ハラにぺ 第10回

前書き

2018年に腎臓がんが発覚し、全開腹手術で左腎臓ユニット全摘出。その時の事が誰かの為に役に立てば…と思いコレを書いています。実際に当時も誰かの経験談をネットで読んで情報を得ていて、それには大いに助けられたので…。
以前の投稿は入院直後につけていたメモを元に書いていましたが、それはやはり時期尚早だったようで、書いてるウチになんだか辛くなってきて途中でやめてしまいました。なので、当時のメモが元になってるのは第8回まで。現在は記憶を辿って書いています。記憶が曖昧になってきている点がありますが、その辺はご容赦を。
ちなみに現在は健康には特に問題はなく、元気です。
では本題へ。


手術当日

朝6時位に採血係の人がドカドカとやって来て、右腕の肘の内側あたりに否応なく針が刺され、目が覚めました。その直後の事は記憶にないけれど、他の係りの人が迎えに来てくれて車椅子に乗せられ手術室へ。手術開始は朝8時半、終了予定が10時半〜11時でした。

手術室

そこから手術台に横たわり麻酔。2回程何かをマスクでかがされました。一度目に吸って、二回目の時に「心の中で4つ数えて下さ〜い」と言われました。

二回めを吸う直前に「このまま死ぬ可能性はゼロではないけれど、もしそうだとしたら、自分が死んだ事に自分自身で気づくのだろうか?」とか一瞬考えたのですが、深く考える間もなく、即、落ちたようでした。4つまで数え終わった記憶がありません。

次に気がついた時は看護師さんが私の足を揺さぶりながら強い口調で「起きて!起きて!」と連呼していました。
どうやら手術は無事に終わり、まだ生きている様です。
目をつぶって開けたら全てが終わっていた…という感じでなんだか不思議な感じでした。

車輪付きの担架が私のいる手術台に横付けされ「ここに移って!」と、これまた強い口調で指示されました。「麻酔明けの患者に厳しいなぁ…」とか思いながら仰向けでズリズリと移り、その後ICUに搬送されました。今となっては、その位強く言わないと麻酔明けで朦朧としてる患者には伝わらないからなんだろうな…と思っています。

ICUに搬送される

ICUに到着し、朦朧とする意識の中で私が看護師さんに最初にした質問を覚えています。それは「どうやってトイレに行けば良いのですか?」でした。
というのも、私の尿道にはチューブが挿入されていて、驚いたからです。

よくよく考えたら、それによって強制的に排尿し続けてる状態なので自分自身でトイレに行く必要など無かったのですけれども…。

そういう感じで、そのチューブに合わせて左腕には麻酔と何かもう一つの合わせて2つの点滴がされていました。定かではないですが、心電図の端子も胸部には付いていた様な記憶があります。
おまけに左腹部の骨盤すぐ上辺りに袋が差し込まれていました。これは手術の際にでたドレーンと呼ばれる体液を排出するモノらしいです。

術後の自分の姿にあまり驚く事はありませんでした。それは事前の説明があったからなのだと思います。
ちなみに着衣は後ろがガバッと開いている「スモック」の様なモノと、静脈炎(?)を防ぐ為らしい、足先が開いている膝までの靴下の様なピッタリとしたサポーターのみでした。

ICUというと何かモノモノしく、人工呼吸器なんかをつけられたりガラス張りの個室に隔離され、面会謝絶!…というイメージでしたが、私が居たのはそこまで重々しいものでは無く、看護師さんの詰め所が真横にあって、こまめに様子を見に来たり、何かあればすぐに様子を見に来るのに便利な場所、という感じでした。 

まず、看護婦さんに言われたのは「オナラが早くでると良いわね〜」的な事でした。と、いうのも、私の様な全開腹手術の場合、内臓の動きが一時的に止まるらしいのです。という事はオナラも出ないし、でたらそれは順調な開腹の兆しという事みたいです。(実際私の隣の老人なんかは、オナラが出せずに時折悶絶していました。)なので、毎朝一番にされる質問は「オナラは?」でした。この時程オナラをする事が誇らしく思える日々は無かったです。

午後にカミさん到着

フランスは制度上、手術への立会いは出来ない様です。日系人である看護師さんには「11時ころに結果を電話します。面会は午後14時以降です。それ以前は来れません。」と言われていて、おおよそその位に来てくれました。

「日本のテレビドラマで見るようなのとは随分違うんだねぇ。先生が術後に『旦那さんの病巣はコレです』とか言って見せてくれたりするシーンがよくあるけど、そういうの一切無かったよ…。ホントに手術して取ったのかね?」と笑ってました。

後にフランス人の友達に聞いた所によると、そういうのはこっちでは普通の事らしく、手術中に病院内で待機して待つと言うのも不可だそうです。

カミさんはコテコテでは無いにしろ大阪人。「大阪人にオモンナイっていうのは人格否定と一緒や」というタイプ。本人も人を笑わせるのが好きな方だと思いますし、多分、気を使ってくれて面白い話をしてくれてたんだとも思います。ただ、この時ばかりは困りました。笑うと激烈に痛いのです。なにせ肋骨に沿う感じで傷口がお腹を横断しているので…。(今、傷跡を確認したら45〜50針位縫った跡がありました…)
有り難いのだけれど、しばらくニヤリとする位で済む話でお願いしました。


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