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高野秀行氏に弟子入り懇願した話

2019年8月4日、私の28度目の誕生日に旅の目的地であるバリ島のクタビーチに到着した。遡ること9日前、下宿先であるボゴール農業大学の寮を出発し、9日間で約1230kmの道のりをマウンテンバイクで走行しジャワ島を横断達成した。この成果で達成感に満ち溢れて、自分が面白い人間になったと勘違いしてしまっていた…。そう、尊敬する作家高野秀行さんに会うまでは。

インドネシア留学から帰国して就職活動を始まる前に一度高野秀行さんに弟子入りを懇願しようと考えた。仮に成功した場合は、弟子として活動させてもらおうと甘く考えていた。弟子入りと言えば…そう、手紙だ。
早速、高野さん宛てに弟子入り懇願の手紙を書くことにした。普段使用しない万年筆に悪戦苦闘しながら手紙を書き上げた。

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手紙の準備ができたもの、送付先が不明である。せっかく書いたのに読まれなければ意味は無い。よし、直接手渡しをしようと決心した。早速、高野さんのイベントはないか調べると、高円寺にてトークイベントを開催するという情報を仕入れた。このイベント時にに直接手紙を渡そうと決心した。

2020年2月某日、高円寺のイベントに参加するべく目立つようにソマリランド代表ユニフォームを着用して参加した。(アフリカ大好きな先輩意が購入してくれた)約2時間のトークイベントが終了し、サインや写真撮影の時間となった。これは手紙を直接渡すチャンスがきたと内心思った。しかし、尊敬する人を目の前にするとめちゃくちゃ緊張してしまっていた。心を落ち着かすため、アイスブレイクをかねてソマリランドのユニフォームを見せた。高野さんが笑顔になり、よしこれはチャンスと思い2ショット記念撮影を頼んでみると快く撮影に応じてくれた。
「弟子入りの手紙を書いてきました、弟子にしてください!」と言うつもりであったが、緊張+ビビリで伝えることができなかったのである。めちゃくちゃダサいのが私である。

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サイン・撮影タイムが終わると残っているメンバーで飲みましょうと開催者が呼びかけてくれたのである。神はまだ私のことを見捨てていないのであると思った。アルコールの力を借りて緊張を減らし、勇気を振り絞って手紙を渡すチャンスを伺った。飲み会の終わりの合図が告げられた、ここぞというばかりに高野さんの元へ歩み寄った。そして、自己紹介と弟子入りの手紙を書いた旨を伝えた。ひとまず、弟子入りの懇願手紙を渡すことができた。
弟子入りの結果はいかに!?!?

後日、1通のメールが届いた。なんと、高野さんからのメールであった。心臓がバクバクした。一旦、心を落ち着かせてメールの内容を確認してみた。
君はアフリカでのフィールドの体験も十分あるようだし、京大の院でしかるべき先生について勉強しており、体力と根性もあると評価された。
しかし、次の一文が突き刺さる。
何かをする条件はかなり整っているように見えるけど、一体何がやりたいんでしょうか?
君はたいそう真面目な人だということは伝わってくるし、きっと頭脳も優秀なんだろうと思うんですが、「面白い」という感じはしない。という強烈なワンツーが私のボディを抉ってきた。
高野さんの指す面白いとは、誰もがやらない行為常識を逸脱するような行為、周りから「バカだね〜。でも真似できない」と言われるような行動である。

要するに、弟子入りの件に関しては断られてしまったのである。自分が面白い人間であると信じてきたが、狭い井戸の中で生活していたのかを実感した。めちゃくちゃ悔しいが、ド正論である。

高野さんのメールには私に向けたアドバイスもあった。以下が引用。   体力任せでも文化系のどっちでもいいけどでそういう何か面白いことはやるか、少なくとも目指してほしい。それからライターになりたいなら、そういう体験を「面白おかしく書く」習慣を身につけよう。記録は欠かさないように。日記を書くときも面白おかしく書くように。

弟子入りは失敗したが、新たな挑戦に挑む明確な理由ができた。成長するには止まってはいられない。頂いたアドバイスを活かし、前に進む!

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