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山口恵梨子ちゃんねるの藤井九段動画を紹介するエントリー

※このエントリーは山口恵梨子ちゃんねるの藤井九段動画が500万回されることを願って書いたものです

雑談系動画

藤井九段のファンはその入り口によって、藤井将棋に惚れ込んだタイプ、トークの面白さを楽しむタイプ等様々なタイプのファンがいます。

目次にあるように、ここでは雑談系動画と将棋講座に分類してまとめました。観る将の方も指す将の方も、興味のありそうな動画から視聴してみるのが良いと思います。

雑談系動画は観る将の方でも楽しめる動画である一方、藤井九段の将棋に対する姿勢も垣間見えることから、藤井将棋ファンの方にも楽しめます。全藤井ファンにおススメです。

2022年新春生放送 ゲスト:藤井猛九段

えりりんと藤井九段がおせちを食べながら駄弁る前代未聞のゆるふわトーク動画。あまりにも衝撃で私は思わず3回も投げ銭してしまいました。しかもまさかの2時間超え。BGMにしながら聞くのがおススメですが、面白すぎて作業できないと思います。

終盤、藤井九段の生講座が始まります。これが後に紹介する将棋講座動画に繋がる訳ですが、「歩交換をする意義とは何か」に対する答えを知ることができる藤井九段ならではの切り口の講座で、非常に面白いです。

途中、『藤井猛の攻めの基本戦略』と『四間飛車上達法』が紹介されていますが、今回の動画で興味を持たれた方はぜひ手に取ってみてください。これを読めば、将棋を考える上での羅針盤が必ず手に入ります。

【3月ゲスト】藤井猛九段にチョコをプレゼントしてきました!

えりりんと藤井九段が同じソファに座って駄弁る前代未聞のゆるふわトーク動画。しかも藤井九段のWikipediaを見ながら藤井九段に話を振るというチャレンジングな内容です。ざっくり以下のお話があります。

  • ポケモンのお話

  • 振り飛車御三家(藤井猛九段、久保利明九段、鈴木大介九段)のお話

  • 銀河戦優勝のお話

  • 「鰻屋」のお話

  • 同じクラスの女の子の似顔絵を描いたら女の子に泣かれたお話

  • ザ・ベストテン中森明菜リクエスト事件のお話

話としては知っていても、藤井九段の口から直接語られる貴重な動画です。特に中森明菜リクエスト、まさか当時の藤井家の様子が語られるとは夢にも思いませんでした。

【3月特別編 #4.1】藤井猛九段に聞きたいこと全部聞く

前編、中編、後編の3本立て。バレンタイン動画に続き、えりりんと藤井九段が同じソファに座って駄弁っています。ここでは『藤井猛全局集』からのお話が軸になっています。

全体的にゆるいながらも藤井九段の「勝負師」の一面を覗かせるようなトークもあり、藤井九段ファンは痺れる場面も多いはずです。特に前編の「ここ一番で勝つ」話は、実際に藤井九段がそういう場面で勝ってきた姿を見て藤井ファンを続けてきた身にとっては、改めて感動する動画です。藤井九段は心の底からカッコいいと思える棋士です。

基本将棋講座

将棋講座は指す将向けの動画ですが、初心者向けの方にも分かりやすく解説されている講座内容になっています。有段者の方でも、藤井九段によってあらためて言語化された「理屈」に触れることで、より将棋に対する理解が深まる講座内容にもなっています。つまり全藤井ファンにおススメです。結局藤井九段の動画は全藤井ファンにおススメできる内容になっているのです。

【将棋講座】藤井猛九段の攻めの基本理論 攻め駒の増やし方編【初心者必見】

「攻め駒とは何か?」から始まります。このような問いかけをする棋士がいるでしょうか?まさに藤井九段ならではの講座です。

  1. 攻め駒とは何か?

  2. 盤上の駒を攻め駒と守り駒に分けてみる。そこから見える攻め駒の特徴は「意外と少ない」

  3. 少ない攻め駒をどう増やしていくか?

