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本当にセ・リーグは弱くなったのか?

色々あった2020年、プロ野球の最終マッチである日本シリーズが終わりました。結果はご存じのとおり、ソフトバンクホークスの圧勝、しかも2年連続での完全優勝となりました。
この結果を受けて、プロ野球界隈では、
「なぜ、セ・リーグは弱くなったのか?」
「どうすれば、パ・リーグに勝てるのか?」
といった記事が目立つようになりました。
2012年以降、セ・リーグの勝利はなく、
さらに、日本シリーズの長い歴史の中で、通算成績でパ・リーグが勝ち越したわけですから、当然といえば、当然のことでしょうか。

日本シリーズ

その意見で最もフォーカスされているのは、DH制の導入でしょうか。
確かにセパのルール、制度の違いでいうと、やはりDH制になるでしょう。

では、果たして、パ・リーグの連勝はDH制に依るものなのか、
「データ」のみをもとに検証
してみたいと思います。

まずは、
パ・リーグがDH制を導入したのが、1975年のシーズンから。
今から45年前のことであります。
そんな前からあったのかという印象を持つ人も少なくはないと思います。
また、そんな前からのものが「なぜ今」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、実際のデータで見てみましょう。

下表はDH制度導入の前後のセパの勝敗です。

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1975年を含む1970ー1979年の10年間は、パ・リーグの4勝6敗。
それから、2000ー2009年までの30年間は5勝5敗と拮抗しています。
1960年からの10年間の負け越しから考えると巻き返したといえますが、
勝ち越すまでには至っていないことが分かります。
パ・リーグの強さが顕著になるのは、2010年から。DH制導入から35年後のことです。細かく見ていくと、8連勝する2013年、あるいは、その後15勝3敗となる2003年がターニングポイントでしょう。
2003年をターニングポイントとして採用したとしても、DH制導入から28年経過している。この要因と結果の時間的観点からみると、DH制がパ・リーグを強くしているという要因であるというのは無理があると思います。

ちなみにMLBでは、アメリカンリーグが1973年にDH制を導入してからのワールドシリーズの対戦成績(1970年以降)はアメリカンリーグの21勝20敗、直近10年間では4勝6敗とDH制のないナショナルリーグと互角に渡り合っています。

パ・リーグを強くしたのが大きな要因の一つがDH制ではないとしたら、何なのか。DH制以外の主なプロ野球改革の沿革を見てみます。
1973年 パ・リーグ 2シーズン制(1982年終了)
 ※1シーズンを前期と後期に分けて、それぞれ優勝チームを決定する制度
1993年 FA制度、ドラフト逆指名制度
2004年 パ・リーグ プレーオフ制(クライマックスシリーズの前身)
2005年 交流戦
2007年 クライマックスシリーズ、ドラフト抽選制

2シーズン制は終了していますし、クライマックスシリーズ(※前身を含め)もほぼ同時期に導入されていますので要因としては考えにくいです。
ドラフトも逆指名時代には、人気のセ・リーグに秀逸な選手が集まっていたが、それが抽選になり、パ・リーグに秀逸な選手が獲得しているとの意見が散見されるが、チームの育成力やチーム事情など定性的な要素があり、なかなかデータとしては見極めきれません。FA制度についても、毎年数人移籍でチーム力が劇的に変わるという有望な仮説は成り立ちにくいと考えます。
(※とはいえ、ドラフト、FA制度は、次の機会にでも考察できればと思います。)

そこで、もうひとつのセパの優劣を決める交流戦にフォーカスしたいともいます。

交流戦は2005年にホーム&アウェイで各3試合、計36試合を5月から6月にかけて行われた。その後、変更が行われ、2019年は18試合と開始当初から半減しています。
2020年はコロナ渦の影響で開催はありませんでしたので、2019年までの通算成績はパ・リーグ1102勝966敗60引分で、勝率.533。年度別でセ・リーグの勝ち越しは2009年のみで、交流戦開始から5年間は拮抗しているが、6年目からパ・リーグの優位の傾向が続いている。

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さらに注目すべきは、15年の歴史の中で、ソフトバンクホークスが8回優勝(2008・2009・2011・2013・2015・2016・2017・2019年)を飾っていることです。次点が千葉ロッテと巨人の2回なので、その圧倒的なのが分かります。

そこで、ソフトバンクの勝敗を除けば、交流戦の勝敗がどう変わるのかやってみました。

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ソフトバンクホークスの勝敗を除くと、パ・リーグの888勝840敗46引分で、勝率は.514まで落ちます。ここまでくると、圧勝とは言えないでしょう。
そのケースでのセ・リーグの各チームの勝率は以下の通りとなります。

巨人   .552 1位
中日   .515 5位
阪神   .493 7位
ヤクルト .484 8位
広島   .456    10位
横浜   .422 11位

巨人が1位となり、中日、阪神までの半分のチームが勝率5割近くまでになり、5分に戦えていることが分かります。

ここから言えるのは、ソフトバンクホークスが強すぎるのではないかということです。

さて、日本シリーズに話しを戻してみましょう。

2013年からのパ・リーグの8連覇のうち、実に6回はソフトバンクホークスです。その間の勝率は.762と圧倒的な勝利なのです。


このことから、DH制によってセ・リーグがパ・リーグに対して弱くなったのではなく、ソフトバンクホークスが単に強くなったといえるのではないでしょうか。

まとめ

かつて、巨人のV9時代のときにも、今のセ・リーグのようにパ・リーグは弱くなったという議論はあったのでしょうか。
背景は知りませんが、1965-1973年の巨人の9連覇の直後に、パ・リーグは2シーズン制やDH制の導入を決めています。
今、まさに歴史は繰り返され、セ・リーグは、改革の検討をするに至ってます。

しかしながら、もちろん、いい方向に向けた制度の導入の是非の議論はいいと思いますが、それよりも、(釈迦に説法かもしれませんが)向き合うべきはソフトバンクホークスのチーム編成、育成、ドラフト方針、選手年俸、環境整備ではないではないかと思います。



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