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第3回卯月カップ観戦レポート

第3回卯月カップの観戦に行ってきました!

藤井猛九段の解説を聞くことがもちろん目的の一つですが、最近病気を公表された堀彩乃女流1級を応援する目的もありました。

開会式

本日トーナメントを戦う女流棋士、GSP代表選手、そして藤井九段が入場曲と共に登場する謎企画から始まる開会式。小規模イベントのこういう緩い、しかしなんとか盛り上げようとする工夫が好きです。とは言え最初に登場した田中沙紀女流1級がQUEENの曲に合わせ、サングラス掛けてノリノリで登場した辺りは「マジやべー大会に来てしまったな」と思ったのですが、その後の選手は普通に登場。田中女流1級、偉すぎる。

藤井九段は何の曲か。藤井九段は音楽を聴かれているイメージがあまり無いのでどうなることかと思ったのですが、答えはGARNET CROW。曲名は忘れてしまいましたが、ちょうど今新会館建設のクラウドファンディングでコナンコラボをしているので宣伝も兼ねていたでしょうか。

ところで20年以上前ですが、藤井猛竜王は「入場曲はどんな曲がいいか」と聞かれ、「ブルースリーの『死亡遊戯』のテーマ曲」と回答したことがあります。ブルースリーがお好きだったようです。

準決勝 渡部愛女流三段-堀彩乃女流1級

いきなり優勝本命の渡部女流三段と本日応援の堀女流1級の戦い。これが大熱戦でした。是非棋譜をご覧いただきたいです(棋譜ページ)。

藤井猛九段の大盤解説

大盤解説、小規模イベントと言うこともあって表に出せない貴重な話が出るわ出るわ。今日は特にかっ飛ばしていた印象です。中でも中倉宏美女流2級時代、☗2六歩☖3四歩☗7六歩☖3二金☗2五歩☖3三角☗4八銀☖2二角成☗同銀☖3三金と、何が何でも阪田流向井飛車にするという将棋があった話は(失礼ながら)だいぶ笑ってしまいました。藤井先生もよく覚えていますね。

しかし対局は15分30秒とスピーディーに進むため本譜の進行をたびたび見失い、GSP代表の片野田さんが駒操作のお手伝いをしてくれることに。これが見事な采配で、完璧に大盤に本譜の進行を再現してくれました。イベントの大盤解説、できれば駒操作係は1人必要ですね。

最後は詰むや詰まざるやを堀女流1級が見事に詰ませ、難敵を破って決勝進出。誤解のないように書いておくと、要所要所ではもちろん藤井先生も将棋の解説をされており、さすがいつも通り分かりやすかったです。藤井先生は局面の急所の言語化が抜群なんです。その藤井先生をもってしても、最終盤の難解さに頭を悩ませていました。この将棋は本当に見応えがありました。

準決勝 上川香織女流二段-田中沙紀女流1級

準決勝2局目のカード。本日、「将棋の面白さ」で言えば田中女流1級の将棋が非常に面白いと分かったのが収穫でした。序盤から工夫がある(棋譜ページ)。

大盤解説は藤井九段と、レジェンド蛸島女流六段で始まりました。それまでかっ飛ばしていた藤井九段が一転、やや恐縮するような感じになっていましたが、私にとってはまさかこのコンビが見られるとは夢にも思わず、この瞬間だけでも来て良かったと思いました。あまりに感動して写真を取り忘れた……。

この将棋は田中女流1級の序盤の工夫が奏功し成功したと思ったものの、上川女流二段の粘りも良く、中盤馬金両取りの技が掛かってしまったかというところで田中女流1級が見事な凌ぎを見せて優位をキープし、勝ち切ったという将棋だったと思います。これも良い将棋でした。

この大盤解説で印象に残ったのは藤井九段の美濃囲いに関する話。

上川香織女流二段-田中沙紀女流1級の形(実際は上川女流二段が後手)
藤井猛九段-豊島将之九段の形

上川女流二段-田中女流1級戦では上川女流二段が端を突き返し玉が不安定なまま戦いになってしまいましたが、4/13に行われた藤井猛-豊島将之戦ではそういう展開を嫌って端を突き返さず玉が美濃囲いに収めています。つまり、藤井九段は端の位より玉の位置や安定度を重視している訳です。藤井九段は「端の位はそれほど重視していない」と以前から公言されていますが、ここでも出てきました。藤井九段の思想。

藤井猛豊島戦の将棋は私も藤井先生が成功したと思って見ていました。

それなのに藤井先生は、将棋連盟ライブ中継アプリではむしろ居飛車の方が評価値が高く、豊島九段にも「端の位は大きい」と主張されてしまったと、何度も愚痴をこぼされていました。でも大事なのは棋士がその時どう思って指しているか、です。今日藤井豊島戦における藤井九段の心中を聞けたのは大変貴重でした。

決勝 堀彩乃女流1級-田中沙紀女流1級

いよいよ決勝。応援している堀彩乃女流1級と、面白い序盤を見せてくれる田中沙紀女流1級。個人的好カードで、本局も田中女流1級が面白い序盤を見せてくれました(棋譜ページ)。藤井九段が「見たことない」というとワクワク感が増しますね。

藤井九段も最初から飛ばしていると思いきやさらにほぐれてきたのか、「キビン・コスナー」等の定番ギャグも飛び出してきます。そして中倉宏美女流二段がうっかり「桂馬がピョンと…」と言ったところから始まったど根性カエルの将棋回の話。「空手八段、将棋二段!」とファイティングポーズを構え(梅さんというキャラクターの真似)一通りこの回のあらすじを述べる藤井九段にバカ受けする私、何も分からなくてポカンとする小学生片野田さん、至近距離で行われている決勝、「大変面白い話でした」と軽やかに締める上川女流二段。それで冷静に将棋の話に戻ると、急に分かりやすい解説が始まるという。大盤解説こんな展開見たことない。最高の藤井劇場でした。

決勝の将棋は田中女流1級に一矢があった後、それを咎めるように堀女流1級が怒涛の攻めを展開し、寄り切り。この厳しい攻めは堀女流1級会心の攻めだったと思います。見事でした。

堀彩乃女流1級が優勝。病気を公表したときは本当に心配でしたが、手術も成功し、対局ができるほど快復し、充実した内容で優勝を決めたのは本当に感動しました。人々に勇気を与える優勝でした。おめでとうございます!

表彰式記念撮影

今日は数々の素晴らしい将棋を見て、LPSAの大会やGSPの活動というのは、女性が将棋にかかわりやすく、かつ充実した機会を提供されているのだと、改めてその意義を感じました。

既にMinervaの会員ではありますが、引き続き応援していきたいと思います。

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