  4. 攻め駒が駒台に乗るとさらに強い攻め駒になる

  5. 「攻めの成功は駒台の駒が増えること」

  6. 原始棒銀を題材にその具体的な手段を実現

と言う流れで、「攻め駒」と言う概念を意識し、「攻め駒」を増やす(駒台に駒を乗せる)目的を見据え、原始棒銀という具体例を示しながら序盤一手一手の指し手を考えていく画期的な講座です。「なぜこの手を指すのか」というのを考える脳になれば、様々な場面で自力で良い手を考えられるようになるはずです。

【将棋講座】藤井猛九段の攻めの基本理論 銀が攻め駒な理由 分かりますか?【初心者向け】

第1回の講座で「攻め駒」の概念を理解したら、第2回で「攻め駒」の主役である銀の活用の仕方を学んでいきます。どのように銀を活用するか。ここでも「なぜ銀が攻め駒か?」という根本的なところの問いかけをしているのが藤井九段らしいところです。そうして銀の特徴を掴んだ後、実際の銀の活用の仕方を、藤井九段独自の格言を交えつつ説明されています。

【将棋講座】藤井猛九段の攻めの基本理論 これでもう攻める場所に迷わない!【初~中級者必見】

第3回は攻めの形や手筋を紹介されています。「動けない駒を狙え」は『藤井猛の攻めの基本戦略』でも学ぶ重要な考え方。この全3回の動画を理解することで、動画を視聴した将棋ファンは間違いなく攻め方に苦労することはなくなります。攻めの形を作るための指針が頭の中に入っており、どう攻めたら良いか迷うことが少なくなっているはずです。

ここまで説明された攻めの基本理論を書籍で学びたい方には、『藤井猛の攻めの基本戦略』をおススメします。少ない攻め駒をどう増やすかというお話、駒は盤上より駒台へ乗せるお話から動けない駒を攻めるお話までちゃんと載っています。また『四間飛車上達法』にも四間飛車視点での「攻め」の概念が説明されており、こちらもおススメです。

藤井システム講座

藤井システム本家から学ぶ貴重な藤井システム講座。藤井システムを指す方はもちろん、藤井システムを指さない方も、プロの研究の深さを知るために視聴して損はありません。必ず「藤井九段カッコいい」と思うはずです。

【将棋講座 特別編#1】本家本元 藤井九段に教わろう!藤井システムの指し方入門

藤井システムのパターンは多岐にわたりますが、ここではアマチュア将棋でも多く現れる☖4三金型で穴熊に組みに行く居飛車に対し、☗1五歩☗6七銀型の先手藤井システムを発動させていく形を解説されています。

題材となる先手藤井システム

藤井システムの基本ともいえる形で、ここで☗2五桂と跳ねるのですが、その後の手順は意外と難解。『最強藤井システム』のP.37~P.40で解説されていますが、この動画ではその詳細と、さらに定跡書の先の妙手(!)まで解説されています。

この動画は藤井システムを指す上で大事な心得がたくさん紹介されていますが、最も大事なことは「☗6九歩の味を覚えること」。藤井システム党はこの☗6九歩の味に惚れ込んでいるところもあります。信じられないかもしれませんが、この歩を打った玉形が、この戦型において一番堅いのです。皆さんにも是非味わっていただきたいです。

【将棋講座 特別編#2】基本と組合わせる二の矢!端歩を受けられた時の藤井システム講座

☖1四歩と受けてから穴熊に組む形に対する藤井システム。この藤井システムは昔から定跡化されていますが、書籍での定跡解説が無く、過去に囲碁・将棋チャンネルの「藤井システムの極意」という番組で解説されたことがあるくらいで、非常にマニアックな藤井システムです。近年端歩を受ける穴熊が流行しているため、この動画のニーズは非常に高いと思います。

端歩受け穴熊に対する藤井システムは、端歩が入っているが故に藤井システムの攻め方が「かなり」違っています。そもそも居玉ではなく☗4八玉型です。それでも「居玉ではなくても穴熊を封じることができる。☗4八玉型も藤井システムの一つである。」というのは『藤井猛全局集 竜王獲得まで』にある藤井九段の言葉。

端歩を突き合っていることが藤井システムの攻め方にどういう影響を与えているか、なぜ☗4八玉型なのか、☗6五歩を突かずに☗5六銀と出る理由は何か。一般的な藤井システムとの違いとその理由を丁寧に解説してくださっています。

