのリスナー歴は、「平凡チェリー」からということになる。

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 「平凡チェリー」は、心機一転したバンドのフレッシュさが溢れる軽快で溌剌としているし、強烈なパンクロックアルバムでSly & Family StoneのEveryday Peopleカバーもジョーン・ジェットへの目配せも忘れていないし、MVも制作された「怪獣レッツゴーズ」は、部屋中をTHE LET'S GO'sが暴れ回り下らないつまらないものを踏み潰して全てを解決してしまう潔さがあったし、ミドルテンポのトラベリングガールではキャロルにおいてジョニー大倉が歌う様なメロウナンバーを思い起こさせる部分も非常にナイスであった。

 この後1stアルバム収録曲を平凡チェリーのメンバーで再録し、ベーシストが脱退してしまう。

 ここまでが長い長い前置きです。ベーシスト脱退から3ヶ月で速攻でリリースされた「5x2」がいかに素晴らしい音楽作品かという話です。まず、リードトラックとなる「フロンティア」の歌詞がインスタで公開され、私はそのバンドを前進させるためにアクセルを緩めない姿勢の美しさに曲を聴いていないけれどこの曲が名曲になるだろうと思いましたし、当然の名曲だったわけです。

 イントロのバスドラム4つから自分が見ている風景を変えたのはSex PistolsのLPの一曲目以来じゃないかと思い、間奏のアコースティックギターのソロ(マンドリンかと思ったのですが。)の雰囲気は、R&Rに回帰した2006年のPrimal ScreamのCountry Girl超えた!と一人キャッキャしていたわけです。そして雄大さのあるスケールを持った曲を聴き、こうやって物事を前へ進めていくのだよなと思い、そして前作よりもギタリストでシンガー、メインコンポーザーのCocoさんのソングライター面が強く押し出ている印象を持ちました。

 「Time After Time」の様なポップチューンでのキュンとするようなメロディとビートでもそれは顕著で、子供の時に夏のちょっと前のなんでもないいつもと同じ昼にオレンジジュースかなんか飲んでチルってるんだけど、偶然テレビかなんかでフィルスペクターのポップスかなんか聴いちゃって、英語だったり大人の話だったりで何歌ってるかちょっとしかわからないけど、いつまでも頭殴られたみたいな感じを思い起こさせるのも素敵で情景が観える音楽は本当に俺は泣かされちゃうんですよ。この曲でもアコースティックギターが小粋に響いてて良いんですよね。チープなオルガンもキュートですし。

 ドラムのマリコ・マリコさんがかっこいい「ラストラブレター」だって優しいナンバーで、このCDの中で強く歌謡ロック感のある感じが親密さを感じます。ダブルのようなコーラスのボーカルも地味ながら効果的に華やかさを演出します。

 もちろんパンクロック的なナンバーも健在で、「Lady Thunder」では激しいながらも言葉を伝えるメロディを持っているし、それはアルバム最後の「神出鬼没のR&Rショー」で同じで言葉と歌を伝えるためのR&Rというのが大変良い塩梅です。

 2ピースになってグッと広がった音楽の幅、骨組みをバリバリを激しく動かすような音楽をやるだけが初期衝動じゃなくて、こうやってバンドが変化し音楽を瞬発的に進化させることも初期衝動だと思う。録音なのだからベーシスト不在でもベースを入れても良いのに入れないところもいいんだよね。ギターとドラムの録音までの数ヶ月で出来上がった関係性が、いい湯加減の隙間を与え余裕のある演奏を聴かせてくれる。ベースの音が好きなら、聴いた人が想像で補えばいいよね。でもベースがいないからって決して低音が足りてない訳じゃないんだよね。だってギターの6弦はベースの1弦と同じくらいの太さなんだからサウンドデザインをうまく組めば低音もちゃんとギターで補えるさ。

 それにロドニーばりなジャケもイカしてるよね。しばらくは家のいい所に置いておこう。

 今が一番かっこいいというのが、かっこいいバンドだけでなくクリエイションに関わる人全てに言える事ですが、今一番素敵です。THE LET'S GO'sは凡百のロックバンドの先へ向かっていった。サイコーだぜTHE LET'S GO's!って言い切っちゃうのが最高だと思うけど、それだけじゃない、肝の座った作品だということも忘れてはいけないのです。

「5x2」はこちらから購入できます。買うなら風呂敷付きだよね。

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