西脇一弘ブログの虚偽記載と私に対する名誉毀損について

2022年11月21日にギタリストの西脇一弘くんがブログに「sakana biography 番外編 1997〜2009」と題する文章を上げました。その内容は多くの点で事実と異なり、とりわけ、金銭や印税についての記述はほとんどデタラメとも言っていいレベルでした。さらに、私の発言が脚色されたり、メールの文面が改変されたりすることにより、私の名誉や信用を深く傷つける内容でした。

https://megalodon.jp/2022-1128-1518-17/kazuhiro-nishiwaki.blogspot.com/2022/11/19972009.html

この事態からして、件のブログが事実と大きく異なることは、私自身の言葉で、ネット上に書いておく必要があると判断しました。

まず、ブログは西脇くんのあやふやな記憶に基づき書かれたものです。金額についての記述が多くありますが、ほとんどすべて間違っています。記録を確認せずに、記憶やその場の暗算で書いたようです。

また、私とのメールのやりとりも、メールを確認せず、記憶をもとに彼の印象で言葉を練り上げたものです。

例えば、2009年に私がsakanaレコードが私に支払うべきプロモーション印税について質問したメールを、彼はカッコでくくって、このように記述しています。

「それからついでだから云うが、ウチがプロモーションを引き受けた「Sunny Spot Lane」の売上について2005年以降なんの報告もないがどうなっているのか?」

そして、「随分な云われよう」というコメントを加えています。

しかし、私のメールボックスから送ったメールを掘り出してみると、実際の文面は以下のようなものでした。

「ところで、話は変わりますが、僕とsakana recordの間にも契約がありますよね。Pocopen & NishiwakiのCDについて、5%のプロモーション印税が支払われることになっているはずですが、一度、報告と支払いを頂いたきりのように思います。その後の期間についても、報告と支払いを頂くことはできるでしょうか?」

私はていねいに質問していました。

それが先のように改変されていたのです。ブログ中の私が言った、書いたとされる「」でくくられた文面はすべて、このように改変、脚色されたものです。原文を引用したものは、ひとつもありません。

ブログには金額についての記述が多くありますが、それらもすべて間違っています。正しい金額はひとつもなく、全体としても事実と異なります。
ブログは最後の方でこう結ばれてもいます。

「自分は高橋氏からもらった金と高橋氏に支払った金に殆ど差がない」

しかし、これは大きく事実と異なります。

まず、西脇くんのsakanaレコードが私に支払ったお金は、過去に三つしかありません。

ブログには、それらについて、こう記述されています。

2003年に『Sunny Spot Lane』というCDの「マスタリング費として高橋氏に¥100,000-を支払った」、

同CDの「高橋氏に支払ったプロモーション印税の合計は約¥280,000」、

「プロモーションにかかった実費として200,000-を請求されて支払っている。明細は資料郵送費¥150,000、大阪京都へのレコード店への営業の為の交通費¥50,000-、云うザックリしたものだった」との記述があります。

しかし、このマスタリング費、プロモーション印税、プロモーション経費はすべて間違っていて、すべて金額が過大です。

マスタリング費は7万円、プロモーション印税は89693円が支払われた後にストップし、5年後に先のメールを送ったところ、追加分が支払われて、合計177,670円になりました。経費は資料郵送費および交通宿泊費の実費計算で、請求は109,540円でした。

経費を除くと、sakanaレコードが私に支払ったのは247,760円です。

対して、私の会社はsakanaの二人に対して、1998年から2007年にかけて、300万円前後の報酬・印税を支払っているはずです。

西脇くんはその後、私宛のメールで2000年7月に40万円、2001年3月から2002年4月にかけては三回の振込で426,665円を彼の口座に受け取っていたことを認めました。

しかし、それ以外にも、2000年11月にキャッシュで20万円を受け取った彼からの領収書が残っています。この2000年7月から2002年4月にかけての22ヶ月間だけで、西脇くんは1,026,665円を私の会社から受け取っていたことになります。