端歩受け穴熊に対する藤井システムを知りたい方は是非ご覧ください。

【将棋講座 特別編#3】藤井九段による自戦解説 藤井システム使用対局【朝日杯将棋オープン戦】

藤井システム採用局の自戦解説。題材は2019年10月17日に行われた朝日杯将棋オープン戦一次予選の瀬川晶司六段で、瀬川六段が☖1二玉型に構えた珍しい将棋です。これを☖1一玉の穴熊と比較しながら解説するのが藤井九段の上手さかなと思います。その比較によって炙り出される☖1二玉型の弱点の突き方、あるいは弱点を突くための将棋の作り方というのは非常に参考になります。

☖1二玉というのは穴熊を諦めてくれた手かなとは思いつつ、実際にはしっかり固められるため手強いことには変わりません。指してくる人も少ないため経験値が少なく☖1二玉型を苦手とする方もいるかもしれませんが、この動画や『四間飛車を指しこなす本第3巻』で対☖1二玉型を得意にできると思います。

ちなみに藤井九段と瀬川六段と言えば、2004年の銀河戦で藤井九段(当時A級)対瀬川晶司アマという対局がありました。この動画ではその思い出として、アマチュアの対戦を受けるA級棋士の心境も語られています。

当時の棋譜は囲碁・将棋チャンネルのページで並べることができます。戦型は藤井システム!瀬川前アマ王将(当時)が上手く攻めていると思いきや、終盤ポンとついた☖9六歩が詰めろという、狙いすましたカウンターを決めた藤井九段。印象的な将棋です。

角交換振り飛車講座

動画のタイトルにもあるように、藤井九段と言えば「藤井システム」だけではなく「角交換振り飛車」の本家でもあります。現在はむしろ角交換型の振り飛車を主戦場としている中でこのような解説動画が出てくるのは、やはり貴重です。

【将棋講座 特別編+α】藤井システムだけで藤井九段は語れない!角交換振り飛車の自戦解説【叡王戦段位別予選】

藤井九段による角交換振り飛車の自戦解説です。題材は2020年11月19日に行われた叡王戦段位別予選九段戦の深浦康市九段戦。この将棋は藤井九段が☗5六角という筋違い角を放った対局です。個人的には藤井九段の筋違い角は良さをハッキリ求めに行く、ハイリスクハイリターンを求めている指し方だと思っているので非常に興味深い将棋の解説でした。終盤の読み合いの解説も非常に面白いです。

この対局の動画は現在もAbemaで視聴することができます。講座視聴後に対局動画を見ると、ポーカーフェースの裏の心の声が見えたりして面白いです。

対引き角講座

よく考えると振り飛車視点での解説があまりなかった引き角に対する振り飛車の指し方講座。私にとって藤井九段の対引き角将棋と言えば、第24回朝日オープン将棋選手権五番勝負第2局の羽生善治朝日オープン将棋選手権者戦(→観戦記)なのですが、今回の講座ではもっと分かりやすいテーマ性を持つ将棋が紹介されました。

【将棋講座】藤井猛九段 夏の四間飛車講座#1 向かい飛車に転換して引き角に対抗!編

題材は2001年7月18日に行われた第60期A級順位戦第2回戦の三浦弘行九段戦。向かい飛車から引き角~地下鉄飛車~端攻めを目指す指し方で破壊力抜群です。この構想を藤井九段がいつ、どのように練っているかも披露しており、藤井九段の序盤の長考の中身が少し垣間見えます。

【将棋講座】藤井猛九段 秋の四間飛車講座#2 最初から中飛車にすれば引き角に有利!編

向かい飛車ではなく中飛車で対抗する形で、引き角の弱点を見極め、的確に手を紡いでいく定跡が紹介されています。定跡と言っても、まさに藤井九段や飯島栄治八段が創ってきた定跡な訳で、非常に説得力があります。

途中から紹介される藤井猛九段対飯島栄治八段の将棋は2007年7月18日に行われた第15期銀河戦決勝トーナメント第1回戦の将棋で、現在も囲碁・将棋チャンネルのページで全棋譜を並べることができます。

