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#96 Paul Motian & the E.B.B.B. 「Flight of the Blue Jay」

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ドラマー Paul Motianから一枚。

Paul MotianはBIl Evans Trioでの活躍をはじめ ,様々なミュージシャンに愛されたドラマーであり, 自身もユニークなグループを結成してツアーを行うなど, 常にクリエイティブな活動に身を置いたミュージシャンでした。

彼のドラミングは他の誰にも真似できないような独特なもので, 一言で表すなら「何も叩いていないようでありながら, すべてを表現している」といったイメージでしょうか?

正確で芯の通ったリズム感をベースに, 一音一音まるで喋っているように音楽をカラフルに演出し, 休符までも演奏しているような彼のプレイは一般的なジャズドラマーに比べると派手さは無いように感じられるかもしれませんが, バンド全体のサウンド聞いてみるとこれ以上なくバランスの取れたドラミングで全く足りない感じはしないのが不思議です。

このアルバムは彼の代表的なリーダーグループの一つであるthe Electric Be Bop Band(the E.B.B.B.)の一枚です。

E.B.B.B.は編成が特殊で

Tenor Sax
Tenor Sax
Electric Guitar
Electric Guitar
Electric Bass
Drum

という6人編成です。テナーサックス2本でのアルバムというのはよくあるんですがエレキギターが2本加わっているところは非常に珍しいです。

演奏する楽曲はThelonious Monkを中心にCharlie ParkerやMiles DavisといったまさにBeBopの楽曲で, メンバーのオリジナルもBeBop期の楽曲を意識して作られているであろう曲が多いです。

通常, 多管編成の場合は楽器の多さをいかしたハーモニーやユニゾンなどアレンジを活かしたり(The Jazz Messengersなどが好例です), 全員がいろいろなことを吹くことで厚みやワイワイ感を出す(Mingusバンドなどが当てはまります)ことが王道の手法なんですが, E.B.B.B.がテーマにしているのは

Collective Improvisation

じゃないかなと聞いていて感じました。Collective Improvisation(集団的即興演奏)というのは, ディキシーランドジャズやニューオリンズジャズなどのスタイル(トラッドともいう)で行われた即興演奏の手法のことです。

色々な楽器(トラッドの場合はコルネット, クラリネット, トロンボーン)が同時にアドリブをしながらそれぞれの調和を保って曲を作りあげていくあのなんともいえない一体感のある演奏がCollective Improvisationそのものです。

つまり E.B.B.B.は, そんなジャズの黎明期に行われていた手法をBeBopの楽曲に取り入れ, なおかつエレキギター等の電子楽器の音色を使って表現するというなんともお洒落かつ大胆なコンセプトのバンドなんです!

実際にアルバムを聞いてみるとサックスやギターの2人はうまくスペースを空けあいながらソロやバッキングを行っていることが分かります。

私が大好きな曲「Pannonica」やGeorge Shearing作曲の「Conception」などでは特にその色が強く出ているのでチェックしてみてください。

個人的にPaul Motianは一番好きなドラマーで一時期彼の参加しているアルバムならなんでも手に入れて聞いていた時期がありました。

他の参加アルバムも名作揃いなのでまたここで紹介できたらなと思います♪
ぜひお楽しみに!!


Paul Motian & the E.B.B.B. 「Flight of the Blue Jay」

1. Flight Of The Blue Jay (Paul Motian)
2. Pannonica (Thelonious Monk)
3. Brad's Bag (Kurt Rosenwinkel)
4. Celia (Bud Powell)
5. Blue Room (Lorenz Hart, Richard Rodgers)
6. Milestones (Miles Davis)
7. Light Blue (Thelonious Monk)
8. Conception (George Shearing)
9. East Coast (Kurt Rosenwinkel)
10. Barbados (Charlie Parker)
11. Work (Thelonious Monk)

Drums – Paul Motian
Electric Bass – Steve Swallow
Electric Guitar – Brad Schoeppach, Kurt Rosenwinkel
Tenor Saxophone – Chris Cheek, Chris Potter


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