僕が経験から得た知識やノウハウを大きくまとめてみる(いったん最後)

 どうも!上杉健太です。
 埼玉県富士見市の総合型地域スポーツクラブの代表をやったり、スポーツ推進審議会委員をやったりしながら、生涯スポーツ社会の実現を目指して活動しています。40代に突入したあたりから、何だか身体の不調が多くなってきている気がしています(;^_^A
 さて今日も前回までの続きで、これまで10年間の総合型地域スポーツクラブのキャリアから僕が獲得した知識やノウハウ、気づきなどをざっくりまとめていきます。前回、前々回で

  • スポーツは回復アイテム

  • プレーヤー(=実際にクラブを動かす人)が大事

  • 規模を大きくするのに行政支援は効果的

といったことをお話しましたが、今日はクラブ会員の継続のお話です。


クラブ内継続という考え方

 多くの総合型地域スポーツクラブが課題だと感じているものとして、財政の問題や会員不足の問題があります。要するに、「お金がなくてスタッフに十分な報酬が払えない」とか、「用具を買うことができない」とか、「人が集まらないから現場が盛り上がらない」とか、そういう問題です。これは、『会員が集まらない→お金も集まらない→コストをかけられない→PRやコンテンツが充実しない→会員が集まらない→・・・』という負のループになっていることも意味します。中には、多くの会員がいるのに会費が安過ぎるが為に、お金が集まらないというクラブもあるようですが・・・。

 さて、「会員が集まらない」と「お金がない」の問題をクリアする時に重要になる考え方があります。それが『継続』です。一般的に、新規顧客を獲得するのと一度顧客になった人に継続的に顧客になってもらうのに必要なコストは5倍ほど違うと言われています。もちろん、新規顧客獲得のコストの方が高いわけです。
 例えば、会員が300人のクラブがあったとします。このクラブの継続率が100%だとして、継続してもらう為に必要なコストが一人あたり1,000円だとしたら、コストは30万円になります。一方、もう一つ300人のクラブでは、まさかの継続率0%だとします。毎年完全に会員が入れ替わっている状態ですね。このクラブは毎年300人の新規会員を獲得しなければなりません。新規会員の獲得に必要なコストは継続の5倍ですから、一人あたり5,000円かかります。するとコストは150万円ですね。同じ300人規模のクラブでも、継続重視か新規重視かで、コストに120万円もの差が出るんですね。
 そしてもう一つここで重要なのは、潜在的な新規顧客(=見込み客)はどんどん減るということです。まだ顧客になっていない人が新規顧客なのですから、基本的にはその人たちは市場からどんどんどんどん減っていきます。日本は人口減少社会ですから特に、です。すると新規顧客にかかるコストというのはどんどん上がっていくことになります。

 何だか回りくどく話してしまっているような気がしますが、要するに『継続』が大事だということです。これは何もコスト効率がいいというだけの話ではありません。そもそも総合型地域スポーツクラブが目指しているのは生涯スポーツです。(※中には青少年育成みたいな理念を掲げるクラブもある) 生涯スポーツというのは、死ぬまでずっとスポーツをするというようなことですから、何よりも『継続』=続けることが重要なわけですね。もちろん生涯スポーツを実現するのに一つの総合型地域スポーツクラブの中だけで完結する必要はありませんが、それでもやっぱり、1年や2年でやめてしまうクラブが生涯スポーツを実現できる気はしませんよね。そういう意味でも、総合型地域スポーツクラブは『継続』にこだわるべきなんですね。

 正直に言うと、僕も『継続』についてのノウハウを確立しているわけではなく、今でも悩みながらやっています。一般的に継続を高める方法・方向性としては、

  • コンテンツの質(指導・設備など)の向上

  • コミュニティの構築

  • 継続コミュニケーション

などが挙げられると思うのですが、僕たちがどうしても向き合わないといけない問題があります。それが『飽き』です。

 僕たち人間は、飽きる動物だと思います。中には一つのことをやり続けられる人もいますが、ほとんどの人は何かを始めたら、いつか飽きてやめて、また違うことを始めます。そしてそれもやがて飽きて・・・という風なことを繰り返しながら人生を生きていきます。これはスポーツも同じです。絶対に飽きないスポーツというのは、基本的にはないのではないでしょうか。