それにしても藤井九段の定跡書を読んでもそうですが、今回紹介した講座を見ても、水面下では非常に難解な変化が潜んでいるにもかかわらず、今からでも「真似してみよう」と思わせてくれる分かりやすさがあります。藤井九段の解説というのは、

  • 類似の形と比較して、今見ている形で着目すべき点を明らかにすること

  • 感覚的な部分を明快に言語化すること

  • ある程度単純化してパターン化すること

  • 易しい変化と難しい変化が適度に織り交ぜられ、どのレベルのファンが見ても勉強できる部分があること

という特徴があり、非常に分かりやすくなっているのかなと思います。

このように明快に言語化してくださる藤井九段と、動画として紹介してくださるえりりんには感謝しかありません。多くのファンに藤井九段の解説動画が届き、棋力の向上に繋がることや、プロ将棋の奥深さに触れることができることを期待しています。

私自身も山口恵梨子ちゃんねるの藤井九段動画の続編に期待しています。お金ならいくらでも払います。

対右銀急戦講座

※続編に期待したら3日後に続編がアップされました。

【将棋講座】藤井猛九段 冬の四間飛車講座#3 振り飛車で右銀急戦は怖くない!

来ました。ついに対elmo囲い急戦の講座です。elmo囲いが出てきて数年は経ちますが、四間飛車視点ではまだまだ解説が少ないこの戦型、藤井九段の解説が聞きたかったのです。

投げ銭をしてまで対elmo囲いの解説を聞きたいと懇願する人の図(→2022年新春生放送

こんなことなら1,000円ではなくて50,000円は投げるべきでした。

リクエストに応えていただいたことに感謝しつつ、これまた素晴らしい動画の内容を紹介したいと思います。

今回の動画は対elmo囲い急戦を学ぶ前段として、まず通常の右銀急戦を題材に、四間飛車対急戦の考え方をじっくり、丁寧にされています。

elmo囲い急戦の攻め筋は右銀急戦と似ているため、右銀急戦の基礎知識を入れた上で対elmo囲い急戦に講座に入った方が良いということで、「比較しながら説明する」藤井九段らしい導入だと思いました。

とは言え、この前段だけでも非常に素晴らしい内容でした。

  • 四間飛車対急戦について

  • 四間飛車の『攻め』について

  • 駒を捌いた後の形勢判断について

  • 四間飛車対右銀急戦の基本的な切り返しパターンについて

ざっくりした流れは上の通りですが、この動画で藤井九段は「振り飛車をやっていて急戦が嫌だとは思わない」とハッキリと言い切ります。この理由に触れるだけで、数万円以上払う価値があります。

「四間飛車は待つしかなくてつらい」とか、「振り飛車のカウンターの仕方が良く分からなくて難しい」とか、そういった考え方はこの動画で必ず払拭されます。一つ一つの具体的な手に触れられている訳ではありませんが、藤井九段流の理屈に触れることで、四間飛車の序盤~中盤についてどのように勉強し、どのような指し手を選ぶべきか、分かるようになっているはずです。

ところで、これまでの藤井九段の動画と著書を見返すと、2017年の『四間飛車上達法』から、「四間飛車における『攻め』」の説明について非常に工夫されていることが分かります。

そもそも2000年の『四間飛車を指しこなす本第1巻』のまえがきでは、藤井九段は四間飛車の極意について「相手の力を利用して、投げる」と書かれていました。これは四間飛車らしいカウンターを感覚的に分かりやすい言葉にした「極意」で、四間飛車党は皆この言葉を心に刻んでいました。しかし、あまり四間飛車を知らない方にとっては、その具体的な手段が難しく感じられ、四間飛車を指し始めるのをためらう声もありました。

それを解決するために『四間飛車上達法』や山口恵梨子ちゃんねるの一連の動画で、より分かりやすい概念を導入しています。それが「四間飛車の『攻め』」です。四間飛車の「カウンター」を「攻め」とし、その攻めの概念を整備することで、四間飛車の極意をより明快に言語化されているのです。

「四間飛車の『攻め』」について動画で学びたい方は「藤井猛九段の攻めの基本理論 攻め駒の増やし方編」を視聴することを、本でじっくり学びたい方は『四間飛車上達法』を読むことをおススメします。