この約102万円は『Blind Moon』というアルバムに関する報酬・印税が主になりますが、1998年の『Little Swallow』、2004年の『Locomotion』についても、私の会社は相応の額の報酬・印税の支払いをしています。

しかし、ブログには『Little Swallow』で彼らが得た報酬・印税については何も触れられていません。

『Locomotion』で西脇くんが受け取った印税は36,000円と書かれていましたが、もちろん、そんな金額なはずはありません。これもあやふやな記憶による記述だったようで、当時の通帳が確認できず、その後、「印税額は不明です」と訂正されました。

私も20年も前の支払い記録などを探し出すのは困難ですが、『Locomotion』についていえば、実演家印税の初回分として、2005年3月に223,276円を支払っていることは確認できました。

このようにデタラメな内容でも、金銭のやりとりは第三者が検証できるものではありませんから、赤裸々に金額を並べられると、多くの人は信じてしまいます。

ツイッター上にはこんな反応が相次ぎました。

「僕の好きな音楽家に何してくれてんねん、という怒り(?)とかやりきれなさとかを感じる」

「契約のシステムとして、なんとかならないのかな。誰がどうというより。今は変わってるかもしれないけど」

「西脇さんがいちばん言いたかったのは金銭関係についてなのでは。自分は(良く言えば「デタラメなビジネス」、悪く言えば「搾取」の話か)と思った」

私のレーベルがミュージシャンとの契約や金銭関係において、搾取に当たるような不当なことしたと、人々に印象付けられたことが分かります。

さらには、こんな反応もありました。

「これを読んでもう高橋健太郎さんの文章をいっさい読めなくなった。音楽業界とはなんなんだろう。結局いつまで経っても同じことが繰り返されていくのか」

「超長文でとても全部は読めなかったけど、髙橋健太郎がいかに鼻持ちならない驕った人間かということをあらためて思い知らされる」

「音楽ゴロってこういう人のことなのかな」

「こういうおっさん(能力ないのにどこにでもあちこち顔出して大声で喚き立てるタイプ、蔑ろにされると激怒するタイプ)いた・いるよなあ、と思いました」

「高橋健太郎は一番影響を受けた評論家だ。彼に紹介された音楽は数知れず。この頃、よくネットを良く読んでいた。けど、何か胡散くさあと、思い始めて10年ぐらい前にフォローを全て辞めた。きちんとした業界人っていないものなのだろうか?」

これらは、ブログが私に職業的な危機をもたらしたことを示します。

ブログの内容から、西脇くんは長年、事実関係について、根本的な勘違いをしていたということも判明しました。

1998年のアルバム『Little Swallow』の制作時の話で、こんな箇所があります。

「勝井さんは共同プロデューサーとして高橋氏がバッドニュースからどのくらいの予算を引き出したのか?それをどの様に運用していくつもりか?等々を高橋氏から聞き出そうとしても、はぐらかされてしまってよく分からないと云う」

バンド内でそういうやりとりがあったということでしょうが、私からすると???な文面です。というのは、制作予算はすべて私が出したもので、バッドニュースから予算を引き出すも何もないからです。

当時、私はレーベルを持っていなかったので、制作をした原盤をリリースしてくれるレーベルを探していました。そして、バッドニュースがそれを引き受けてくれたのです。しかし、バッドニュースは音源の完成後にプロモーション予算は出してくれましたが、制作予算はまったく出していません。

こんなことは制作が始まる前から分かっていたことです。バッドニュースと私の契約交渉のミーティングにも西脇くんとポコペンさんの二人は同席していました。

そこで原盤は100%私が予算を出して制作するが、出版はバッドニュースが持ち、その分、プロモ予算を出すと決まっています。彼らが話を聞いていて、何か勘違いしたのだとしても、その後に契約書にサインして、私の会社から実演家印税ももらっています。ところが、驚いたことに西脇くんは24年間、バッドニュースが制作予算を出し、私がそれを預かって、制作していたと考えていたことが、11月末のツイッター上のやりとりで分かりました。