 というのも、僕自身が結構飽きてしまう人間なんです(;^_^A 自分がプレーしたものとしてスポーツキャリアを振り返ると、剣道→野球→水泳→テニス→フットサル→サッカー→テニス・バドミントン(現在)と、かなり変えてきているんですね。飽きたからやめたというよりは、他に興味が移っていくのが僕の特徴なのですが、それも”相対的な飽き”と言っていいでしょう。
 だからなのか、僕は総合型地域スポーツクラブを運営していても、この『飽き』というものをネガティブに捉える気がしないんですね。確かに「飽きさせないコンテンツを作ろう!」という方向性もあるのだとは思います。でも僕はそういう思想ではなく、「飽きは仕方がない。むしろ、新しい興味をどんどん追及できるクラブにしよう!」と思うんですね。

 もしも僕がやっているのが単一種目のクラブだったら、「飽きさせないようにしよう!」は正しいスタンスだと思うんです。例えば僕がテニスクラブをやっているのだったら、テニスに飽きられたらもう会員との関係は終わりますからね。会員はテニスクラブを退会して他の種目ができるクラブへ移っていくしかありません。ところが僕がやっているのは総合型地域スポーツクラブです。仮にテニスに飽きた会員がいても、他のスポーツ種目を提案できるんです。つまり総合型地域スポーツクラブは、『飽き』を否定する必要がなく、むしろ歓迎すらしていいんです。

 この時に大事なのは、新たに興味が持てる種目や活動があることですよね。仮にテニスに飽きて他のことがしたいなと思ったとしても、その総合型地域スポーツクラブの中に興味を持てるものがなければ、結局は会員はクラブを出て行ってしまいます。クラブの中に面白そうなコンテンツがあることがすごく重要なんですね。だから総合型地域スポーツクラブは、多種目を揃えようとするんです。できるだけ多くの人の興味に引っかかるように、多くの種目を揃えるんです。理想は、「テニスに飽きてきたから、来年はバドミントンにチャレンジしてみようかな」みたいな状態です。これをクラブ内で実現していくのが、総合型地域スポーツクラブが目指す生涯スポーツの形なのではないかなと思っています。

 これが僕が勝手に『クラブ内継続』と呼んでいるものです。その種目はやめてしまうけど、クラブ内で別の種目を始めて、クラブには残る継続の在り方。

 実はこれは何も『飽き』にだけ対応するものではありません。健康状態、体力、人間関係。色々な要因があって、僕たちはスポーツ種目を変えたくなります。「膝が痛いからもうサッカーはしたくないな」、とか「あの人にアレコレ言われて卓球が嫌いになっちゃった」とか、こういうことは人生の中で何回もあるわけです。その時にも、クラブの中に選択肢がたくさんあれば、カジュアルに「じゃあ次はこっちをやろう」と移れるんですね。選択肢がないとスポーツ自体をやめちゃう可能性を、僕たち総合型地域スポーツクラブはすぐさま選択肢を提示することで阻止することができるし、クラブ内継続を高めることができるんです。僕はこっちを目指したいと思っています。

 しかし現実的には、その種目をやめようと思った人がクラブ内に残るというのはまだまだ多くはありません。基本的にはクラブをやめていきます。総合型地域スポーツクラブと言えども、自分がやっている種目以外にはさほど興味がない会員がほとんどなので、やっている種目をやめた時にクラブ内の他の種目が選択肢にならないんです。
 これを改善するには、種目を越えた交流などが必要で、日常的に他の種目のクラスがどのような活動をしているかを知っている状態が必要なのだと思います。SNSでの発信や会報の発行などが一般的な打ち手になるとは思いますが、決定的な打ち手とはならないというのが僕のこれまでの印象。また、交流会の開催は、多種目・多世代がゆえに非常にハードルが高い。ハードルというのは、要するに開催するのが大変ということですね(;^_^A コンテンツが一つであれば、そこで交流会を1回やれば終わりだけど、たくさんクラスがあるのでそうもいかない。全体で1回やっても、お互いが牽制し合って参加しないだろうし・・・。
 理想の継続の形は見えているが、その為の手段・打ち手についてはまだまだ確立できていない。そんな現状があります。

 でも総合型地域スポーツクラブの中にはまだまだ、一つ一つの種目の寄せ集め状態でしかないクラブもありますから、まずは種目を変えてクラブ内で継続する『クラブ内継続』の考え方を持つことが重要だと思っています。まずはそこから。


 というわけで今日は、『クラブ内継続』についてお話しました。

今回もお読みいただきありがとうございました!
ではまた!

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5