四間飛車対急戦というのは、居飛車が攻め、四間飛車が受けます。しかし「藤井猛九段の攻めの基本理論 攻め駒の増やし方編」や『四間飛車上達法』で「四間飛車の『攻め』」を学んだ方は、今回の動画で現れる「四間飛車対急戦は攻め対攻め」という衝撃的な表現に納得し、四間飛車のカウンターにおける攻め方について深く理解することになるでしょう。この辺り、2014年のNHK将棋講座の『藤井猛の“初出し”攻め方フォーラム』(→『藤井猛の攻めの基本戦略』として書籍化)の講義からずっと一貫した説明をされており、『四間飛車上達法』を執筆も経て、初心者向けに練りに練ったものだと想像します。

こうして我々四間飛車党は「相手の力を利用して、投げる」をさらに具体化した極意に到達しました。もう攻められても怖くない。攻めてもらいながら感謝するのです。

四間飛車における攻め成功が「攻めエリアの駒を駒台に乗せること」と理解した今、その手段として四間飛車は居飛車の攻めに対応した「切り返しパターン」を身に付ける必要があることも今回の動画で紹介されています。この切り返しパターンを身に付ければ、居飛車の攻めに対応するだけで労せずして駒台に駒を乗せることができる(つまり攻めている)という訳です。

この「切り返しパターン」は対左銀急戦であっても対右銀急戦であっても似ているため、対左銀急戦の参考になる棋書として、動画内では『四間飛車の急所第2巻』が紹介されています。これはまさしく「すーっごい詳しく」変化が載せられており、まるで辞書のように使えます。全四間飛車党の方に手元に置いて欲しい本です。この本が難しいと感じる方は『四間飛車を指しこなす本第1巻』から入るのがおススメです。既に20年以上前の棋書で古くなった変化もありますが、四間飛車の切り返しパターンのエッセンスが詰まっており、様々な形に応用できる力をつけることができます。

いずれにしても、このような序盤~中盤の知識を得ることは、結局は捌き合った後の形勢判断を正しいものにし、厳密な一手差争いに勝つことに繋がります。その辺りは非常に難解ですが、『四間飛車上達法』第3章に右銀急戦を題材にしながら詳しく解説されています。

ところで、切り返しパターンは対左銀急戦が参考になるとは言え、対左銀急戦に比べ対右銀急戦というのは従来実戦例も少なく、解説書もそれ程多いものではありませんでした。

藤井九段の著書の中では『四間飛車の急所第1巻』第3章にその歴史が紹介されています。この歴史解説の面白いところは、昭和の時代からある右銀急戦の解説があることで、藤井システム登場以降の右銀急戦が、過去の右銀急戦に比べてどれだけ得をしているかという比較の解説をされているところにあります。そして、藤井システム登場以降の右銀急戦は、藤井九段の研究手によって成立しなかったというストーリーが最高なのです。

この歴史にもあるように、右銀急戦は藤井システム登場以降再燃し、対左銀急戦にはない、対右銀急戦の独特な切り返し方も出てきました。例えば次の2つの切り返しパターンがあります。

【藤井新手の☗6七角(☖4三角)】

藤井新手☗6七角

この手が『四間飛車の急所第1巻』第3章で紹介されている藤井九段の研究手です。具体的には『最強藤井システム』P.51~P.53に解説されています。『将棋世界』2006年7月号で行方尚史九段が「数多くある藤井新手の中でも、僕はこれが最も素晴らしいと思う」と絶賛されている手です。

有名局に1998年7月29日の藤井猛六段 対 屋敷伸之七段(棋王戦)があり、『最強藤井システム』にこの自戦記が掲載されています。

【小阪流の☗8三角(☖2七角)】

小阪流☗8三角

2000年以降はこの手の方が主流になり、有名局に以下があります。

このように、対左銀急戦の切り返しパターンの他にも、対右銀独特の切り返しパターンもあるものです。

私はあまり藤井九段の棋譜を整備している訳ではありませんが、パッと思いつくだけで挙げられる藤井九段の対elmo囲い急戦の実戦例は以下の通りです。

これらの棋譜を改めて並べてみると、対左銀急戦の応用の他、高美濃から居飛車の玉頭を狙う構想や☗5七金~☗4六金で対応する構想等、やはり対elmo囲い急戦独特の考え方がありそうです。

対elmo囲い急戦の講座ではいったいどのような藤井流格言が出てくるのでしょうか。具体的な手順というより、藤井九段の考え方に触れられることが、今から楽しみでなりません。

今回、右銀急戦の講座をしてくださったことで、こうした予備知識を踏まえた上で対elmo囲い急戦講座に臨むことができることになりました。次回の更新を楽しみにしています!

