『いじめやハラスメントの心理的防止法(教師や上司として止める立場の場合と、被害を受ける立場の場合)』

教職課程の授業で話したいじめやハラスメントについての心理学をまとめました

学校におけるいじめは
①いじめられっ子(もといじめっ子のことが多い)
②いじめっ子(もといじめられっ子のことが多い)
③見て楽しむ観衆
④見て見ぬふりをする傍観者
の4層構造になっていることが多いです。

また、①のいじめっ子と②のいじめられっ子の立場は良く入れ替わりますが、その入れ替わりを決めるのは③の観衆です。

ある時点で観衆が「ちょっと②のいじめっ子はやりすぎだよね。①のいじめられっ子の味方をしよう」と決定し集団で圧力をかけると、①と②の立場が逆転します。

観衆は『罪の意識を感じず、かつ罰を受けずに攻撃欲求を満たしたい』と思っていますから、常に、いじめられっ子の役を押し付けられた子に何らかの落ち度があると決めつけ、いじめはそれに対する正当な攻撃であるとみなします。

つまり、理由や落ち度は後付けですから、さっきまで自分たちが見て楽しんでいたいじめが、次のいじめを正当化する理由になるという理不尽が起きるのです。
このように、実はいじめにおいて主導権を握っているのは観衆です。

テレビの内容を視聴率が左右するような感じです。

いじめはこのような構造をしていますから、いじめをなくすには、いじめっ子といじめられっ子だけではなく、周りにいる子ども達が抱えている問題に対処しなくてはなりません。

そういった理由からいじめの予防においては、生徒達への人権教育や、いじめをしたい・観たいという欲求を出さないように精神的健康を保つようなケアをすることが大事です。

(ただし、この『いじめをしたい・観たい』と言う気持ちは、全ての人の心の中にもともとあります。普段は心の底に隠れていて、自分でも意識できませんが、ストレスを受けると表に出てきます。

そして人間社会からストレスを完全になくすことは不可能です
これが、演劇やドラマ等に『攻撃しても罪悪感を感じない悪役』が出てくる理由です。
演劇やドラマの悪役・やられ役はそういった欲求を誰も傷付けずに満たすための人類の知恵です。)

また、いじめをする人は、必ず最初に『試し行動』をします。
つまり、ごく軽いいじめ行動をして周りの反応を見て、その行動が許されるか?もっと言うと喜ばれるか?を確かめます。そして③の観衆達に喜ばれたら、さらにひどいいじめを行います。

よって重要な点は『教師等のいじめを止める立場にある人は、必ず、軽い試し行動の段階で、見過ごさず、すぐに注意して止める必要がある』ということです。
(また、そのためには教師自身が高い人権意識を持っておき、人を傷つける言動に敏感になっておく必要があります)

理想を言えば、教師だけでなく、③の観衆や④の傍観者となる可能性のある周りの人間が『そんなことをしてはダメだ』と止めたり、ターゲットとなった子が『そんなことをしないでほしい』と毅然と言い、周りもちゃんとそれを支持する状態が作られていれば、いじめは起こりません。

よってクラス全体への人権教育やストレス対処法の教育も重要です。いじめを止める役割練習をお互いにしたりして実際に止めるときの言葉や態度をやってみるというのも有効です。

さて、授業でこの話をすると『教師以外の立場で、例えば会社等でパワハラのようないじめにあった場合はどうすればいいですか?』
という質問がよく来ます。

もし、上司や管理職等の「上からいじめやハラスメントを止める立場」ならば、学校のいじめへの対処と同じく『職場のストレスを和らげる』『職場の人権意識を高める』『試し行動のときに止める』が有効です。

そしてハラスメントを受ける立場ならば
『味方を作って、毅然と対応してください』
です。

人間は一人では同調圧力や、立場等を利用した服従させようとする心理的な圧力に屈してしまいがちです。

しかし、仲間が一人でもいれば『私達はそれを拒否する』と声を上げやすいです。
また、上記の『試し行動』はパワハラ等でも行われますから、その試し行動の段階で味方を集めて毅然と『No』を突き付ければ、例え相手の立場が上でも止めることができます。
(試し行動のあとでも、止めることはできますが、ちょっと大変です)

そのためには日頃から自分の所属するグループの内外に味方を作っておくことがとても大事です(*^▽^*)


もし、味方がいない状況であっても可能な限り抵抗し、所属する集団の内外にどんどん助けを求めてください。
『おとなしく無抵抗でいたらそのうちやめてくれるだろう』と考えて何もしないと、相手は『攻撃しても大丈夫だ』と考えて、さらに攻撃してきます。

抵抗しながらSOSをあらゆる手段で出しまくってください!!

負けないで!!


追記:ここに書いたいじめの心理は、家庭、学校、職場あるいは、他の集団全てにおいて起こるいじめやハラスメントに当てはまります。
また、悪質なクレームに対する対処にも応用できます(試し行動の段階で複数人で毅然と対処する等々)。
この投稿が皆様をいじめやハラスメントから少しでも守る効果がありましたら幸いです。

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