ちなみに、私は当時、制作予算は決めていませんでした。原盤制作は初めての経験でしたから、幾らかかるか分からなかったし、無駄遣いはしないけれど、完成度高いものを作りたかったから、かかったものはしょうがない、くらいの考えでした。でも、結果的に支出はどのくらいだったかは、2009年にポコペンさんに金額まで伝えています。それももう13年以上前のことです。

なので、2022年にもなって、「バッドニュースから予算が出て制作、と云う認識は僕の勘違いだったのだと今知りました。あなたが予算を出して制作していたのですね」と西脇くんに言われたのには、椅子から転げ落ちそうになりました。

こんな勘違いがされた状態で、『Little Swallow』というアルバムは制作されていたのですね。バンドからの依頼で、私と勝井祐二さんで共同プロデュースすることになりましたが、私と勝井さんは初対面。コミュニケーションは難しかった。はっきり言うなら、私の側に非礼がありました。

リズム録りの後は私のスタジオで長いダビング作業が続き、多忙な勝井さんは疎外されていきました。また全曲のミックスが終了した後に、歌詞を書き直し、歌入れをやりなおすというポコペンさんの要望を僕が聞き入れてしまい、勝井さんに相談なく、新しいヴォーカル・トラックを採用してしまいました。共同プロデューサーに相談なく、そんなことをするのは決定的なルール違反で、勝井さんの怒りは当然のものでした。

ブログにはそうしたことは書かれていません。私と勝井さんの対立の板挟みになって、西脇くんとポコペンさんは辛かったということばかりが強調されています。しかし、上記の決定的な事件も発端を作ったのはポコペンさんですし、「バッドニュースからの予算」などという会話が、不透明だとか信用できないとかいう材料になっていたのだとすると、中心となる二人(西脇くん、ポコペンさん)の勘違いがその原因を作っていたと考えざるを得ません。

彼らはあることについては私とのみ話し、あることについては勝井さんとのみ話していた。そういう彼らを間に挟んでいたから、私と勝井さんの関係はよけいに難しいものになった。これは当時、ポップ鈴木くんが私に書き送ってきた分析でもありました。

24年も前の出来事であり、その後、私と勝井さんは別の場所で多く顔を合わせ、録音をご一緒する機会もありました。sakanaを通じて、あるいはsakanaの周辺で知りあった人々は多く、友好的な関係を保っていると思います。

が、本件は多くの人の心をかき乱しそうなシリアスな問題を孕んでいます。24年前の誤解から全てが繋がっていて、同じ構造で物事が繰り返されてきたようにも思えます。

私の側から彼らにアプローチしたのは、最初の『Little Swallow』のみであり、その後のアルバムについては、すべて彼らからの依頼に応えて、私ができる仕事をしたものです。プロデュースでも、エンジニアリングでも、プロモーションでも、求められることを。彼らはその時々の彼ら自身の判断によって、ここまで導かれてきたはずですが、依頼された側である私の影響がそこまで大きいというのは、ある意味、意外でもありました。

ブログを不正確なお金の話や検証不能な会話などを剥ぎ取って、読んでいくと、私と西脇くんの間には「ぶつかりあい」が一度もなかったのが分かります。彼は人とぶつかりあうことを避け、いつも周囲の意見に折れていた。嫌々ながら。何も言わず。その帰結が24年後のブログでした。

彼は現場では何も言わず、ポコペンさんと二人になった時だけ、意見を、あるいは感情を伝えていた。だから、ポコペンさんだけが、彼の不満や傷ついた心を知り、守ろうとしてきた。
今回も同じことが起こりました。西脇くんはツイッターで私をブロックして、対話から逃げてしまい、西脇くんを守ろうとするポコペンさんが私宛に150通もツイートを送ってくる。

もう十数年も、彼らとは会ってもいないのですが、状況は変わらないのだなと思いました。

西脇くんは「自分の体験談を自分の記憶に基づいて自分の言葉で書いたものが名誉毀損にあたると僕は思いません」とメールで書き送ってきました。

私は事実に重きを置く人間です。本件がどのような解決を見るのかは、私にも分かりません。

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