【将棋講座】藤井猛九段 冬の四間飛車講座#4 本気のelmo囲い対策!

※2023/1/28 追記

ついにこの日が来てしまいました。山口恵梨子ちゃんねるの藤井九段講座最終回。いよいよelmo囲い対策です。

前回の講座で対右銀急戦の基本的な考え方や対応パターンを学んだことで、対elmo囲いのときに振り飛車が何に困るか、というのを最初に解説されています。まずこれが素晴らしい!対右銀急戦に比べ、対elmo囲いの場合は居飛車の仕掛けのタイミングが「遅い」訳で、振り飛車は追加で手を指さなければならず、そこで指す手によっては明快に「損な手」があるとのことです。

この講座では振り飛車が指し得る様々な手に対して、その長所と短所が紹介されています。特に強調されたのは☗9六歩の得と☗4六歩の損。

☗9六歩の得について、なぜそれが得なのかをじっくり、そして分かりやすく解説してくださるのが藤井流。ここで解説された具体例はelmo囲いの弱点を的確に突いたものでここでまた感激。そして藤井九段の解説の良いところは、☗9六歩は得と言いつつも、☖9四歩との交換は☗9五角の筋がなくなる(☖5一の金を狙う筋が無くなる)という損な面も紹介されていること。将棋は単純ではないことがよく分かります。

☗4六歩が損というのはなかなかショック。個人的には☗4六歩(☖6四歩)型美濃囲い愛用者なのですが……。確かに☗4六角(☖4六角)の筋が無くなることは承知の上でしたが、こと対elmo囲いにおいてはこの反撃の筋が有効になるというのは勉強になりました。そしてelmo囲い側が5筋も絡め、☖5六歩~☖5八飛とelmo特有の飛車回りをしてきたときに、☗5七歩という合わせの手筋も紹介されています。

こうして様々な手の一長一短を解説されている中で最後に出てきたのが☗5七金。しかし本来「☗5七金は良くない手」と言います。なぜ良くないかは前段の対右銀急戦の講座を見ていれば分かります。その前段があったからこそ、この☗5七金の特異性が分かります。それでもこの手がこの場合「あり」なのはなぜか。その後考えられる展開はどういうものがあるかを解説されています。その後の展開の一つ、☗4六角~☗6五歩~☗8五桂の変化はあまりにも気持ち良い手順。振り飛車の理想手順を教わりました。

そして最後の最後に、☗4六歩を突いたとしても、それを活かして☗4五歩と突く形も紹介されます。将棋は可能性に満ち溢れている。

この動画で、振り飛車党はelmo囲いに対して様々な形を学びました。単純に「こう指せば良いよ」ということではなく、様々な手の長所と短所を学び、応用が利く考え方を学びました。わずか30分強の動画ですが、我々は幅広い選択肢を得たことになります。もうelmo囲いは怖くない。

ちなみに、この講座を見てから2022年3月27日の青野照市九段 対 藤井猛九段(王将戦)を並べると、☖6四歩を突かないこと(☖6四角を用意するため)、☖1四歩ではなく☖1二香だったこと(☗4六歩からの攻めではないため)、☖5三歩と合わせたこと(先手に抑え込まれないため)、この動画で紹介された手がたくさん出てきて、藤井九段の駒組みの意味が少しだけ分かった気持ちになります。

これで山口恵梨子ちゃんねるの藤井九段の講座は終了。講座だけでも合計10本の動画が公開されました。素晴らしい講座の数々を公開してくださった藤井猛九段と山口恵梨子女流二段には感謝しかありません。非常に勉強になる事ばかりでした。ありがとうございました!

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